ガバナンス・コードは「監査役会の実効性評価と概要開示」を要請すべきではないか
企業の情報管理に大きな影響を及ぼしそうな最高裁決定が出たようですね(たとえば毎日新聞ニュースはこちら)。当ブログでもかつて金商法166条の解釈問題として取り上げた事件に関する上告審です(2013年のブログエントリーーはこちらです)。近時、フェア・ディスクロージャー・ルールの取り扱いなども議論されていますので、企業の情報開示に向けた取り組みは要注意ですね。
さてここからが本題ですが、GPIFの最高投資責任者の方が「今後は株式運用にESG投資の要素をとりいれる」姿勢を明らかにして反響を呼んだことが、本日(11月30日)の日経朝刊一面に掲載されていました。日本企業のガバナンスを論じるにあたり、その役割が海外からわかりにくいとされている監査役(監査役会)制度も、ガバナンス投資が注目される中で(もうすこし?)光があたっても良いのではないかと、個人的には思います。
11月24日に公益社団法人日本監査役協会のHPに3本の興味深い研究報告がリリースされました。(①「会計不正防止における監査役等監査の提言-三様監査における連携の在り方を中心に-」 ②「『コーポレートガバナンス・コード(第4章)』の開示傾向と監査役としての視点-適用初年度における開示分析-」 ③「選任等・報酬等に対する監査等委員会の意見陳述権行使の実務と論点-中間報告としての実態整理-」)
私的には③の監査等委員会の実態調査と実務上の論点整理がとても興味深いのですが、なるほど・・・と得心したのが監査役会の実効性評価に関する提言です。協会によるアンケート調査結果では、9割の会社が「監査役会の実効性評価はやっていない(検討中との回答も含めます)」と回答されていますが、上記①の会計不正防止における監査役等監査の提言では、今後実施すべきであると明記されています。また、②のガバナンス・コードの開示傾向の中でも、監査役の視点として監査役会の実効性評価も検討すべきであると述べられています。
多くの会社が「監査役会の実効性評価などやっていない」と回答している中で、協会がやるべきだと述べたところはナイスですね(これを決断された委員の方々に敬意を表します)。これは「監査役等監査」とあるように、監査役会だけでなく、監査委員会も、また監査等委員会もやるべきだ、ということだと思いますので、ぜひともガバナンス・コードの見直しの中では監査役会の実効性評価の導入を要請していただきたいと思います。私からすると、「当社では常勤監査役を中心に、監査役制度の実効性評価を行っています。その評価プロセスと結果の概要は以下のとおりです・・・・」と積極的に動く監査役会の存在は、それだけで監査環境の整備に資するものと考えます。
たしかにコードの本家本元である英国では監査役(監査役会)という制度はありませんが、日本のガバナンス・コードでは監査役制度も「取締役会の役割・機能」の一翼を担うものとして捉えられている以上、日本独自の監査役会の実効性評価とその概要開示を(本則市場に上場する企業を対象とした)補充原則の中に含むというのも十分考えられるのではないかと(また、エクスプレインする企業の理由にも興味があります)。
社外取締役を2名以上選任せよ、と要請するガバナンス・コードの影響からか、監査等委員会設置会社に移行する上場会社が700社にも及ぶということですが、まだまだ圧倒的に監査役会設置会社が多いのが現実です。「海外から(監査役制度は)わかりにくい」と指摘されていますが、むしろ監査役の活躍風景を海外に紹介して、その実効性を理解してもらうためにも実行性評価とその開示は有益ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
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コメント
暫くご無沙汰していました、相変わらずの彷徨える監査役です。
山口先生のご意見に大賛成です。CG CODEでも、なぜ取締役会のみ対象にし、監査役会の実効性を求めないのか不満に思っておりました。私の経験では取締役会以上に監査役会に問題がある会社が多くあったと記憶しています。独任制と独立性を隠れ蓑に、実質的に不作為の方々を多数見てきました。老後の割りの良いバイト先、又は士族の副業化している実態は、中にいないと分からないものです。監査役会は率先して第三者評価を受けるべきと思います。辛口コメントですみません。
投稿: 彷徨える監査役 | 2016年11月30日 (水) 12時06分
彷徨える監査役さん、いつもありがとうございます。実は花王さんはガバナンス報告書の中で、監査役会の実効性評価を公表されているのですね。また参考にしてみてはいかがでしょうか。
投稿: toshi | 2016年12月 7日 (水) 23時51分