点検 ガバナンス大改革 年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値
参議院選挙も終わり、アベノミクスの更なる施策が打ち出されることになりそうでして、成長戦略としてのガバナンス改革もスピードアップして推進されることが予想されるところです。
果たして「攻めのガバナンス」の施策が形だけで終わってしまうのか、それとも実質を伴ったものとして各企業に浸透して企業価値向上に結び付くのか、現時点までのガバナンス改革を検証しようと試みた一冊が本書(左写真)です。先週頃から書店に並ぶようになりました(追記 7月11日の日経朝刊一面 にも広告が出ています)。
点検 ガバナンス大改革 (R&I 格付投資情報センター編集部 編 日本経済新聞出版社 2,300円税別)
年金・機関投資家が問う日本の企業価値という副題が付されていますが、R&I格付投資情報センター編集部の方々のほか、機関投資家、経済学者、企業IR・SR担当者、シンクタンク研究者、法律家等により執筆されたものでして、私も第1章を担当させていただきました。野村総研の堀江貞之さんも執筆されていますので、こちらのNRIさんのご紹介内容が参考になります。私はガバナンス改革の理想と現実ということで、かなり現状に対して厳しめの意見を書かせていただきました。ホンネで書きましたので、内容的にはかなり面白いのではないかと。
弁護士25年目のある方が「社外取締役奮闘記」の中で経営判断原則とコーポレートガバナンス・コードとの関係などにも触れている点なども私的には興味深いところです(この弁護士の方は、ちなみに私ではございません)。オムロンさんのガバナンスといえば、同社の社外取締役である冨山和彦さんの論稿等がよく紹介されますが、本書では同社のコーポレートコミュニケーション本部長さんの視点から「ガバナンスを機能させるため」の方策が記載されているのも新鮮です。
ガバナンス改革において「機関投資家」と一口にいいますが、本書を読むと、機関投資家にも様々な立場があり、株主総会の環境整備や株主との建設的な対話などの問題にも、それぞれの立場によって微妙に考え方が異なることがわかります。単純にガバナンス改革を点検するだけでなく、今後企業価値向上に結び付けるための処方箋も示されているので、私自身も今後の参考にさせていただきたいと思います。
ちなみにR&Iさんは、6年ほど前のAIJ事件で、誰よりも早く「AIJはおかしな運用をしている」と同社「年金情報」で意見を述べた「骨のある」団体です(実際には金融庁が処分を行うまでは同誌での指摘はほとんど取り上げられなかったのですが)。ガバナンス改革の方向性に異論をはさむ人がほとんどいない今日、そのR&Iさんを中心として「このままでガバナンス改革は本当に企業価値向上に役立つのだろうか」といった問題意識を世に問う(警鐘を鳴らす)ことには十分な意味があるのではないでしょうか。私自身もいろいろと問題点を指摘しておりますので、(ここのところ本のご紹介ばかりで恐縮ですが)ぜひご一読いただけますと幸いです。
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