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2017年6月13日 (火)

富士ゼロックスはいつか東芝みたいになって、みんな辞職ね(笑)

(6月13日午前 追記)

富士フイルムHDさんは、本日(6月12日)、子会社である富士ゼロックス社(以下「ゼロックス社」といいます)の海外販売会社等で発生した不適切会計事件に関する第三者委員会報告書を公表しました。公表を急いだからでしょうか、伏字が不十分で、会社関係者の個人名がそのまま残っている箇所もありますが、あまり気にせず全文を拝読させていただきました(追記:「差し替え版」に変更されたようです)。フォレンジックによって明らかにされた事実には、海外M&Aに勤しむ日本企業にとって教訓となることがとても多く含まれており、たいへん感銘を受けました。

ゼロックス社副社長さんの暗躍(?)が衝撃的・・・という意味では、5年ほど前の沖電気さんの海外子会社不正を想起させます。コンプライアンス経営にご関心のある方は、ぜひとも「要約版」ではなく、報告書全文をお読みになることをお勧めいたします。ちなみに、タイトルは私の感想ではなく、本報告書に出てくるゼロックス社(アジア統括会社)の内部監査部員の間で交わされたチャットの内容(和訳)です(全文版112頁 なお、和訳文では「(笑)」となっていますが、私は「(泣)」が正しい和訳ではないかとひそかに思っております)。海外社員が、日本本社のことをこのように嘆いていることが本事件のすべてを物語っています。しかし「監査法人からお墨付きもらってるんだから、何か文句あるのか!?」というフレーズは、経営者がからむ会計不正事件では毎回登場しますね(笑)。

当ブログで本報告書のすべてをご紹介することは到底不可能なので、私の視点で少しだけコメントさせていただきます。これまでの報道では、2015年7月に「内部通報」によってゼロックス社が海外販社の会計不正を知ることになったと報じられていましたが、これは「内部通報」ではなく「内部告発」でした。正確には同年5月に、まずオーストラリア販社の会計不正に関する匿名通報がゼロックス社株の25%を保有する英国企業に届き、その後、7月にニュージーランド販社の不正について、ゼロックス社の副社長個人と、先の英国企業に通報が届いたそうです(後者は仮名を用いた匿名通報)。副社長は、英国企業からの要請があったために「しぶしぶ」これらの通報内容を調査することになりましたが、調査を担当したアジア統括会社の内部監査部が「通報内容は真実」と確信するに至りました(そこでタイトルのような嘆きが監査部員から出てきます)。

しかし、ゼロックス社副社長、専務らが「通報内容は事実ではなかった」として隠ぺいを図るため、今度はニュージーランドの新聞社に告発がなされます(ここは報告書では明確にされていませんが、この新聞社の報道の中で「元社員の証言によると」と出てきますので、おそらく同じ方による内部告発があったものと推測されます)。私は以前のエントリーで「内部通報がもみ消されたので監査法人に告発がされたのでは?」と書きましたが、現地新聞社のスクープに監査法人が反応して調査が開始された、というのが事実のようです。いずれにしても、このたびの富士フイルムHDさんの会計不正事件も、やはり内部通報、内部告発が端緒だったわけでして、第三者委員会も、原因究明、再発防止策の中で、(グループ内部統制の機能不全とともに)内部通報制度の不備・改善についても詳細に検証しています。

このたびの会計不正を受けた社内人事で、会長、副社長、専務さん達は「退任」されますが、社長さんはそのまま残ることになりました。ではなぜ社長さんは更迭されずに残るのか?その理由は本報告書(全文版)をお読みになると明らかになります(たとえば全文版135~136頁)。監査の重要性を説き、早期に不正の根を摘もうとされた社長さんと、「監査など業務執行のジャマ者」としかみておられなかった副社長さんとの対立がとても好対照です。不正に迫ろうとして、副社長さんにいじめられてションボリしている経営監査部員(社長直轄の3名)に対して、社長さんの激励の言葉はなかなか感動モノです(こんな社長さんが日本にたくさんいればいいなぁと。。。)。おふたりとも代表権を持ち、ゼロックス社プロパーである点では同じですが、副社長さんのほうが8年ほど社長さんよりも年次が上、という点が、この対立に大きな影響を及ぼしているのではないでしょうか。

ところでニュージーランド捜査当局も立件に向けて動いていたのですから(最終的にはクロとはならずに終了しますが)、富士フイルムHD、富士ゼロックス社の監査役の方々の活躍を期待しながら読み進めていましたが、残念ながら監査役さんの活躍はどこにも出てきませんでした。報告書は「監査役機能の不全」とバッサリ断言しています。ゼロックス社の監査役の方々は、前任監査法人からも、かなり情報を入手していたのではないかと思われますが、そのあたり、なんとか行動できなかったのかと、やや疑問が残ります。また、ゼロックス社のアジア統括会社の内部監査部門が2009年に社内ルール違反の契約形態の是正を要請したにもかかわらず、営業部門からは無視されてしまいます。是正ができていれば今回のような不正は未然に防止できたわけですから、やはり内部監査の重要性(海外ではリスペクトされているようですが)を日本企業がどれだけ理解できるか、という点も大きな教訓です。

親会社である富士フイルムさんは、今後「ゼロックス社を徹底教育する」と謝罪会見で述べておられますが、本当にできるのでしょうか?富士フイルムさんと言えば、新規事業によって脱皮を図った優良企業というイメージが強いのですが、最近のグループにおける連結売上比率でいえば新規事業(医療、素材、化粧品)は38%、コピー機の販売・サプライ用品が48%です。つまりフイルムさんが研究開発や海外M&Aに打って出るキャッシュリッチな状況は、ゼロックス社が地味な営業活動によってHDの屋台骨を支えているからと言えるのではないでしょうか。富士フイルム社監査部からの要請に対して、ゼロックス社副社長さんが「ゼロックスは独立した会社だ!俺がそう言っているとHDに伝えろ!」と声を荒げるシーンが出てきますが、それがゼロックス社5万人の社員の方々のホンネかもしれません。

また、会計不正を発生させた海外販社は、いずれも元々ゼロックス社の25%(かつては50%)を保有する英国企業の傘下にあった会社です。ゼロックス社を教育したからといって、海外子会社まで教育が浸透するのかどうかはまた別のように思われます。今までも古森さんが取締役としてゼロックス社の役員会に出ておられたわけですが、会長に就任されることで何が変わるのか・・・。いずれにしましても、海外を含めた企業集団内部統制の構築は、日本企業にとってはたいへんな苦行(苦業?)であることは間違いありません。

 

6月 13, 2017 独立第三者委員会 |

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コメント

富士ゼロックスの隠蔽体質なんでしょうか。
HPを見ても調査報告書が要約版すら見つけられません…

投稿: Satozoh | 2017年6月13日 (火) 08時41分

富士フイルム・ホールディングスさんのHPで閲覧可能です。なお、いま気づきましたが「差し替え版」に変更されていますね(おそらく、本文で述べたような消し漏れがあったためと思われます)。

投稿: toshi | 2017年6月13日 (火) 10時42分

残念ながら、重大な会計不正は内部告発が無いと摘発・是正されないことが立証されつつあるようですね。監査役費用と会計監査費用を削減して「告発報酬」「通報報酬」に振り向ける事が、内部統制制度を機能させる手立てとして発展するかもしれません??。(困った事ですが、本年度の告発ランキング一位はXX事件のXYさんです・・とか、年末に報道されるのかなと)
ふと40年前の米国研修の事を思い出しました。米国では脱税告発に税額の何%が通報者に支払われていて、これを、副業にしているのは郵便配達人
が多いとか・・・聞いた話ですので、真偽は不明。

投稿: 一老 | 2017年6月13日 (火) 13時26分

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