「公益」資本主義-英米型資本主義の終焉
本日(4月6日)の日経新聞朝刊7面に、それほど大きな記事ではありませんが、 「米経済『何かが間違い』JPモルガンCEOが株主に書簡」と題した記事が掲載されています。低い労働参加率、高額な教育費、国内のインフラ更新投資の欠如(大阪でもこのままだと水道費が1.6倍になるとか)、難解な税制等、いずれも米国の景気は上向きですが、所得格差が広がる懸念が示されており、これを大手金融機関のトップが「違和感」と捉えています。
株主資本主義、金融資本主義のアメリカでも、所得格差の現実に直面して、原丈人氏が提唱する「公益資本主義」に近い考え方を信奉する人が出始めたのではないでしょうか。日本ではAA型種類株式を導入したトヨタ自動車のCEOの方も、公益資本主義の賛同者のおひとりです。
書店に並んだ日に一気に読みました。いままでは「公益資本主義」の考え方、現実の資本主義社会への問題提起に共感しておりました。たぶん原氏のご著書をこれまで読まれた多くの方も同様ではないかと。ただ、本書はそこから進んで「では、いかにして株主資本主義から公益資本主義へと転換すべきか」その実践に向けた原氏の提言(ロードマップ)が後半に出てきますので「総論賛成、各論(一部?)反対」となるかどうか、そこが本書を読まれる方とぜひとも議論したいところです。法律的に批判をすることはできますが、具体的な提言に賛同するのであれば、その実現に向けた道筋を汗をかきながら考える必要があります(でもそのほうがワクワクして楽しそうですね)
星野リゾートの星野さんが大阪の新今宮に観光型ホテルを建設する時代です。「そんなアホな」と凡人の私などは一笑に付してしまいそうが、カリスマ経営者なら「町を変える」ことも現実化させるのかもしれません。この公益資本主義が日本に浸透する日も、近い将来、現実化するような気もしますね。
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コメント
12のポイントを見ると、会社制度、資本市場制度、税制、投資家の行動が、ちょっとごちゃごちゃになっているように見えました。
仕分けした上で議論する必要がありそうです。
株主資本主義信仰の壁はけっこう厚いと感じますので、既存の取引所の一つを公益資本主義に特化した制度で運用できるように、部分的な法改正から始めることが現実的かもしれません。
日本で導入するなら、「金融」の新しい定義(p.169)には、アクセス・トゥ・サプライチェーンも入れたいところです。
経済規模が大きくなると、どうしても分業は欠かせませんので。
投稿: ume | 2017年4月11日 (火) 10時21分
いつも楽しく拝見しております。
私もこの公益資本主義の考え方に賛同します。
株主資本主義と公益資本主義の調整を図るには、従業員向けの株式報酬を拡充するのがよいと思っています。
賃上げに応じない企業もこれなら応じやすいでしょうし、安定株主が増えることになり経営にもメリットでしょうし。
最近、役員報酬については税制改正などで使いやすく手当てがなされていますが、もっと従業員向けESOPなども使いやすいように制度的なインセンティブを図るべきと思う次第です。
投稿: 株式事務者 | 2017年4月11日 (火) 21時34分