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2017年6月21日 (水)

株主総会における回答とインサイダー取引規制

ここのところ株主総会関連の話題ばかりで恐縮です。経営再建中の某電機メーカーさんの定時株主総会(及び普通株主による種類株主総会)が本日(6月20日)に開催されました。その株主総会の実況中継(日経ビジネスさん)の内容をみますと、議長さんが「(現在は東証2部だが)東証1部への登録換えの申請を検討している」ではなく「6月29日か30日に申請します」とおっしゃったそうです。これを受けて当該会社の株価が高騰し、前日比7%の値上がり。

すでに掲示板等では話題になっていますが、これはインサイダー規制上問題はないのでしょうか(以下は私個人の判断・参考意見にすぎませんので、株式取引にあたっては皆様の懇意にされている法律家のご意見をお聴きくださるようお願いいたします)。

社長さんの株主総会における説明(質問への回答)は、インサイダー規制における「公表」には該当しないので、もし「東証1部への登録換え申請の決定」が「重要事実」だとすれば、当日、これを会場で聞いた株主の皆様は「情報受領者」に該当し、株式の売買ができない(禁止される)状況に置かれてしまいます。ちなみに登録換えは取締役会決定事項だとしても、社長さんの判断は単なる「つぶやき」ではなく、「決定(に準じるもの)」とみなされるでしょう。

登録換え申請に関する会社の意思決定は、金商法で具体的に規定されている「重要事実」(決定事実、発生事実、業績予想修正事実)には該当しません。「決定事実」の類型中に「上場廃止申請」が含まれていますので、その反対解釈としてそれ以外の上場申請については重要事実には該当しない、といった考え方もあるかもしれません。しかし、過去の最高裁判決は、重要事実に列記されていないとしても、安易な反対解釈は許されず、これに準じるような投資家の投資判断に重要な影響を及ぼし得る事実についても「重要事実」に該当しうるとの立場をとっているようです。したがって包括禁止条項(バスケット条項)の適用ということが検討されるところです。

結局は個別事案ごとに判断されると思いますが、株主総会に実際に出席していた株主さんと、総会終了後のマスコミ報道で「東証1部への登録換え申請の事実」を知った株主さんとで、どれほどの不公平感があるでしょうか。そこに看過できないほどの不公平感があるとすれば、インサイダー規制が問題となる場面であったといえるかもしれません。いずれにしましても、昔から株主総会での会社側説明の場面では、インサイダー情報を公表することのないよう細心の注意が必要と言われています。総会直後に株価が乱高下するという事態になりますと、株主の皆様にご迷惑をおかけすることになりますので、総会を運営される側においてはあらためてご留意ください。

もし、株主総会前に、説明が困難な重要事実があるならば、速やかに適時開示するほうが妥当かもしれません。本日の東京都知事の緊急会見を受けて、築地魚市場さん(東証2部)は、さっそく今後の経営方針をリリースされていますね(野次馬的な感想ですが、東京都知事の豊洲・築地移転問題の基本方針は、社外取締役的に判断すれば、うーーーん・・・・・笑)

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