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2016年10月18日 (火)

「住友銀行秘史」とコーポレート・ガバナンス

9784062201308_210月8日の日経朝刊に「指名委員会を設置した上場会社が600社を超えた」といった記事が掲載されていました。ほんとに社外取締役を中心として後継社長を指名することなどできるのだろうか?といった疑念を抱いていますが、この25年前に発覚したイトマン事件の内幕を読むと、さすがに「形だけでもあったほうがいいかも・・・」と思ってしまいますね。

まだ発売されたばかりの本なので(ネタバレはエチケット違反かと思いますので)内容には触れませんが、話題の「住友銀行秘史」をさっそく読了いたしました。110年の歴史を誇る中堅商社イトマンが沈みゆく1年半ほどのストーリーです。実名を出された方々の言動だけでなく、その言動に対する著者の評価(批判?)も赤裸々に綴られているので、(反論が困難という意味でも)本書の評価は分かれそうな気がします。ただ、私のように内部告発や内部通報に関心のある方にはぜひともお勧めしたいところですし、社長解任の場面なども出てきますので、組織の権力闘争に関心のある方にもおすすめです。

ところで、私の存じ上げる方々が、この25年前の事件にたくさん登場します(久保利先生も少しだけ登場します)。イトマンの会計士さんも実名で、かつ監査意見形成に関するやりとりなども詳しく書かれています。とりわけコーポレートガバナンス・ネットワークの前理事長さん(当時は日銀の営業局長)が、こんな感じでイトマン事件に登場するとは思いもしませんでした。前理事長さんが、かつて「社外取締役ネットワーク」を設立してガバナンス論を語っておられたとき、「アメリカのガバナンスの直輸入盤みたいで、ずいぶんと原理的だなあ」と感じたこともありました。しかし、住友銀行の権力闘争と、これを背景とするイトマン事件の渦中にあって、このようなドロドロとした経営権争いが演じられている中に身を置いていたら、たしかに海外のガバナンスに光をあてたくなるだろうな・・・と。そういったことを再認識できただけでも、本書を読んでよかったと思います。

しかし朝日さんや読売さんはいいとしても、この本、日経さんは書評を取り上げますでしょうかね?日経新聞とはこういった世界である、「新聞・雑誌の編集権」とはこういったものである・・・ということを理解するうえでも有益な一冊かもしれません。

 

10月 18, 2016 本のご紹介 |

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コメント

企業不正と向き合う会計士監査のあり方の観点から本著を読みました。登場する銀行マンや会計士に、昔を振り返って懐かしさを覚えると同時に、(感傷的な回顧は別にして)今の時代の深刻さと大変さを、監査法人の現役会計士がどう受け止めているのか、正直、暗澹たる気持ちになりました。この事件は昔に根絶やしにされた「小説ストーリー」ではなく、これからやって来る大津波の歴史教訓なのだと・・・。ガバナンス体制の構築で防止できる事件は限られている。事件が発生した時に会計士はどの様な行動を取り、監査法人組織はどの様な対応を行うのか、考えさせられます。数々あった企業不正とその結果としての不正会計に向き合うには、「◎X監査法人秘史・・XX事件」が出版されなければならないのでしょうか?

投稿: 一老 | 2016年10月19日 (水) 12時25分

>ガバナンス体制の構築で防止できる事件は限られている。事件が発生した時に会計士はどの様な行動を取り、監査法人組織はどの様な対応を行うのか、考えさせられます。

私が(本書に関する)後日の正式な書評のためにとっておいた内容を書いておられますね(笑)。私もまったく同感でして今後も組織の中で同様のことが起き、また関係者は悩むことになるのだと思います。すいません、某雑誌における書評でも、一老さんの用いたフレーズをそのまま引用させていただきますのであしからずご容赦ください。

投稿: toshi | 2016年10月20日 (木) 22時44分

専門家の山口様にお聞きしたいことがあります。この本で筆者はイトマン社内の協力者から不正に入手したイトマンの社名(ロゴ)入りの封筒や便箋を使って告発文書を送付しています。過去に日経新聞が出した本には実物のコピーも掲載されており、たしかに英文字でITOMANと書かれています。このことで告発文書はイトマン関係者のものだと認識されたという記述もあります。

そもそもこれは窃盗や私文書偽造にあたるのではないでしょうか。筆者は気づいていないようですが、やっていることは伊藤と変わらない犯罪のように思います。法律的にはいかがでしょうか。

投稿: 本間 | 2016年10月24日 (月) 07時07分

本書は爆発的に売れているそうで、まだまだ中身の問題を指摘するには時期尚早かとは思います。私文書偽造はさておき、便箋の窃盗ということでしたら形式的には問題になりそうですが、本件はたしかイトマン社内にも協力者(ディープスロート)がおられたのでは?(本書299頁参照)当該協力者の方から便箋を受け取ったのかもしれませんし、私自身はこの点についてはそれほど大きな問題ではないと考えています。

投稿: toshi | 2016年10月24日 (月) 13時05分

回答ありがとうございました。

投稿: 本間 | 2016年10月27日 (木) 12時19分

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