公益通報者保護制度実効性検討委員会報告書へのパブコメ公表
約120年ぶりの債権法改正法案が今国会で成立する見込みとなったようですね(毎日新聞ニュースはこちら)。民事法改正は国民の社会生活にも大きな影響を及ぼすものと思います。ただ民事法の関係でいえば、私は最高裁に上告(上告受理申立て)されている民事事件の半分が「本人訴訟」という事態のほうがよほど国民の社会生活に影響を及ぼしているのではないかと思うのですが、いかがでしょうかね?(^^;
重要案件に最高裁判事の審理が集中できない民事訴訟の現状は、裁判所と弁護士会で真剣に検討すべき時期にきているように思います。弁護士自身の「利益」につながらない問題かもしれませんが、このまま放置していると自分たちの首を絞めることになるのではないかと。。。(「お前が言うな!」と叱られそうなので、これ以上は申しませんが・・・刑事事件の司法制度改革は進みましたが民事事件の司法制度改革は行わないのでしょうか?)。
さてここから本題ですが、本日(4月12日)、消費者庁HPに公益通報者保護制度の実効性検討委員会報告書への意見(パブリックコメント)が公表されました。検討委員会が公益通報者保護法の改正に向けた提言を出しましたが、その提言に対するご意見が多数公表されています(なお、このパブコメに基づいて報告書が修正されるわけではございません)。
この3月1日にも、大阪地裁において、従業員の監督官庁への不正通報を「公益通報」と認めつつも、「諸事情からすれば当該従業員は自主的に退職したといわざるを得ない」として従業員の不当解雇の主張が排斥した判決が出ています。2010年の拙著「内部告発・内部通報-その光と影」でも提言し、また上記報告書でも、公益通報と従業員の退職や配転命令といった業務命令との関連性が認められる場合には因果関係の立証責任を会社側に転換すべき、との提言をしましたが、この点については賛成意見が多かったようです。
反対意見の中には「そんなことをしたら、揉め出してから公益通報をする社員が出てきて人事・労務政策に支障が出る」との反対意見もありましたが、そもそも通報の対象となるような事実を抱えていること自体をなくすために公益通報者保護法が存在しますので、批判はあたらないように思います。
また、私自身が委員会で強く提言しておりました「事業者が公益通報に対して適切に対応すべき体制の整備義務に関する規定を設けること」については、とてもたくさんの賛成意見、反対意見が寄せられています。いや、これはありがたいです!これはぜひとも、今後の法改正への活動に参考にさせていただきたいと思います。
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コメント
「事業者が公益通報に対して適切に対応すべき体制の整備義務に関する規定を設けること」の実現性について。。。
消費者調査課が行っている「消費者志向自主宣言」企業を募る活動の中に通報制度のことも絡めてほしいという意見や、公益通報「優良企業」の認証制度(これは消費者制度課が平成30年度を目指して行うみたいですが)に対する意見も寄せられています。
すでに「事業者が公益通報に関する規定を設けるだけの時代」は去り、大企業の様々な不適切な対応の報道を目の当たりにして、「適切に真摯に【対応すべき】体制の整備規程を設けること」の『ことばの意味』は重いですよね。
どうしても「中小企業では通報体制作りが難しい」という部分にスポットが当たりがちですが、「制度がある大企業で不適切な対応がされている」部分に、もっと目を向けないと、上記認証制度の信頼性も低くなってしまいます(あるだけ、名ばかり企業の認証では意味ないです)。
山口先生は、この辺りを危惧されて日頃から発信されていらっしゃいます。
ですから「最終報告書」に今後の方向性として記述されている「通報経験者の実態調査」は、法改正のためとしてだけではなく、法改正がなされたあとでも「適切な対応がされているかの認証制度」の信頼性、実効性を【判定する】ために継続的に行ってほしいものです。
この実態調査に応じたことで、通報経験者に更なる報復行為が行われたら、即、認証取り消しとなるのが理想的です。
不適切な事業者の刑事罰、行政処分の検討も継続されていくのでしょうが、まずは「隠蔽されている」不適切対応を公にすることが大切だと考えています。
東芝がもっと大きな括りでの「内部統制制度・先端・優良企業」と思われていたことの反省をしっかりと(現実的な調査とデータを踏まえて)行う必要もあるでしょう。
パブコメとは別に、大阪弁護士会からは消費者担当大臣(松本純 国家公安委員長)宛てに意見が出されているようですね。
5月初旬まで、消費者政策課がパブコメ募集している「消費者基本計画工程表」の中にも「公益通報者保護法改正」のことが含まれているので、併せて考えてみようと思います。
投稿: 試行錯誤者 | 2017年4月17日 (月) 08時56分
いつも有益な情報、ありがとうございます。
本日、消費者庁HPにて民間事業者向けガイドラインの説明会で登壇させていただくことが発表されました(大阪だけですが・・・)
また、告知させていただきます。
投稿: toshi | 2017年4月20日 (木) 15時41分