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2016年8月 5日 (金)

突然の会計不正事件疑惑にみる「経営者の思い込み」を考える

世間では海外のショートセラー(株の空売りで儲ける投資家)が日本の某総合商社さんを「第2の東芝事件」と指摘して大儲けをしている事件が話題に上っております(当該ファンド作成にかかる日本語版の44頁のレポートを読みましたが、最初と最後に「この会社は第二の東芝になる」との推測が明記されていますね。ずいぶんと煽りすぎのような気もしますが)。

日本の企業では社内の「オオカミ少年」は肩身の狭い思いをしていますので、商売のひとつとして社外のオオカミ少年が登場しても不思議ではないかもしれません。そもそも日本の内部統制報告制度が機能していない以上、「不正会計の可能性情報」を投資家が渇望していることは十分考えられます。

エンロン事件の発端は、一地方経済誌に掲載された推測記事に興味をもったショートセラーの空売りでした。当初エンロン社はその非倫理性に怒りつつも冷静さを失わずに反論し、エネルギー業界に精通している有力な機関投資家も「エンロンは全く問題なし」と冷静さを保っていました。その後、いくつかのショートセラーが追随して株価が下落したことにより、エンロンの会計手法に多くの投資家が関心を向け始めました(「エンロン~内部告発者」 ミミ・シュワルツほか著 ダイヤモンド社 283頁以下参照)。

私は某総合商社さんに不正会計の疑惑があるとは全く思いません。ただ、エンロン会計不正事件の首謀者らは今でも意図的な会計不正をやったわけではない、あれは「思い込みの強い希望」によるものだったと述べていますし、行動経済学者のダン・アリエリーも、このように考えるのは不自然ではないとされていますので、会計不正というのは「これは会計不正ではない、一点の曇りもなく断言できる」と誠実な企業ほど説明されるものだと認識しています。意図的な不正であればおそらく嘘が顔に出るかもしれませんが「盲目的希望」であればウソ発見器も反応しないわけです。このあたりは著名なショートセラーであれば百も承知でしょうから、会社が反論すればするほど、世間が騒げば騒ぐほど喜んでおられると思います。

エンロン事件はご承知のとおり最後は監査法人から転職された経営幹部の方が内部告発をすることで大事件に発展するわけですが、今回の事例でも狙われた某総合商社さんに内部告発者が現れることをショートセラーは期待しているのかもしれませんね(そういえば8月3日の日経ビジネスさんの記事では、東芝事件と同様に記事の末尾に「内部告発を求む」とあります)。ちなみに個人的感想としては(すいません、ホントにお世話になっている会社さんなので主観が入っておりますが・・・)、ここ7,8年でビジネスモデルも大きく変わったとはいえ、どうも内部告発という形で何かの疑惑が浮上する風土には思えません。

8月 5, 2016 コンプライアンス経営はむずかしい |

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コメント

私も某商社についての報告読みました。正直内容の重複が多いと思いましたが、この会社は不正をしていると思いました。南米の会社の件は詳細知らないですが、中国の会社は相手が大きすぎてどう考えても影響力は持ち合わせない、持分法適応はできないと思いました。しかし、この商社は監査室と同じ規模で不正の専門部隊を作ったそうですが何ら機能していないんじゃないかという悲しい気持ちにもなりました。東芝が内部統制で優秀と言われていたときのことを思い出してしまいました。まあ、もちろん東芝ほど悪質ではなく、会計基準の微妙なところをいじって利益が出ているように見せかけた普通の粉飾なんですが。

投稿: 工場労働者 | 2016年8月 5日 (金) 07時34分

経営トップが関与または黙認する不正に対して、内部監査部門は、監査役や監査等委員、監査委員と違い、武器が与えられていませんから、無力です。

例えば、東芝が再三の不正会計への改善策として実施したように、取締役監査委員に元大手監査法人の重鎮を据え、監査委員会スタッフの充実、ならびに内部監査部門の指揮命令と人事権を監査委員会に委ねる位の形を整えなければ、内部監査部門は、経営トップの不正には対応できません。

経営トップが関与する不正に関連して、製品事故など人命がかかっていれば、解雇覚悟で監査委員や監査法人または規則官庁に情報提供する内部監査人もいるかもしれません。
しかしながら、現在の法令や東証規則では、上場会社の内部監査部門のトップが異動しても開示や届け出が必要無いため、あっという間に飛ばされて終わりでしょう。

投稿: 内部監査関係者 | 2016年8月 7日 (日) 12時15分

不正会計? ないない。どんだけ厳しく内部統制が入って、また、監査が見てることか。ショートセラーの報告書も読んだけど、ちゃんちゃらおかしい。IFRSのルールに文句があるなら、某総合商社に文句を言うんじゃなくて、IASBにクレームするのが先だろう。(笑)

日経ビジネスOLにCFOの反論が出てるけど、納得性高いと思うよ。

投稿: Cucome | 2016年8月17日 (水) 22時33分

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