出光興産の統合抗争は本当に「創業家の乱」なのか?
あいかわらず経済紙は「出光創業家の乱」を詳細に報じているようで、野次馬としてはとても興味深く騒動の進展を見守っておりますが、交渉自体が止まっているのでしょうか、新しい動きがみられないようです。そして、どの新聞、雑誌をみても「創業家VS現経営陣」の対立構図は変わっていないように思えます。
さて、今年5月に拙ブログエントリー「創業家の絡む経営支配権争いには二つの顔がある」を書きまして、流星さん他、常連の皆様にいろいろと有益なご示唆をいただきました。私の経験上も、「創業家対現経営陣」という表向きの抗争の裏で、実は社内の主流派対反主流派という内部抗争が背景にあり、そのまた背景にメインバンクや従業員組織があったりして会社が一枚岩ではないところをステイクホルダーに露呈してしまったケースがありました。ここまで膠着状態が続いてるところをみると、ひょっとして出光興産さんのケースでも、背景には統合賛成派と統合反対派の激しい対立があるのではないでしょうか?社内の情報は、反対派から大株主である創業家に筒抜けになっているのではないかと想像してしまいます。
そういえば8月16日の朝日新聞ニュースによりますと、出光興産さんは15日に臨時取締役会を開催して、社外取締役さんや監査役さんに対して、統合に向けた手続きに問題はなかった旨を説明した、と報じられていました。しかしこの報道が事実ならば、かなり違和感を覚えます。会社の統合に向けた手続きは、会社にとってまさに重大な経営判断のプロセスなので、タイムリーに社外取締役さんや監査役さんがそこに関与していなければおかしいはずです。
ときどき重要なM&Aの情報拡散を防止するために、ごく一部の経営陣のみで話を進め、社外取締役さんには意思決定の直前に説明をする、ということはありえます。しかし、自社の統合問題は支配権の移動に関わる重要な経営方針に関わるわけですから、いまになって社外取締役さん、監査役さんに事情説明がなされたということは、かなり不自然な形で隠密裡にコトが進められていたのかもしれません。かりに創業家側から社外取締役さんや監査役さんに「株主との対話」の一環として、「社外役員の意見が聞きたい」との要望が寄せられていたとしても、その疑念は拭いきれないところです。
マスコミ的には「お家騒動」「創業家の乱」といった構図を描くほうが読み手にもわかりやすく、またドラマチックなわけですが、会社としては社内抗争は企業価値を低下させることになるために、ぜひとも表沙汰にはしたくありません。こういった創業家の乱、創業家内のお家騒動といわれる事件は、もっと根が深く、取材する気が失せるほとにドラマとしてのおもしろみに欠けるストーリーというのが現実の騒動の姿なのではないかと。
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コメント
創業家側の時代錯誤的な事実誤認?、言いがかり(「合併でイランとの関係がこじれる」だなんて、イラン革命前かいな(笑))を見るにつけ、出光内部での派閥争いの問題ではなく、むしろ外部から創業家を焚き付けている勢力があるのだろうと。「このままだと創業家一族、関係者が所有する莫大な資産は外資に奪われてしまいますよ」という囁きに、「海賊」の血が揺さぶられているのではないかと。ひょっとしたら反社的な色彩がある存在がいるのかもしれません(大物フィクサーがいたような時代のような大時代がかった陰謀論に聞こえるかもしれませんが、何せ顧問弁護士夫妻にはその時代の名残が…(^^ゞ)。そちらの方が問題のように思いますが、ね。
投稿: 機野 | 2016年9月 5日 (月) 10時41分
FACTAの最新号に創業家と浜田弁護士との「つながり」が暴露されていますね(^^;。日経新聞の元編集委員の方の取材ですから、なかなかおもしろい内容です。
投稿: toshi | 2016年9月24日 (土) 14時39分
読みました。
なるほど、こんなオーソドックスな事項が元凶だったとは(恐らく記事内容は当たらずとも遠からずでしょう)。企業経営の継承とはかくも難しきことなりや…。2代目が傾け、そして今、3代目が潰しかねない状況。恐ろしきは親バカですねえ(^_^;)。
投稿: 機野 | 2016年9月28日 (水) 18時57分