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2016年11月 7日 (月)

企業不祥事対応のトレンド-企業の自浄能力がますます要求される時代

フォルクスワーゲンの排ガス不正事件は、いよいよドイツ検察がワーゲン社の最高意思決定機関のトップにも及ぶという展開になりました。株価は事件発覚前よりも4割下落し、多くの訴訟が提起されていますが、それでも予想外に(?)販売実績は低迷していないようです(たとえばこちらのニュース等)。企業不祥事がどれほど企業の社会的信用を毀損し、企業価値を低下させるかは、なかなか予想できないのが現実です。

不祥事が企業の社会的信用をどれだけ毀損するか・・・ということは、竹を割ったように「Aが原因でBという不正が発生した」といった単純な事実に対する評価で決まるわけではありません。不祥事の発生は人的・組織的な複合的要因によるところが大きい(言いかえれば「運」に左右されるところも大きい)ことについてはほぼ社会的な合意が得られていると思います。そして、その社会的信用毀損の大きさは、やはり社会情勢を含めた様々な事情によって変動するところが大きいと言えます。

したがいまして、ときどき企業を取り巻く社会情勢(社会環境)に目を向けることも大切です。不正リスクという視点で捉えた最近の話題としては、消費者裁判手続き特例法が施行されたこと、改正刑事訴訟法が成立して合意制度(いわゆる司法取引)も2年後から施行されること等でしょうか。また、TPP関連法案が国会で承認されますと、今度は独禁法改正による確約手続が導入されますし、アメリカ大統領選挙の行方によって空白となっている連邦最高裁判事のポストが埋まりますと、FCPA等の域外適用(米国司法省の動向)にも注目が集まります。

このような法令改正で留意すべき点としては、いずれも実体法的な改正ではなく、手続法的な改正ということです。法改正等によって、企業に新たな行為規範が設定されるわけではなく、手続きの運用に変更が加えられるわけですが、そこにソフトローとしての行政のガイドラインや解釈指針等が影響を及ぼすことが予想されます。

いずれの場面でも、企業が平時においては自主ルールを運営し、不幸にも有事に至った場合には自浄能力を発揮しなければ、企業不祥事によって重大リスクが顕在化します。企業の信用損害をもたらした末に、役員には取引先もしくは同業他社からの損害賠償請求リスク、株主からの代表訴訟リスクが顕在化するものばかりです。このような傾向は、規制緩和が進み、行政規制がハードローからソフトロー中心に移行する時代となればなるほど、顕著なものとなるはずです(行政官僚は、規制権限行使の主導権を握りつつも、自らの責任を巧妙に回避するシステムとして、いよいよ本格的にソフトローを活用する時代になったと思います。一見「とても腰の低い人たちだなあ」と思えますが、深謀を垣間見るととても賢い人たちだなぁと感心します)。

このような時代において、企業が重大な不正リスクをどのように低減すべきか、という点については私なりに考えているところがあり、一言でいえば「事業戦略を進めるうえで、組織運営のホンネとタテマエのバランスをどのように調整していくべきか・・・」に尽きるものと考えています。内部通報や内部告発といったかなり狭いフィルターを通した知見に基づくものではありますが、「働き方改革」といっても、それほど日本企業の労使慣行、雇用慣行は揺らがないように感じていますので、おそらく私の見立ては正しいのではないかと。また詳しくはブログや講演等で少しずつ解説をしていきたいと思います。

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