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2017年4月24日 (月)

企業の悪評は一過性?-フィナンシャルタイムズ社説に異議あり

先週金曜日(4月21日)の日経朝刊(8面)に、英国フィナンシャルタイムズ紙の社説が掲載されていました。このたびのユナイテッド航空の過剰予約問題は世界で報じられ「この先何十年も語り継がれることになるだろう」と記されています。ただ、株式市場は冷静で、このたびの不祥事でユナイテッドの株価はあまり下落していないそうです。また、排ガス不正問題に揺れたフォルクスワーゲン社も、スマホ発火事故を起こしたサムソン社も、業績は悪化していません。これらのことから「たとえ企業不祥事を起こしたとしても、会社の悪評は一過性のものであり、顧客獲得にはそれほどの影響はない」と(やや批判的に)締めくくっています。

同じようなことは、私も以前からずっと考えているのですが、実際にはやはり企業不祥事は企業の業績に大きな影響を及ぼす、というのが私の結論です。ユナイテッド航空の今回の不祥事は、そもそも航空機の安全性に関わる不祥事ではありませんので、商品の安全性や経済性に関わるフォルクスワーゲンやサムソンの不祥事と比較すること自体にやや違和感を持ちます(もし航空機の安全に関する不祥事であれば、過剰予約問題とはまったく世間の評価は変わります)。

また、フォルクスワーゲンやサムソンの不祥事が業績に影響を及ぼさなかったとしても、不祥事を繰り返した三菱自動車さんでは、現実に組織再編につながるほどの大きな影響が出ています。海外ではどうかわかりませんが、日本では商品を販売した会社は、その商品が一般的に商品使用に耐えうると思われる期間、その商品を安全に使用するためのサービスを提供しなければならないのであり、これは社長さんが業務上過失致死罪で有罪とされたパロマ工業事件の判決でも示されています。これまでファンだった消費者は、最初の重大不祥事が発生したら「まさか」と思いますが、とりあえずは会社の再生を願って熱心なファンを続けてくれることが多いようです(これはとても大事なことでして、企業不祥事発生時における信用毀損状況の収束見込みが決まります)。

そして、消費者の生命、財産の安全を裏切る不祥事を起こした場合、商品の売上にはそれほど影響がなくても、二度目の不祥事発覚時には「まさか」が「やっぱり」に変わり、当該商品のファンは一変して企業の敵になる可能性があります。つまり、フォルクスワーゲンやサムソンのケースにおいて、現在のところ不祥事の発生が業績に影響していないとしても、購入者(ファン)の意識は不祥事の前と後では大きく変わっていることは注意が必要だと思います。このブログでも過去の不祥事について何度も取り上げてきましたが(たとえばエキスポランドやJR西日本に関連するこちらのエントリー)、これからは(これまで取り上げられなかったような軽微な不祥事でも)マスコミが過敏なほどに当該会社の不祥事を取り上げるようになり(前の不祥事によって消費者の関心が高まっているので当然です)、くりかえし当該企業の信用が毀損される、という競争上の大きなハンデを背負うことになります。

消費者は、どんな企業でも不祥事は起こりうることを理解しています。むしろ起きたときに企業がどのような対応をとるのか、その点への関心が高いのであり、単純に「不祥事による悪評は一過性か」といった質問に、容易に結論が出るものではないと考えています。一度大きな不祥事を起こした企業が、今後どのように再生していくのか、そこに疑問が生じるようになると、不祥事が業績にも株価にも大きな影響を及ぼすようになるものと思います。重大な不祥事は、企業に競争上の大きなハンデを与えることは間違いないかと。

4月 24, 2017 コンプライアンス経営 |

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コメント

競争上のハンデは大きくないけど、最近は補償問題で潰れるケースはあるかもしれませんね。だから、会社側は補償を軽減しようと画策し、補償問題で揉めるのです。ソロバン勘定だけ見れば、補償問題では不誠実な対応のほうが会社側にメリットがあります。悪評なんて、大した問題ではないですよ。

会社側の不誠実な対応に対しては、社長を襲撃するとか、実力行使ぐらいしか効果的な方法は無いと思います。被害を受けても、裁判になればあらゆる不誠実な対応が会社側から出てきますから、法による解決には限界があるのです。

自力救済は法令上は違法ですが、一方で被害市民による襲撃を未然に防止するのも困難です。その辺のバランスを取って行くことも、企業としては重要な課題だと思います。

投稿: 傍観者 | 2017年5月10日 (水) 13時50分

傍観者さん、コメントありがとうございます。

私は危機対応を仕事としていますので、傍観者さんのような考えで仕事をすることは楽しいのですが、このような考え方を会社の方の前では申し上げないようにしています。なんといっても、傍観者さんのような考えは、組織の人から「時代遅れ」と言われてしまいます。後向きの仕事を請け負う私はよいとしても、組織の方が自らおつとめされている組織を誇りに思えるでしょうか?

投稿: toshi | 2017年5月18日 (木) 17時13分

悪評が企業利益に影響を与えないというフィナンシャルタイムズ紙の社説を前提とすれば、何が企業を正していくのでしょうか?社説が間違っていると信じるのも一つかもしれませんが、実際には悪評などは一過性のものです。

経済的合理性によって企業を正していくのは困難であるというのが社説の意味するところです。倫理観を高めて、企業を正していく方法もあるかもしれませんが、企業の倫理観という曖昧なものに頼るのは非常に心許ない。

企業の倫理観以外で、企業を正すことが出来るとすれば、通常であれば刑事罰ということになります。しかし、日本では企業犯罪に対する刑事罰は殆ど機能していません。JR西日本の福知山線事件では、経営陣は無傷ですよね?

東電でも、株主代表訴訟以外で責任追及されるとは思えませんし、裁判で負けても保険で保護されるでしょう。

誰も責任を負わなくてもいいように、万全の体制を整えている大企業の場合、気の緩みが企業役員の間に生まれてしまいます。

企業人が、「時代遅れ」とみなすリスクにも目を向けておかないと、手痛いしっぺ返しを食らうこともあるのではないでしょうか?相手はヤクザではなく無数の市民なんですから、何が起こるかわかりません。ヤクザの何百倍も厄介な、困難当事者を相手にしなければいけない時代は既に到来しています。

鈍感力が無ければ、大企業の役員は勤まらないかもしれませんが、鈍感過ぎるのも問題だと思います。襲撃リスクを説いて、気持ちの引き締めを図っていくのも一つだと思います。

投稿: 傍観者 | 2017年5月20日 (土) 21時31分

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