« 本日のエントリーに関するおわびと訂正  | トップページ | 取締役会全会一致の原則の裏に潜む「暗黙のお約束」 »

2016年8月 8日 (月)

出光創業家の株式取得で改めて考える「公開会社法待望論」

9784492732588日本選手の金メダル獲得でリオ五輪も盛り上がりを見せていますね。しかしその一方で、逃亡していた元弁護士の方が9年ぶりに海外で身柄を確保され、送還後にさいたま地検に逮捕されたとの報道に、五輪や高校野球どころではない・・・と、真っ青な顔でビクビクされている方も多いのではと拝察しているところでございます。いやいや、高橋篤史さんの名著「兜町コンフィデンシャル」をひさしぶりに読み返しておりました。。。

さて話は全く変わりますが、出光興産社の現経営陣と創業家との対立は溝が深まる一方のように報じられています(ただ、ホントのところは「大戸屋さん」のところと同じように、水面下で話し合いが行われているのかもしれませんが、私は単なる野次馬なのでまったく存じ上げません)。創業家は金融商品取引法上の公開買付ルールを逆手にとって、ロイヤル・ダッチ・シェルと出光との相対取引を妨害する「強硬手段」に出ました。創業家の方々は、出光興産の社外取締役の方々に情報開示等を求めておられるようで、コーポレートガバナンス・コードによる「健全な株主との対話」も活用されているそうです。

双方とも(裏事情が公表されてしまうような裁判沙汰だけは避けたいところなので)協議を有利に進めるための地位確保に向けた動きが活発化しているわけで、これもその一環ではないかと思われます。企業法務に精通した方であれば、おそらく創業家側の株式取得についても予想していたものと思いますが、ただ日経新聞の8月4日朝刊記事で早稲田の黒沼先生がおっしゃっているように、そもそも「特別関係者」の概念は支配権異動を伴うTOBから一般株主を保護するために定められたものなので、支配権異動で協調行動が想定されないような場合まで「特別関係者」の概念を適用すべきかどうか疑問をぬぐいきれません。金商法という性格上「形式基準」はあくまでも形式的に解釈されるべきですから、ルールに反する行動の違法性を排除するということまでは言えないかもしれませんが、なんとなくモヤモヤするものが残るのも事実です。

8月5日の日経朝刊記事によりますと、出光経営陣は取得数を減らして、あくまでも相対取引で株式を取得する方向だそうですが、これに対してはまた創業家が買い増すことも検討されるようで、どこで終息するかわからない様相です。そこで、たとえば「特別関係者」規定の趣旨を逸脱した金商法の活用を敢行したのは創業家なのだから、出光経営陣側も強硬手段として当初の合意どおりロイヤル・ダッチ・シェルの株式をすべて買い取ったらどうなるのでしょうかね?(まぁ、コンプライアンス経営の視点からみて実行されることはないと思いますが)。

そういえばこの問題は平成26年改正会社法で解決されるはずだったのではないでしょうか?TOB規制に反して取得された株式の議決権停止については、会社法と金商法の狭間で残された課題として会社法改正の中間試案までは改正条文が存在したのですが、最終的に内閣法制局の意見で削除されたものと記憶しています。民事上は株式取得は有効ですが、議決権行使というごく一部の権限だけが金商法違反によって停止する、といった建てつけだったと思います。改正会社法で規定されなかったということで議決権は停止しないとみるべきか、それとも金商法の解釈問題として停止される、もしくは民事上の合意そのものが無効とされるのでしょうか。また民事保全は使えるのでしょうか(そもそも本訴の原告適格はあるのか?)。いずれにしてもビミョーにグレーゾーンの問題です。

こういった事例は大量保有報告書制度や委任状勧誘規則との関係でも実際に起きるわけですから、法務省と金融庁との管轄の垣根を超えて、公開会社法の制定を真剣に検討してもよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

8月 8, 2016 TOB規制と新会社法の関係 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/64026540

この記事へのトラックバック一覧です: 出光創業家の株式取得で改めて考える「公開会社法待望論」:

コメント

>TOB規制に反して取得された株式

議決権行使ができたとしても、課徴金と株主代表訴訟は確定みたいなものですから、創業家ならともかく、サラリーマン社長には無理難題です。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2016年8月10日 (水) 20時06分

ご意見ありがとうございます。(サラリーマン云々は別として)私も同感ですが、8月15日の日経WEBニュースでは、出光副社長の会見で「法解釈の仕方次第では予定通り株式を取得する余地がある」と述べておられるようで、今後の展開次第では可能性はゼロではないようですね。今後も注目してみたいところです。

投稿: toshi | 2016年8月17日 (水) 15時12分

コメントを書く