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2017年2月20日 (月)

デジタル運用広告の「危うさ」と広告代理店における財務報告の信頼性

昨年12月7日のエントリー「電通事件-真綿で首を絞めるソフトローの実効性(プレッシャー)」におきまして、私は以下のとおり素朴な疑問を呈しました。いずれこの広告代理店業界におけるグレーな領域は、コンプライアンス問題の火種になるのではないかと予想していましたが、ようやく大手新聞も問題視するに至ったようです。

そしてもうひとつは広告料の不適切問題です。米国広告主協会が電通の不適切広告を広く紹介していますが、そうであるならば日本の広告主協会(日本アドバタイザーズ協会)も、そろそろ電通さん含め、大手広告代理店のデジタル広告に関する調査を開始しているのではないかと推測いたします。業界団体ではなく、広告主さんの団体ではありますが、電通さんを含め、広告代理店業界の自主規制を要望するようなことはないのでしょうか?

土曜日(2月18日)の読売新聞一面トップと社会面にて、いよいよ「ネット広告閲覧水増し」と題する特集記事が掲載されました。米国アドバタイザーズ協会の調べでは、昨年1年間で広告詐欺は8100億円(!)にも上るそうですが、やはり日本でも同様の調査が行われていたのですね。日本のIT企業を主体とした調査によると、国内で100億円以上のデジタル広告における被害額が判明したそうです。広告主は知らないうちに、過大な広告請求を受けていたことになります。

電通さんは先日、デジタル運用広告の掲載数を自動でカウントできるような仕組みを今後導入する、とリリースされていましたが、たとえ掲載されたとしても、(一瞬で消えてしまうものも含まれているそうなので)人間が一般に認識しうるような形で掲載されたのかどうか、どのように確認するのでしょうか。また広告に対するクリックの自動操作という不正をチェックする仕組みは作成できるのでしょうか。いずれにしましても、ネット広告が売上の相当部分を占めるようになってきた大手広告代理店にとって、デジタル運用広告の正確なカウントは財務報告の信頼性に関わる大問題になりつつあると思います。

電通さんの場合には、自社でネット広告をチェックする社員を抱えていますが、そもそもコンプライアンスの視点からすれば、「こんな危ない業務は下請けに丸投げするほうがよい」と考えるところも出てくるのではないでしょうか(もちろん、そのような発想自体がひとつのコンプライアンス上の問題ですが)。となると、監査の対象も下請け先事業者に向かうことになりそうです。しかしながら単価の安いデジタル運用広告の掲載回数チェックとなれば、下請け業者の社員の方々にとってはとてつもなく労働時間を要し、今度は労基法違反リスクを抱えるというジレンマに陥ります。

日本アドバタイザーズ協会役員の方が述べておられるように、今後はデジタル運用型広告の自動カウントシステムの仕組みを(業界あげて)早急に構築しなければ、財務報告の信頼性を毀損することになってしまうでしょう。「下請けに丸投げして一件落着」といったことで回避することはできないコンプライアンス問題に発展するように思えます。

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