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2016年10月 5日 (水)

注目度が増す?「第三者委員会」委員選定プロセスの開示

大戸屋さん(東証1部)の現経営陣と創業家との対立解消に向けた「第三者調査」報告書(第三者委員会報告書ではございません)がリリースされました。なるほど、創業家側にも大物弁護士(元東京高検検事長)が代理人となって交渉を担当されていたのですね。新聞報道等で概要は存じ上げておりましたが、創業家側の協力が得られないままに第三者委員会が設置された事情、経緯が報告書末尾で説明されているところはとても興味深いです(すいません、報告書をきちんと読めていないので内容についてはまた追ってコメントさせてください)。

この大戸屋さんの件は不祥事発覚ではないので関係ありませんが、証券取引所の企業不祥事対応のプリンシプルが公表されて以来、第三者委員会設置プロセスを透明化したい、といったご相談が企業側から出されることが増えているようです。ここ5,6年ほど、日弁連の第三者委員会ガイドラインが公表され、これに準拠した形の委員会報告書が作成されることで、相当程度に報告書の信用性は高まったと思います。ところが、この「信用性」を利用(悪用)した「なんちゃって第三者委員会報告書」が増えてきたことも事実。「第三者」とは言いながら、実は経営陣の責任転嫁の隠れ蓑としての意義しか持たない報告書も(かなり多く?)作成されているように思われます。しかし「なんちゃって報告書」かどうかは、外からはなかなか見えにくいため、結局のところ報告書の内容と第三者委員会委員が独立性を有するかどうかで判断せざるをえないのが現実です。

この「独立性」判断にあたり、やはり第三者委員会の選定プロセスが開示されることが望ましいわけでして、もっとも効果的なのは第三者委員会の選定指針を社内ルール化することです。そこで、コンプライアンス経営に熱心な企業(企業担当者)では、不祥事発生時において第三者委員会設置の要否を判断する基準、および設置を決めた際における委員の選任方法に関する基準をあらかじめ社内ルールとして策定しようとの試みが出てきました。私自身も3社ほど、社内ルール策定に関するご相談を受けています。たとえば関西のある上場企業では、大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会が共同運営している「第三者委員会委員推薦名簿」を活用して、その名簿登載者から会社側が(委員長候補者)を選定する、といったルールを検討中です。

会計不正事件等、とりわけ有事に至った後に第三者委員会委員を選定しようとすると、(調査の時間が限られていますので)どうしても顧問弁護士さんからの紹介・・・ということにならざるをえず、候補者の方がどんなに独立公正な立場で職務を全うしようとしても、独立性に疑念を抱かれることになりかねません。したがって平時のうちから、有事を想定して社内ルール化するというのも一案ではないかと思います。弁護士会が推薦した人を委員長に選ぶというのではリスクが大きいのであれば、名簿から企業側が選ぶということにすればかなり会社側の拒絶感も薄らぐように思います。最近は社外取締役の数が増えていますので、たとえば社外取締役や社外監査役さんが中心になって選定作業を進めるというのも検討されるべきではないでしょうか。

もちろん日弁連ガイドラインへの準拠は、第三者委員会の公正性を担保するひとつの判断根拠になりうると考えます。ちなみに会計不正事件に対する第三者委員会報告書のモデルとしては、私は監視委員会の開示課や特別調査課で数年間、開示不正を審査した人たちが作成したものが秀逸だと思いますね。あくまでも私の好みですが、これまで読んだ会計不正に関する報告書の中では、この5年前の第三者委員会報告書は、金融庁で会計不正を摘発してきた任期付公務員の方々(しかも別々の法律事務所の弁護士で構成されているので独立性が高い)による報告書なので、ベストモデルではないか・・・と考えています。

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