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2016年12月 5日 (月)

IESBAの新規定-監査法人に対する内部告発制度への期待

監査法人の経営幹部の方とお話ししていて、どこの監査法人でも最近話題に上るのがIESBA(国際会計士倫理基準審議会)が作成した新しい規定「違法行為への対応」です。この国際ルールの適用は来年7月からとなりますが、日本公認会計士協会さんに対しても、「同等レベルのルールを策定することを検討しなければならない」と要求しています。

日本語仮訳は会計士協会さんのHPで閲覧可能ですが、監査法人の幹部の方々が悩んでおられるのが「監査人が違法行為をたまたま見つけたときの対応」です。当該国際ルールでは、この「違法行為」の範囲がかなり広いわけでして、環境問題や公衆衛生・安全問題、情報漏えい、賄賂問題なども含みますし、「不正」とあるのはおそらく不正競争防止法や経済法違反も含む概念だと推測されます。会計士の社会的役割を高めるための倫理規範の改訂なので、おそらく広く不正問題に直面した会計士さんの職業倫理を高める必要がありそうです。

このたびの臨時国会で改正道路運送法が成立し、バス事業者の安全運行義務違反の罰金が100倍となり、刑事罰も厳格化されました。また民間団体を活用しての監査制度も開始されるそうです。運輸事業者における働き方改革も注目されていますが、労働問題は労働者の人権保護だけでなく国民の生命の安全性確保の問題も含むものと認識されつつあります。先の会計士さんが対応すべき違法行為の範疇にも(労働問題が)含まれうる課題ではないでしょうか。

もちろん不正に「重要性」がなければ対応する必要はありませんが、会計監査人の「違法行為への対応」が行動指針として広く認知されるようになれば、社内の内部通報や内部告発にも影響が出てくると思います。会計監査人の守秘義務はたいへん信頼のおけるものなので、広く違法行為を通報し、その是正を監査法人から経営者に求めてもらう、ということになるかもしれませんね。このIESBAの新規定の施行開始を受けて、日本公認会計士協会さんがどのような倫理規定の改訂を行うのか、公益通報者保護制度との関係も深いものとして、今後注目しておきたいと思います。

 

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