« 実質株主に総会出席の機会を付与する上場会社は増えるか? | トップページ | 「見えざる改革」-フィデューシャリー・デューティーは資産運用を変えるか »

2017年5月25日 (木)

上場会社は監査法人の「監査の品質」を見極めよ

本日のタイトルは私の意見ではなく、旬刊商事法務最新号(2133号)のコラム(スクランブル)「企業からみた監査法人ガバナンス・コード」での論者のご主張です。監査法人版ガバナンス・コードが策定され、すでに4大監査法人および準大手の8つの監査法人がコードを実施することを表明しているそうです。各監査法人のWEBサイトでは、いわゆる透明性報告書も開示されていて、「高品質の監査」「深度ある監査」が謳われているとのこと。

このような状況において、上場企業側がぜひとも検討しておきたい点として、①監査法人の選任・評価への取り組み強化(「透明性報告書は監査法人の評価・選別のための新たな判断材料なので活用されたい)、②監査法人の「監査の品質」を見極める努力を怠らないことだ、と上記コラム論者の方が指摘しておられます。監査品質の向上のために努力する監査法人を前に、企業としての対応(心がまえ?)としてはまことに正論かと思います。

ただ、これは私の意見ですが、「監査の品質」を見極める目的はどこにあるのか?ということも議論すべきです。最高品質の監査法人さんに会計監査人をお願いする、ということが目的なのでしょうか、それともとんでもない欠陥品質かどうかを見極めて、「少なくとも並」の監査であることを選択材料にすることが目的なのでしょうか。

もし前者とした場合、一般の上場企業が監査法人の品質を見極めるだけのスキルを持っているのでしょうか?長年お世話になっている監査法人がありながら、どうやって比較対照のうえで別の監査法人さんと相対順位をつけることができるのでしょうか?また、一般常識で考えれば、品質の高い監査を行う監査法人さんであればあるほど報酬は高くなると思うのですが、厳しい意見を持ち、かつ高額報酬であっても監査の品質の高さを求める動機を上場会社は持ち合わせているのでしょうか?

また仮に後者とした場合、監査の品質を理解できる能力については前者と同じ問題がありますが、そもそも「とんでもない品質の欠陥」が問題となるのであれば、それは会社法340条(会計監査人の解任事由)の問題とされるべき客観的な事由ではないか(わざわざガバナンス・コードを持ち出すまでもないのでは?)、とも考えられます。「少なくとも並」の監査の品質を評価する、というのも、せっかく監査法人版ガバナンス・コードに取組む監査法人を前にして、なんだかあまり前向きな目的とはいえませんね。

結局のところ、上場会社が「高品質の監査法人を評価して、選定する」ためのインセンティブがなければなにも変わらないように思います。たとえば「高品質な監査」とは、相対評価であって、企業との相性で評価されるのではないでしょうか?日立と向き合う●●監査法人は高品質だけれども、東芝と向き合ったときにはそうではない、といったことです。会社側の協力なしに高品質の監査は生まれない・・・という考え方を市場関係者が共有することが大切ではないかと思います。

「いやいや、ガバナンス・コードは監査法人としての客観的なレベルの向上を目指すものであって、選別する企業にとっては絶対評価が必要なのだ」といった考えが正しいのであれば、たとえばこのたびのPwCさんのような意見や結論を表明しない監査法人の姿勢、昨年の某監査法人さんのような金商法193条の3の通知を積極的に発信する姿勢、会計不正は認められないが、内部統制の不備を指摘して社会に警告を発する姿勢、厳しい意見は持ちつつも、できるだけ内内に処理して適正意見を出す姿勢等をみて、上場企業はどう評価するのか、あらかじめ社会的な評価基準を最低限度そろえる(すり合わせをしておく)必要があります。また●●監査法人さんが会計監査人なんだから、この会社の株価は高いとか、借入金利の優遇を得られるとか、一般入札の条件をクリアできるといったことが一般的に認識されることも必要かと。東洋経済さんあたりで毎年「品質の高い監査法人ランキング」を公表することも検討すべきではないでしょうか。

わざわざ高い報酬を払い、厳しい監査意見を承知のうえで、それでも優良企業が優良監査法人を評価し選択する、ということは、これくらい市場の変革がなければ実現困難ではないかと思う次第です。

5月 25, 2017 監査法人改革の論点整理 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/65323545

この記事へのトラックバック一覧です: 上場会社は監査法人の「監査の品質」を見極めよ:

コメント

今回のエントリーは私のようなものには、難解だったのですが、「会計不正は認められないが、内部統制の不備を指摘して社会に警告を発する姿勢」を持つような会計法人は相対的に「厳しい意見を持つ」監査法人であると思えます。
ただし上場企業が、そのような「厳しい人」に、あえて高額報酬を払うのか?と考えた場合、監査する側が「自分を選択してもらいたい」という気持ちから何らかの手心を加えることもあるやもしれません。
結局、企業側の覚悟なしに、すなわち「会社側の協力なしに高品質の監査は生まれない」ということになります。
手順としては、
・まず「高品質の監査とは何ぞや?」ということに社会的な評価基準をすり合わせておく。
・監査結果の開示内容等を材料にして、東洋経済さんやダイヤモンドさんやエコノミストさんあたりが毎年「品質の高い監査法人ランキング」を公表する。
・「品質の高い監査法人ランキング」に載るような厳しい監査意見を承知の上で、わざわざ高い報酬を払って優良監査法人を評価し選択する企業こそ「優良企業」とする。

実際には「品質の高い監査法人ランキング」を作成する経済誌・メディアの【信頼性評価】まで考慮すると、ぐるぐる目が回ってしまいますが、ここまで考えて、ようやく市場関係者が相互に監査(監視?)することが可能になるようにも思えます。
「高品質の好循環」を回すには、さらに目が回るような忙しさがあるかもしれません。

次週は、天満橋で「内部通報制度に関する民間事業者向けガイドラインの説明会」で山口先生の御講演を拝聴いたします。宜しくお願いいたします。

投稿: 試行錯誤者 | 2017年5月26日 (金) 17時03分

コメントを書く