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2017年6月30日 (金)

創業家と対峙して株主総会で解任を阻止した「モノ言う監査役」

コーポレートガバナンス改革も4年目となり、今年の株主総会はいろいろと話題が多かったようですね。機関投資家の議決権個別開示の結果を見なければ総括はできませんが、とりあえず6月総会は本日でほぼ終了です。なかでも出光興産、大戸屋HD、タカタ、ロッテ、ユニバーサルエンターテイメント、大王製紙(サプライズ?)をはじめ、多くの上場企業で創業家株主の議決権行使が注目されました。ただ、そんな中で「創業家の乱」に「モノ言う監査役」が対決した証券コード5277さんの事例は、監査役制度に関心のある方には注目していただきたいところです。

5277さんの創業家株主の方(元取締役で現在は顧問に就任)が、なんと他の取締役ではなく監査役3名の解任に関する株主提案をしておられました(5月23日付け会社側リリースはこちらです)。この会社側リリースの添付書類には、なぜ株主が監査役を解任する提案をしたのか、その理由が記載されています(6月23日開催の定時株主総会の招集通知のほうにも記載されています)また、ヤフー掲示板情報によりますと、この株主の方は一般株主宛てに解任議案への賛同を勧誘する(規則との関係がありますので『推奨』でしょうか)書面も交付されていたようです。そして株主総会における議案賛否の結果については、6月28日付け臨時報告書(EDNETで閲覧可能)に公表されました。

株主提案の内容を精査しますと、取締役に問題行為があるにもかかわらず、これを阻止しないことや独立性に問題があり、監査役としての職務を執行することが期待できない、といったことが解任理由とされています。たとえば、同社取締役が、会社の財産状況を調査しようとしたところ、他の取締役から書類開示を拒否され、これを監査役に報告したところ、監査役は何もせずに放置したこと、監査役であるにも関わらず会社の業務執行を行ったこと等、かなり具体的に理由が述べられています。

そして、6月28日付けの同社臨時報告書によりますと、(会社側は反対意見を表明しているにもかかわらず)監査役3名解任議案については、賛成票が(3名とも)約48%にも上りました。監査役解任は特別決議(67%以上の賛成票が必要)ですから、ギリギリ・・・というわけではありませんが、かなり一般株主の「解任すべき」との賛成票が集まった可能性があります(分析してみる価値はありそうです-このあたりは同社監査役の皆様の名誉・信用にも関わりますので、株主構成等、詳細にご存じの方がいらっしゃったらご教示ください)。

現経営陣と創業家が対立している可能性が高いので、会社側は創業家株主の提案に反対意見を表明しているわけですが、反対の理由のほかに、監査役それぞれが「私への解任が正当でない理由」を詳細に述べておられるところが特徴的です。結果的にはこの「モノ言う監査役」の姿勢によって、創業家による解任提案を阻止したといえます。大株主の方も、かなり会社法に詳しい法律家の支援を受けておられるようですが、さて、法律に詳しい方も含めて、株主提案、そして監査役側の反対意見、いずれに賛同すべきか(ぜひとも検討してみてはいかがでしょうか)。けっこう「ドキ!」っとされる方もいらっしゃるかもしれませんね。たしかに解任理由については、かなり企業法務(裁判例を含めて)に精通していないと理解しにくい内容も含まれていますが、株主の方々がどう受けとめるか・・・、とても悩ましいところです。

なお、取締役選任議案への反対比率は10%未満です。きちんと分析しなければわかりませんが、創業家株主の保有比率は10%前後だとしますと、かなりの一般株主が監査役解任を支持した可能性があります。または、会社のガバナンスに対する問題を大株主さんが指摘したのであれば、ひょっとすると、一般株主だけでなく、機関投資家も解任議案に賛成したのかもしれません。このあたりこそ、議決権行使の個別開示が機能することになるのではないかと。

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