会計・監査制度改革(不正会計防止)に向けられる金融庁の視線は眩しい・・・
ネット上ではあまり話題に上っていないようですが、 「粉飾決算-問われる監査と内部統制」の著者でもいらっしゃる浜田康先生(公認会計士、青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科特任教授)が、このたび証券取引等監視委員会の委員に就任される予定だそうです(10月6日付けの日経人事ニュースで知りました。もちろん正式には国会の同意が必要となります)。近時の東芝不正会計事件について、浜田先生は会社側にも、監査法人側にもたいへん厳しい指摘をされていますし、また「司法は会計についてあまりにも無知ではないか」との持論を展開していらっしゃる浜田先生の委員就任は、金融庁の会計・監査制度改革に向けた本気度を如実に示している・・・というのが私の率直な感想です。
その浜田先生も教授を務めておられる青山学院大学大学院会計プロフェッション科では「青山アカウンティング・レビュー」の第6号を発刊し、10月10日に書店に並びました。早速拝読しておりますが、会計・監査制度に関与しておられる金融当局の方々は、本書をまちがいなく読んでおられるものと推測いたしました。なぜなら、これからの上場会社や監査法人に対する当局の規制の在り方がとてもよく理解できるからです。今号のメインテーマは「これからの会計監査のあり方を考える」、いや、実に精読する価値がありますね(2,100円税別)。
まずなんといってもメインタイトルを冠した金融庁総務企画局長の池田氏と青学の八田進二教授との対談です(聞き手は同学院の町田教授)。今年3月に公表された「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言17項目を、金融庁はどのように整理しているか(どれを重要とみているか)といった視点が述べられています。おそらく「監査法人向けガバナンス・コードの策定」と「ローテーション制度」が重要であることは予想されるところですが、実はもうひとつあるのですね(これは中身をお読みいただくと、なるほど、その論点をそこと結びつけて考えるのか!と、とても新鮮に受け止められるものと思います)。また池田局長が「10年前と今とを比較して、なぜ会計・監査制度の重要性が増していると理解するのか」、(「あくまでも個人的な意見ですが」とのことですが)その根拠が書かれていて、これもどこかで使わせていただきます(笑)。
つぎに、第14回青学会計サミットでの天谷知子氏(公認会計士・監査審査会事務局長)のご発言が盛り込まれている討論会議事録ですね。私、お写真で初めて天谷氏のご尊顔を拝見いたしました(それはどうでもいいことですが・・・)。天谷氏も「あくまでも個人の見解」として発言されていますが、東芝事件に関するご意見や、監査法人のどこに問題があったか、といった分析は、ぜひとも理解しておきたいところです。しかし読んでいるうちに、上場会社向けのガバナンス・コードと、監査法人向けのガバナンス・コードとでは、おそらく「コンプライオアエクスプレイン」の意味合いが相当に異なるだろうな・・・と思いました。
さらに、「金融庁のLEON風チョイ●るオ●ジ」こと佐々木清隆氏(証券取引等監視委員会事務局長)による「監督機関からみた会計監査への期待」に関する論稿です。三様監査全体に共通する課題でもあるが、とりわけ会計監査においては事後チェック中心であり、現在起きている事象、将来のリスクを見据えたフォワードルッキング的な視点が強化される必要があると説かれています(これって、やっぱり「優秀なオオカミ少年になれ」という私の提言と根本のところでは同じではないかと)。私もこれは「三様監査」すべてに言える大きな課題だと認識していますし、不正の長期化の根本原因ではないかと考えます。しかし読んでいて気がついたのですが、上記3名の当局の方々が、いずれも「これは個人的見解だが」と前置きしつつも、内容的にはほぼ同様の意見をお持ちだというのがスゴイ!笑。
もちろん「監査なくして会計なし」と説かれる浜田康教授の論稿も必読ですし、目次をご覧いただければおわかりのとおり、会計、監査の世界で著名な方々による論稿がてんこ盛りです。ちなみに私個人の好みとしては、新日鉄住金の財務担当執行役員の方の論稿がとても刺激になりました(これもどっかで使わせてもらおうかと・・・)。ところで、本書の最大の難点は入手がなかなか困難ではないか・・・ということです。話題の「住友銀行秘史」は無尽蔵に置かれているのに、こちらは(せっかくの良書にもかかわらず)一般の書店では、大きなところでも1~2冊程度しか並んでいません。私は大学関係者でもなんでもありませんからよくわかりませんが、大学側にでも注文しないと大量に入手することは困難ではないかと思います。本書と皆様とのアクセスルートがもっとも心配ですが(一応、上記リンク先にも問い合わせ先が記載されているようですね)、ぜひともお読みいただきたい一冊です。
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