産地偽装米騒動-最終報告書で企業の信用は回復されるのか
2月の週刊ダイヤモンド誌での報道以来、ずっと注目してきた京都の卸米業者による産地偽装米販売騒動ですが、本日(4月15日)、JA京都中央会さんの特設HPにて最終報告書が公表され、ひとつの区切りがついた模様です。もちろん、ダイヤモンド社を被告とする民事訴訟は始まったばかりなので、当事者の方々は「これから」ということだと思いますが、これまでの経緯がこの最終報告書を読むと理解でき、企業コンプライナンス支援に関わる専門家にとってはたいへん参考になります。
私もこれまでのエントリーで繰り返し疑問を呈しておりましたが、当該米卸業者が信頼を回復するための分水嶺ともいうべき「農水省による行政調査」は、かなり問題点が多かったようで、いまだ結論が出ておらず、JA京都中央会側において農水省に質問状を提出しているところだそうです。どのような法的根拠によって農水省の行政調査が進められたのかは明らかではありませんが、行政調査に対する企業側の初動対応は極めて重要であることがわかります。
また、この行政調査が継続中であるために、JA京都中央会側による(権威ある鑑定業者への)鑑定依頼が一時的に拒否されていたことも報告書によって判明します(いや、これは厳しい・・・。これでは仮に風評被害だった場合に、事業者は自己防衛すらできない、ということでしょうか。。。)さらに、産地偽装報道の根拠とされた鑑定書を作成した事業者へ、JA京都側から依頼した再鑑定の結果についても、この最終報告書では明らかになっておりません(鑑定結果は出ない、ということなのでしょうか)。
本件騒動において私の一番の関心は「どこまで自力救済をやればステイクホルダーの皆様が信頼・安心してくれるのか」といったところですが、調査報告書を読んでもそのあたりは残念ながら明確にはなりません。依然として近畿の100店舗以上の米販売店が、この米卸業者との取引停止を継続している、ということなのでしょうか。売り上げは5割も落ち込み、従業員の暮らしにも影響が出ているということのようです。ちなみに、この米卸業者の社名をグーグル検索しますと、検索バーに「偽装」と出てきます(ひょっとしたら、その責任の一端はこのブログにあるかもしれませんが・・・)。
この(親会社による)最終報告書の公表ということだけでは、未だ信用が完全に回復されたとまではいえないのかもしれません。最終的には裁判の結果を待たねば誤報だったのかどうかは語れませんが、いずれにしても、大手マスコミに企業不祥事を報じられた企業にとって、いったん毀損された信用は容易には回復できない、ということが一連の経過から明確になりました。
私自身、企業側の支援だけでなく、ときどき内部告発者を支援することもありますが、調査不足のまま誤った情報をマスコミに提供してしまい、企業の信用が毀損された場合のことを危惧します。だからこそ社内情報などをもとに、十分なチェックが求められるところですし、真実相当性の判断についても法律的観点からチェックすることが必要だと肝に銘じています。しかし、今回の産地偽装米騒動の展開をみるに、調査活動の秘密は徹底しなければならないことをあたらめて痛感いたしました。それにしても、「安心」つまり米卸業者の販売再開のためのお墨付きは、やはり農水省による調査結果の発表しかありえないと思うのです。どうすれば行政は調査結果の公表に踏み切るのでしょうか。企業のコンプライアンス経営にとってたいへん大きなポイントです。
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