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2016年12月28日 (水)

会社法務A2Z特集号に論稿を掲載いただきました。

Dsc_0027_400東芝さんの業績が数千億円規模の特損計上の可能性発表ということで、またまたスゴイことになってしまいました。米国原子力事業を担うウエスチングハウス社が1年前に買収した企業の「のれん」の減損に関連するものですが、社長記者会見では「12月中旬に(減損の可能性を)知った」そうです。東芝さんが特別注意市場銘柄から解除されるためには内部管理体制に不備がないことが条件ですが、(原子力事業の運営費用は想定外に膨らみやすい・・・といった事情を考慮したとしても)「12月までトップに減損が報告されなかった」という事実はどうみても内部管理体制の欠如としか言いようがないと思います。26日の社長記者会見が突如キャンセルされて翌日になった、という事態をみても異常事態ではないかと。不謹慎ですが、今後の上場維持のためには「減損の事実を知っていて、あえて公表しなかった」ほうがよっぽど内部管理体制が整備されていることの理由になるのではないでしょうか(もちろん統制環境の不備という問題が新たに生じますが・・・)。ここへきて東芝さんの経営問題が再燃するとは予想もしていませんでした。

さて、クリスマス三連休も終わり、皆様もそろそろ仕事納めの頃ではないでしょうか。当事務所も12月28日から1月4日までお休みをいただきます。そういえばブログをご覧のある方から、「エフオーアイ損害賠償請求事件の判決全文をお送りします」とのご連絡をいただきました(どうもありがとうございます)。おそらく年始になると思いますが、ご厚意に甘えてじっくり読ませていただきます(とても楽しみです!)。

本題ですが、第一法規さんの会社法務A2Zの毎年恒例特集「企業法務2017年の展望」におきまして、危機管理・不祥事対策部門の執筆を担当させていただきました(上掲写真ご参照。合計4ページです)。証券市場、公正取引法、労働法、消費者法等の分野における重大リスクの認識ということに焦点をあてておりまして、少しずつではありますが私個人の意見も述べております。全国書店にて発売されましたので、またご興味がございましたらお読みください(なお、毎度のことながら執筆陣は私以外は豪華です)。

紙幅の関係でほとんど触れることができませんでしたが、来年は内部通報制度の整備や内部告発への公益通報者保護法の適用問題など、企業不祥事を原因とした企業のリスクマネジメントが更に注目を浴びることになるのは間違いないでしょう。本日もファーストリテイリング社のパワハラ内部告発記事が話題になっていますが、企業の対応をみながら第2、第3の不祥事記事が掲載されるというパターンは、(以前にも船場吉兆事件等でもみられましたが)今後のトレンドになると思います。よく社長の記者会見で「私は知らなかった」とおっしゃいますが、ホントに知らないからこそ、第2、第3の不祥事告発が容易になされる傾向にあります。

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コメント

山口先生 一年間お疲れ様でした、小職はこのブログによって、いつも初心に戻れます、また、「励み」にもなります。無理をせず、続けていただきたいと願います。(お医者さんからゴーイングコンサーンの意見を貰わないよう・・)

さて、T社は新社長の決断が米国子会社決算の12月を控え、ついに、出たのですね。これを回避すると現経営陣の責任になる事は必至ですから、随分と役員会?では議論があったと推量します。経営不振時にトップとなった人は立ち尽くすような場面が続くでしょうが、英断を評価したいと思います。これは、来年の当局の方針にも影響する?筈ですが、これに拘っては、監査制度の存在を矮小化するだけと、先生はお気づきでしょう。グローバル企業が辿った重大経営路線とその結果発現の途上で、会計士監査や監査役監査はどれだけその機能を発揮できるのでしょうか。

投稿: 一老 | 2016年12月28日 (水) 22時18分

一老さん、ありがとうございます。
本日のエントリーで少し触れさせていただきました。私も同感です。「内部管理体制に問題があるのでは」→「むしろ内部管理体制が整備されたからこそ開示に至ったのでは」といった議論がなされることを切に希望します。

投稿: toshi | 2017年1月 7日 (土) 11時57分

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