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2017年2月15日 (水)

東芝の内部統制に関する不備と「経営者の不適切なプレッシャー」

東芝さんは2月14日に予定していた四半期報告書の提出を、会計監査人のレヴューが得られないとして1か月延長すると発表しました。朝日新聞WEBで記者会見の様子を動画視聴しましたが、不正疑惑が持ち上がったこと、そしてメモリー事業すら手放すことも検討していること(他社に過半数の株式を譲渡してもかまわない)に言及した会見には驚きました。あと、日経の田中記者が会計的見地から(個人的には)ナイスと思える質問をされていた印象を受けました。

今年に入って「PPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の過程において内部統制上の不備がある」との内部通報があったようですね。ウェスチングハウスのCEOに対して、同社の社員からの内部通報あり・・・ということなので、すべて海外で不正疑惑が申告されたというものだそうです。ただ、東芝さんのリリースを読む限り、内部通報の内容である内部統制上の不備と、その後の調査で判明した「経営者による不適切な圧力」との関係がよくわからなかったですね(どなたか質問してほしかったです)。また国内で第一報を受けたのは経営陣なのでしょうか、それとも監査委員会なのでしょうか。監査委員会が調査の主体のようですが、調査で判明した事実は経営陣と共有するのでしょうか?海外の主要会社の経営トップの不正疑惑ですから、チャイニーズウォールが必要な気もしますが。。。

しかし、そもそも東芝さんのリリースに登場する「内部統制の不備を示唆する内部通報」とか「不適切なプレッシャーを懸念する指摘」とか、「経営者による内部統制の無効化が仮にあった場合」等、ほとんど日本語が理解できません。たしか昨年6月の時点で、東芝さんは「当社の財務報告に関する内部統制は有効とは言えない」と宣言しておられるので、無効なものを無効化するというのはどういった意味なのでしょうか?後でどっちとでもとれるような評価を示す言葉のように思えます。事実関係は調査中だとしても、公表文書の内容が不明な点は釈明する必要があるように感じました。

内部統制上の不備がどのようなものか私にも想像できませんが、S&Wを買収したWEC社のPPAについては日本でも監査が厳格になっていますので、結果的に「四半期レヴューにおいて会計監査人を騙した」ような結果となれば、やっぱり無視できない不正だと思います。以前紹介したアメリカの行動経済学者ダン・アリエリーさんの「ズル-嘘とごまかしの行動経済学」で、会計監査人を騙すのは簡単、「監査上の重要性」を活用すればいいだけ、ということが解説されていました。S&W買収金額を少なく見積もっておけば、PPAも自社監査チームだけで対応すればよい(つまり全体からみればS&Wの買収価格は重要性に乏しい)として、「PPA期限間際になって過大な債務が発覚した、のれんで処理します」と言いやすい・・・といったことを誰かが考えたのでしょうか(このあたりは会計のご専門の方のご意見もコソっとお聴きしてみたいところです)。

もちろん勝手な想像ですが、ともかく内部統制の不備が全体の決算数字への影響が軽微であったとしても、かりに監査を妨害するようなものであるとすれば、かなり重大な問題ではないかと考えます。法律事務所による調査結果への関心が高まるところです。

2月 15, 2017 不正を許さない監査 |

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コメント

公表された事実と背景は、確かに、理解するには難しい要素を包み込んで数字だけが一人歩きしているように感じました。「のれん」の減損は子会社の損失を反映した結果であるのでしょうが、そもそも子会社の損失には何が含まれているのか(12月までの工事損失が反映されていることは当然として、これからも工事を継続していかねばならない前提で、その工事期間に関わる・・見積もられた・・工事損失が、引当金としてどこまで織り込まれたのか、もしくは織り込まれていないのか。)外部からは見え辛いのです。公表金額は確かに巨額ですが、これですっかり病巣を切り取った?かどうか、それとも工事が遅れ遅れて進行する度に「工事損失引当金」として見積もられる金額が追加的に生じていくのか、疑問です。ただ、受注損失や工事損失の引当においては、完工までの期間と発生費用を合理的に見積もる事は極めて困難な経理作業であり、会社や監査法人と言えども推算が容易でないと思えます。

投稿: 一老 | 2017年2月15日 (水) 11時04分

なんで、決算発表を延期したのでしょうかね? 四半期報告書はともかく、四半期の短信は、監査人 のレビュー報告は不要ですので、あそこまで数字が固まっているのであれば、決算発表すればよかったのに、と言うか、あそこまで数字を出しているので、事実上決算発表しちゃってると言ってもいいかと思います。現在、多く の上場企業が 、速報値の公表である四半期決算短信と確定値の公表である四半期報告書の公表をほぼ同時に行なっている矛盾が露呈したように思いました。こんなことなら四半期決算短信制度などやめてしまえばいいのに。

投稿: Beaver | 2017年2月16日 (木) 00時26分

一老さん、ご教示どうもありがとうございます。専門家の方から見ても、なかなか認識や評価は難しいということですね。本日、内部通報の中身が少し判明しましたが、調査の過程でもう少し会計処理の中身がわかればよいですね。

投稿: toshi | 2017年2月16日 (木) 00時28分

Beaverさん、コメントがかぶってしまいました。
>現在、多く の上場企業が 、速報値の公表である四半期決算短信と確定値の公表である四半期報告書の公表をほぼ同時に行なっている矛盾が露呈したように思いました。こんなことなら四半期決算短信制度などやめてしまえばいいのに。

四半期開示の見直しは現在も議論されていますが、関係者の思惑がいろいろとあって「引き続き検討課題とする」で終わってしまうような気がします。四半期開示の弊害(たとえば短信と報告の重複)という「立法事実」の積み重ねが社会問題化しないと難しいかもしれませんね。

投稿: toshi | 2017年2月16日 (木) 00時37分

「世界」3月号に細野祐二さんが書かれている「東芝・債務超過の悪夢」では、東芝経営陣の意図的な隠ぺいであるとされています。まさに時間稼ぎの買収劇が2015年の騒動の最中に進行していたと…。会計を専門の身としては、普段この雑誌を見ることは無いのですが、読み応えのあるものでした。未読であれば是非。

投稿: ぶるーじぇい | 2017年2月18日 (土) 05時13分

情報どうもありがとうございました。東洋経済オンラインで細野さんが(少しだけ)解説をされていますが、やはりこちらの論稿を読むのが一番でした。

投稿: toshi | 2017年2月21日 (火) 22時37分

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