産地偽装米騒動-いよいよプレジデント社が動き出した!
先週4月26日にこちらのエントリー「産地偽装米騒動-マスコミはなぜ消費者の食の安心に無関心なのか?」におきまして、以下のとおりマスコミへの期待を書かせていただきました。
この状況を受けて、せめてダイヤモンド誌と同じくらい信用性の高い記事を書かれているマスコミの方々が、「ファクト」(事実経過)だけでも報じるべきではないでしょうか?これは、米卸事業者の信用を回復するために、というわけではなく、消費者に及んでいる「食の安心」への脅威を少しでもなくすためです
4月30日、プレジデント・オンラインにて「ダイヤモンド誌『面白いネタ至上主義』に重大疑惑」と題する特集記事が組まれまして、この産地偽装米騒動に関する一連の経緯について、まさに「ファクト」が掲載されています(私自身が知らなかった事実も、この記事で初めて知りました)。
上記プレジデント・オンラインが問題視しているダイヤモンド誌の4月27日掲載座談会記事も拝読しました。私個人の考えとしては、けっして「面白いネタ至上主義」が悪いとは思いません。米卸事業者、JA京都中央会側の方々には叱られるかもしれませんが、メディアが国民の知る権利に呼応するものである以上、面白いネタ至上主義によって、企業不祥事が取り上げられ、その結果として法人がターゲットとされることもありうると思います。
ただ、米の産地偽装は消費者の食の安全・安心と密接にかかわります。信用性の高いメディアが面白ネタで報道するにしては、重すぎる。信用性の高いメディアによる報道で「南魚沼産として販売されているお米には、実は中国産米が混じって流通している」「でも、販売した業者は農水省から何のお咎めもない」ということになれば、お米って産地を偽装するのが当たり前なの?と世間の不安を誘引することになります。私は面白ネタでも、真実性に疑惑が生じた場合には、すぐにでも消費者の「食の安心」を取り除くためのメディアの動きが必要だと思っていました。
そこに、速やかにダイヤモンド社と同様、信用性の高い記事を書かれるプレジデント社によって検証記事が掲載されました。本件産地偽装米事件の背景事情をみるに、このような検証記事が出された真の思惑がどこにあるのか、私は存じ上げません。ただ、今目の前にある消費者の不安を除去するために、「食の安全」を裁判で争うのではなく、「食の安心」をメディアが伝えることで、最終的には安全性を消費者の自己判断にゆだねる(ひいては多様化するメディアの質を消費者に知らせる)機会を付与すべきと考えます。そのような意味において、このたびのプレジデント社による検証記事を高く評価いたします。
ダイヤモンド社による取材が開始されたことで、農水省はいち早く調査に動きました。しかし、2カ月以上が経過しても、何の回答も出てきません。このまま農水省の沈黙が続きますと、ターゲットとされた米卸事業者の風評被害を飛び越えて、ダイヤモンド社の記事が真実であるとの認識を前提として「産地偽装なんて、どこでもやっているのでは?」「国産米には普通に外国産米が混じっているのでは?」といった風評(世間の認識)が出始めて当然です。築地移転問題に関連して議論されているところですが(たとえば雑誌WEDGE5月号「築地移転問題にみる日本の病巣」)、果たしてコンプライアンスで守るべきは「食の安全」なのか「食の安心」なのか、産地偽装米騒動でも議論が求められています。
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