ガバナンス改革-議決権行使助言会社も「形式」よりも「実質」か?
先週、米国の議決権行使助言会社であるグラスルイスさんが、「2017年度議決権行使助言方針」において「日本の監査役会設置会社の場合、社外取締役と社外監査役の合計人数が(監査役を含む)全体の3分の1以上となるように要請する」ことが報じられていました。3分の1に満たない場合には取締役会議長となることが多い会長さんの選任議案に反対推奨を行うとのこと(日経ニュース12月15日付けより)。
これを「ガバナンス規制が厳しくなった」とみるかどうかは意見が分かれるかもしれません。しかし、私は日本の監査役制度を真正面から認めたものとして前向きに評価しています。監査役もボードメンバーであり、社外監査役もモニタリング構成員として(経営の監督者として)重視する、といった同社の指針変更は、議決権行使助言会社も日本企業のガバナンスについて「形式」よりも「実質」を重視する姿勢に変わってきたことの表れではないかと。社外監査役2名と社外取締役1名であれば、社内取締役5名でも無事クリアできそうなので、わざわざ(ガバナンス・コード対応として)監査等委員会設置会社に移行する必要はなくなりますね。この先、「監査等委員会設置会社には社外取締役4名以上の選任を求める」といったISSさんの指針等が出た場合には、すでに監査等委員会設置会社に移行した企業さんはどう対応されるのでしょうか。
日経新聞の11月23日付け記事によると、グラスルイス社の2017年指針では「社外取締役についても、上場企業の現役経営陣については兼務1社までとするが、非上場会社の経営者や大学教授の方々の場合には兼務4社まで」といった方針に変更するようで、こちらも社外取締役の役割が重視されるなかでかなり現実的な水準ではないかと思います。
最新の旬刊商事法務(12月15日号)の巻末「スクランブル」で初めて知りましたが、海外では議決権行使助言会社に対する法的規制が厳しくなってきているそうです。主に①助言会社の議決権行使助言業務とコンサルタント業務との利益相反問題、②推奨判断に対する企業側からの反対意見陳述の機会付与という点からだそうですが、日本でもスチュワードシップ・コードの改定を控えており、助言会社もコード対応が求められる立場なので、「形式よりも実質」ということでかなり柔軟な対応に変わってくるのかもしれませんね。
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