三菱自動車燃費偽装問題-日産にも課徴金処分は下るのか?
皆様すでにご承知のとおり、1月27日に消費者庁から三菱自動車さんに対して課徴金納付命令が発出されました。昨年発覚した燃費偽装事件に関して、パンフレットやネット上でのCMについて、優良誤認表示が認められた、ということです。昨年4月1日に施行された平成26年改正景品表示法ですが、新設された景表法に基づく課徴金処分の第一号ということで、マスコミでも大きく報じられています。
今回報じられている課徴金処分ですが、これは「後から調査したら普通自動車にも偽装があった」と三菱さんが公表したものに関する不当表示が対象です(課徴金処分の根拠法が施行された4月1日から不当表示をやめた8月30日まで)。軽自動車については、あの記者会見が開かれた昨年4月20日に、三菱さんも(OEM供給を受けた)日産さんも表示を中止しているわけですが、こちらについては両社とも、消費者庁が課徴金処分を検討しているということのようです。
ところで1月27日の日経新聞記事によりますと、日産さんも景品表示法上の被害者返金計画の認可を消費者庁から受けていること、「日産も燃費問題に気付いていたのにその後の対応が遅かった」として措置命令を受けたことが報じられています。つまり、この記事内容が真実だとしますと、燃費偽装を行った三菱さんだけでなく、偽装を指摘しながら、その後の対応が遅かった(とされる)日産さんにも課徴金納付命令が下る可能性がある、ということですね。
「記者会見が(たとえば昨年3月中とか)もう少し早ければよかった・・・」と日産の関係者の方々も後悔しているかもしれません。燃費偽装に関する第三者調査委員会報告書によると、燃費偽装の疑いを日産が最初に指摘したのは平成27年の秋ころと記載されています。その後は日産と三菱で共同調査が行われ、偽装が判明して記者会見となるわけですが、その間に新しい景品表示法の施行日を迎えることになりました。組織としての過失が日産に認められた・・・と消費者庁から認定されることについては、日産さんとしては納得できるものでしょうか?
日産さんの今後の対応として考えられるのは、①消費者庁から認可を受けた返金措置計画に沿って返金を完了し、結果として算定される課徴金額よりも返金額が上回ることで課徴金処分を免れる、②ガイドラインでは、不当表示に気が付いてすみやかに表示を中止した場合には課徴金処分を免れることになっているので、自社の対応は「すみやかに表示を中止」した場合に該当すると主張して相当な注意を怠っていたものではないと反論すること、③返金額が算定額に不足した場合には素直に課徴金処分に従うこと、のいずれかかと思われます。
実施予定返金措置計画の認可については、当該企業の商品・サービスの内容、認定申請前の任意のリコールの状況等によって認可に関する難易度が変わると思いますので、ここでは触れません。しかし、「不当表示であることを知らないことについて相当な注意を怠っていなかった者」に、今回の日産さんが該当しないとなると、消費者庁の見解は相当に企業側に厳しいものといえるのではないでしょうか。三菱さんに対する課徴金処分の文面をみますと、「相当な注意を怠っていない」とする企業側が、その相当性を根拠つける事実を指摘しなければならない(そうしなければ立証に成功しない)ことがわかりますので、企業側の大きな課題になりそうです(また、企業法務的には不当表示の自主申告に関する消費者庁の取り扱い等も興味深い論点ですが、こちらはまた別の機会に指摘したいと思います)。
たとえば優良誤認や有利誤認に関する内部通報や内部告発が届いた場合、その調査に手間取って報告や公表に時間を要した場合、「速やかな対応とはいえない」と行政から判定されることは、どこの企業においても十分に考えられます。「相当な注意を怠ったとはいえない」とはどのようなものか、法26条の体制整備義務の十分な履行がこれにあたることは間違いありませんが、平時だけでなく有事における企業対応の状況にも関わるものだと理解しておいたほうがよさそうですね。軽自動車の燃費偽装問題に関する今後の消費者庁の判断が注目されるところです。
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