夕刊各紙、テレビニュースで報じられておりますように、本日消費者庁の公益通報者保護制度実効性検討委員会の最終回(第14回)が開催されまして、公益通報者保護法の見直し提案に関する報告書が大筋でとりまとめられました(「大筋」というのは、細かな字句の修正等を座長一任として、後日正式案が公表される予定だからです)。
私も(恥ずかしながら)夕方のNHKニュースでドアップで映っていましたが、検討委員としての役目は本日終了しました。ちょうど3年前(2013年11月)、消費者庁の公益通報制度アドバイザーを拝命して以来、阿南氏、坂東氏、岡村氏(現任)の三長官のもとで実効性向上への施策作りをお手伝いさせていただきましたが、これで一応お役御免です。宇賀克也座長も「今回の提言をぜひとも法改正につなげてほしい」と会見で述べておられましたが、私もまったく同感です。
ただ、公益通報者保護法改正に向けた作業は第1ラウンドが終了したところであります。今後は経済団体や中小事業者団体、法務省や厚労省を含めた関係官庁、大臣や国会議員の方々に理解を求めていかなければ改正にはつながりません。まさにタフな第2ラウンドが控えているものと推察します。今後また大きな企業不祥事が発覚するような事態となれば、想定外のスピードで法改正が進んだり、個人情報保護法のように、消費者庁から新設委員会に管轄を移行する、ということも「政治家の一声」でありうると思います。いろいろな準備をしておく必要がありそうです。
なお、法改正ばかりが注目されていますが、本日(12月9日)、内部通報制度の実効性を高めるための民間事業者ガイドラインも11年ぶりに改訂され、消費者庁HPで公表されました(私も一部改訂作業に携わりました)。事業者の通報者に対する「不利益処分」とはいかなるものを含むのか、個別具体的に示す等、かなり詳細な内容になっております。とりわけ上場会社の皆様方は、ガバナンス・コードにおいても適切な内部通報制度の整備が要請されていますので、ぜひとも新しい民間事業者ガイドラインを参照いただき、今後の改訂等にお役立ていただければ幸いです。
最後になりますが、本日の朝日新聞夕刊の一面(東京版・大阪版とも)に私のコメントが掲載されていますので、その部分だけ引用させていただきます。
(内部通報制度に詳しい山口利昭弁護士の話)「内部通報制度は、パワハラなど労務上の問題については比較的機能しているが、重大な企業不正についてほとんど機能していない。制度があっても、社員の人たちがそれを信頼しておらず、通報したら報復にあうのではないかと疑い、萎縮しているからだ。まずは企業自身が、制度を機能させることにメリットがあると理解し、制度に対する社員の信頼を高めていくことが必要だ。」
もちろん委員の皆様の中には「内部通報制度が機能するというのは幻想にすぎない。マスコミや監督官庁のような第三者に情報を提供する内部告発者を保護することこそが企業不正撲滅には有効だ」と主張される方もいらっしゃいます。ただ私自身としては、内部通報制度を整備することが、社会の流れからみて企業にも大きなメリットがあることを、今後も広報していきたいと思います。消費者庁のみなさま、(ワーキンググループメンバーを含めた)委員のみなさま、いろいろとありがとうございました。