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2017年3月16日 (木)

監査等委員会設置会社と任意の指名・報酬委員会の関係整理はむずかしい

先週金曜日(3月10日)に経産省CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)から研究会報告書「実効的なガバナンス体制の構築・運用の手引き」(CGSレポート)が公表されました。今後の政府によるガバナンス改革の実施に大きな影響を及ぼすレポートであることは間違いないと思いますので、本日、なんとか一読いたしました(「一読」であり、まだ「精読」はできておりません・・・)。

企業法制にたいへんお詳しい学者、実務家の方々がおまとめになった報告書なので、以下の私見は「場末の弁護士の遠吠え」程度にお読みいただけば結構ですが、同報告書の72頁、73頁あたりに整理された「監査等委員会設置会社と任意の指名・報酬委員会との整理」については、どうも疑問が残ります。といいますか優秀な研究会メンバーの方々の思考に私がついていけてない、というのが現実かもしれません。。。

この論点は、平成26年改正会社法が施行され、また金融庁審議会にてガバナンス・コードが策定された頃から私が難問だと感じていたところです。その論点をCGS報告書が整理しておられるのはとても評価できるところですし、ガバナンス構築に向けた上場会社の実務に与える影響も大きいと思います。少々長いですが、その関係整理について同報告書73頁から引用させていただくと、

<参考:会社法との関係-監査等委員会設置会社と任意の指名・報酬委員会->

監査等委員会設置会社の場合、監査等委員会の選定する監査等委員は、監査等委員以外の取締役の指名と報酬に関して意見陳述権を有する。 かかる意見陳述権と、任意の指名委員会・報酬委員会の答申内容や取締役会の決定 権限との関係について、整理しておく必要がある。

例えば、全ての監査等委員のみで構成する指名委員会・報酬委員会を設置することとすれば、意見陳述権との関係の整理は容易となる一方、全ての監査等委員が指名・報酬・監査の全てに注力する必要が生じることから、監査等委員(特に社外取締役) の負担が大きいという難点はあり得る。

他方、監査等委員会の選定する監査等委員が代表して任意の指名委員会・報酬委員会に参加するとすれば、監査等委員会以外の議論の影響を受けていることをどう評価するかという点の整理が必要であるが、監査等委員会の選定する監査等委員の意見も反映させた上で指名委員会・報酬委員会が原案を作成するのが通常と思われるため、 実際上の問題が生じないと考えられる。

監査等委員が 1 名も入っていないような場合には、監査等委員会の選定する監査等 委員が、指名委員会・報酬委員会とは別の意見を出す事態も生じ得る点に留意が必要 である。

といった内容です。なお、段落分けについては、私が便宜上分けているものにすぎません。

1段目、2段目、4段目についてはとくに異論はございません。問題は3段目です。まず手続面での疑問です。監査等委員会設置会社における監査等委員会には経営評価権限がありますが、これはすべての取締役監査等委員によって構成される(組織としての)監査等委員会の権限です(会社法399条の2、1項、3項3号)。もし、個人としての監査等委員に「意見陳述」のような機関としての行為が認められるのであれば、それは会社法が個別の条文で「選定」権原を明記しています。個人で行使できる監査権限についても個別条文で明記されています。しかし、任意の指名・報酬委員会は、とくに会社法上の機関ではありませんので、そもそも「選定」とはどのようなプロセスが(監査等委員会の権利を委譲する)権原となるのか不明です。指名・報酬委員会が任意的なものなので、監査等委員が集まって適当に代表者を決めることを「選定」と考えればよい、とのことかもしれませんが、それでは経営評価権限が組織としての監査等委員会に存在することとの整合性について説明がつきません。

次に、実体面での疑問です。指名委員会等設置会社の監査委員会とは異なり、監査等委員会設置会社の監査等委員会は会社法上独立性が高いものとなっています(委員の選任は株主総会の専権事項であり、取締役会による選定ではない、監査等委員以外の取締役よりも任期が長い等)。したがって取締役会に最終の議案決定権限があるとしても、「意見陳述」のおいて取締役会とは異なる意見を述べることも当然に想定されています。かりに監査等委員のおひとりが代表者として指名委員会で意見を述べたとしても、理屈上では異なる意見を監査等委員会が(多数決によって)形成することは可能です。したがって、任意の指名・報酬委員会が原案を作成したからといって、監査等委員会はその原案に対して意見形成権限まで拘束される理由はありません。つまり、実体面からも監査等委員会と任意の指名・報酬委員会との関係は何ら整理されていないと考えられます。

そして最後に「実際上の問題が生じない」と記載されていますが、この「実際上の問題」とはいったい何を指すのか、その実際上の問題がどのように解決されるのか、意味がまったく不明です(おそらく私が読んでもわからないので、法律に詳しくない方が読まれても、たぶん意味不明だと思います)。

報告書に関する「アラ探し」程度のことであれば「ブログのひとりごと」で済む話です。しかし、任意の指名・報酬委員会への監査等委員の関与については、取締役の重要な職務執行に関わる問題です。ひとつ間違えますと会社法違反(取締役の善管注意義務違反=法令遵守義務違反)に該当するおそれもあるのではないでしょうか(そういえばクックパッド社の株主総会における監査委員の方の長い個別監査意見を思い出しました)。

先日も、監査等委員会設置会社である某上場会社において、ファンドの支援を受けた創業家株主と現経営陣との支配権争いが臨時株主総会の場で演じられました(結果は創業家株主側の取締役選任議案が可決されて社長即時交代となりました)。同社の取締役監査等委員の方々は提訴リスクを負うこととなり、たいへん悩まれたのではないでしょうか。昨年末現在で730社以上の上場会社が監査等委員会設置会社に移行、もしくは移行を表明しています。ガバナンス・コードにコンプライすることに躍起になっておられる上場会社も多いのが現実ですし、実務的にも大きな影響を及ぼす点なので、あえて疑問を提起させていただいた次第です。

3月 16, 2017 商事系 |

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