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2017年1月 4日 (水)

公益通報者保護制度に関する民間事業者・労働者の意識調査結果の公表

私の本業とも関係する話題ですが、消費者庁は本日(1月4日)、公益通報者保護制度に関する民間事業者および労働者の意識調査・実態調査(アンケート集計)の結果を公表しました。4年ぶりの実態調査報告なので、4年前との結果比較も含まれています。二つの報告書で合計200頁になりますが、概要版も出ておりますので、そちらでサラっとご覧になることも可能です。

ご承知のとおり、企業不祥事が明るみとなる端緒は、なんといっても内部通報や内部告発です。「社内調査が端緒」というケースも多いのですが、実は内部通報が社内調査のきっかけということもあります。経営トップが社内不正に早期に気付くためにも内部通報制度の充実は欠かせません。独禁法のリニエンシー制度、(会社法、金商法、不正競争防止法違反にも適用が検討されている)改正刑事訴訟法における協議・合意制度、景表法上の課徴金制度、(年末に特例適格消費者団体が誕生して注目される)消費者裁判手続き特例法、(TPP発効を条件としていますが)確約手続、海外カルテル、海外贈賄規制等、企業の重大な不正リスクを低減するためにも必須の内部統制システムです。これだけ労務コンプライアンス違反への社会的批判が厳しくなったのですから、パワハラ・セクハラ等の通報をいち早くキャッチすることも大切です。

また、この報告書の注目点としては、労働者の意識調査結果報告の75~76頁あたりです。労働者として、内部通報制度が整備されている企業に入社したいと回答した方が8割を超えており、またひとりの消費者として、内部通報制度が充実している企業の商品・サービスを購入したいと回答した方も85%を超えています。企業ブランドを高めるためにも内部通報制度の整備・運用は重要であり、企業にとって、不正の早期発見という有用性以外にもメリットがあることがわかります。

私も委員を務めておりました消費者庁・公益通報者保護制度の実効性検討委員会では、どちらかというと「内部告発(マスコミや監督官庁に情報提供すること)」をした従業員をどのように保護すべきか、といった点の議論が中心でしたが、民間事業者としては、内部通報制度を充実させることで、いかにして内部告発者を出さないか、という点に注力していただきたいと思います(なお、この点は私個人の意見であることを申し添えます)。

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コメント

山口先生が「【通報は経営者の役に立つ】ことを広く伝えたい」と常々おっしゃっています。
消費者庁検討会で「(内部告発も含めた)公益通報者を保護する」観点で議論がなされたのは、日本の現状・実状を踏まえた結果だと考えます。
「通報」と「告発」の区別が明確になっていない方にとっても「どっちしろ報復される」という意識ではないのでしょうか。
昨年の日弁連シンポでは、日弁連消費者問題対策委員長が「公益通報が感謝される社会に、社会意識が変わらないとダメだ」との挨拶をされましたが、企業の経営者(通報される側)の意識改革を促進するような御活動をどうか宜しくお願い申し上げます。
具体的にはどうしたらいいんですかね。

投稿: 試行錯誤者 | 2017年1月 5日 (木) 17時34分

いつもコメントありがとうございます。
広く伝えたい・・・という点は近々実行しますので(笑)、またご覧いただければと思います。
企業経営者の意識改革というところは、私は公益通報制度の有用性だけを唱えても限界があると思っています。イマ風に言えば「攻めのガバナンス」にも役立つ、「守りのガバナンス」にももちろん役立つ、従業員の意識が変わればさらに役立つ、といったことを実例をもとに各社で検討いただくことが必要です。そのためには私の力ではなく、たとえば各企業の顧問弁護士の方々のお力を借りるということも必要だと思います。また昨年12月の日経ビジネスの特集記事でも取り上げられましたが、間接部門の力をもっと高めていただくことも必要だと思います。
近々、オリンパスの浜田さんと私との対談(雑談?)から得たヒントをここで取り上げます(もちろん浜田さんの了解を得ております)。あの二度にわたる浜田さんの裁判史をそのまま風化させてはいけないと感じています。

投稿: toshi | 2017年1月 5日 (木) 17時45分

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