移行後に試行錯誤する監査等委員会設置会社
日本の上場会社約3600社のうち、昨年末時点で732社が(監査役会設置会社から)監査等委員会設置会社に移行した(移行予定を開示した)そうで、今後も大規模な上場会社を含め、まだまだ監査等委員会設置会社は増加傾向にあるようです。
ただ、監査等委員会設置会社の中でも、①監査役会設置会社に戻したい、②監査等委員のメンバーを入れ替えたい、③指名委員会設置会社に移行したい、といった計画を実行に移そうとしておられる企業も出てきましたね。私自身もガバナンスの改訂支援を行っていますし、また旬刊商事法務の最新号(某議決権行使助言会社日本法人代表の方のご論稿)を読むと、実際に社外監査役からの横滑りでは、社長が想定していたガバナンスが発揮できないとして、すべての監査等委員を変更した企業さんのお話も出ています。
おそらく監査等委員会設置会社は今後「二極化傾向」が進むのではないかと予想します。ガバナンス改革に熱心で「もっと良いものに作り上げよう」と試行錯誤を繰り返す企業と、とりあえず「緊急避難的に」監査等委員会設置会社で落ち着く(特になにもしない)企業です。試行錯誤を繰り返す企業さんは、真剣に取締役会改革(モニタリングモデル、執行部門への権限委譲)に向けて、監査等委員会の人選、非常勤取締役(会社法上の社外取締役ではなく業務執行に関与する社外取締役)の選任など、他社との差別化を実践するための工夫を取り入れるところも出てくるように思います。
私が相談を受けている某社でも、たとえ監査役会設置会社に戻すことになったとしても、「なんだ、そんなことなら監査等委員会設置会社への移行などやめとめばよかった」ということではなく、あらためて自社経営組織の強みに気が付いて、どうすれば「強み」を事業に活かすことができるか真剣に検討する契機になりました。そういった意味では監査等委員会設置会社への移行もかなり意味のある行動だったのかもしれません。
ガバナンスを変えるということはとても準備が必要な作業ですが、あれこれ考えるよりも、まずは実行してみて「試行錯誤」を繰り返すほうが、(回復可能な)失敗を実感できる分、組織の活性化のためには有効だと思います。そのような意味では監査等委員会設置会社への移行が「ガバナンス・コードへの対応といった必要に迫られて半強制的」に行われた企業であったとしても、今後は機動的に対応する機運が社内に高まれば、それなりに効果があったのではないか、と考えたりしております(ただ、そもそも監査等委員会設置会社というものが、どういった機関なのか、社長も監査等委員もまったくわからずに移行していた会社は多いですよね)。
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