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2016年12月14日 (水)

証券市場の健全性確保に立ちはだかる司法の壁?(K物産事件)

12月12日をもって証券取引等監視委員会の佐渡委員長が退任されました。日経ニュースによりますと、佐渡氏は(東芝事件で歴代社長の立件が困難を極めていることについて)「検察との関係などいろいろと検討すべき事案であり、新しい委員会で新しい視点で判断していただきたい」と述べられたそうです。金融庁VS検察庁の決着は、次の委員長の時代に持ち越されるそうです。このままでは証券市場の健全性は確保できない、といった強い意欲をもって金融庁が立件に動いたのですが、検察庁は司法判断のハードルの高さからか、なかなか積極的に動くことはないようです。

さて、「金融庁vs検察庁」の構図で司法の壁を痛感するものとして、東芝会計不正事件ばかりが報じられていますが、私はむしろ神戸物産事件のほうが深刻ではないかと感じています。自社株買いに絡む内部情報を漏えいしたことによる、日本で過去最高の巨額(50億円)インサイダー事件として今年2月に報じられた神戸物産インサイダー疑惑。同社内部でも徹底した調査を行ったそうですが、今年6月には法人および役員に対する神戸地検の捜査も行われたことが報じられました(会社自身もリリースで認めておられました)。しかしご承知のとおり、この12月9日に神戸地検は法人及び役員について(理由は明らかにされていないものの)不起訴処分とすることを決めました(会社のリリースに基づく)。

昨年11月に金融庁の調査が開始されたそうですが、今年2月以降は巨額インサイダー事件の報道で株価は急落、同社役員の名誉も失墜したそうですが、ここでも金融庁と検察庁との意見の食い違いがあったものと推測されます。ここからは私の完全な憶測にすぎませんが、この9月に東京電力株式の公募増資に関する関係者への課徴金命令取消判決が出たところなので、「情報提供者」を立件するインサイダー規制についても検察庁は相当に慎重になっているのではないでしょうか。しかし今回の神戸物産事件については、上場会社およびその一般投資家に及ぼす影響の大きさからみて、単なる金融庁vs検察庁の構図の話題だけで済む話ではないように思います。むしろ今後の証券市場の健全性をどのように規制していくべきか、といった大きな論点に関わる話ではないかと。

証券取引等監視委員会の佐渡委員長は、最後の記者会見にて「印象に残っているのは公募増資インサイダー事件だ」と述べておられましたが、一連の公募増資インサイダー事件を含めて、心残りになった事件もいくつかあるのではないかと(勝手に)想像しております。

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