相談役・顧問制度の廃止が経営の停滞を助長する
毎月第一土曜日に20数名の会員が集まり、白熱した議論が展開されるコーポレートガバナンス・ネットワークの関西勉強会ですが、今回も、大手製薬会社の元役員の方によるご発表は、会員からの活発な意見がたくさん飛び出す見事なものでした(大手食品メーカーの元社長さんのガバナンス改革に関するホンネの厳しいご意見なども拝聴できました)。ちなみに今回のテーマは「企業価値創造とコーポレートガバナンス」。
なかでも発表者の「相談役・顧問制度を廃止し、その代わり役員経験者を社外取締役になってもらうことは、有効活用につながり、総論としては賛成だが、経営の停滞を招くおそれがあり注意すべきことがある」との意見に関心が湧きました。理由のひとつめは、相談役・顧問制度を廃止することで、社長として居座る人が出てくる、つまり社長在任期間が長くなりはしないか、結果として経営が停滞しないか、という点です。社外取締役が本当に社長退任を要求できるほどの役割を果たせるのであればよいのかもしれませんが、相談役・顧問による目付がないと社長は「後継者がいない」といって居座ってしまうおそれがあるそうです。
そしてもうひとつが、「社外取締役に経営経験者が増えれば増えるほど、持ち合い取締役が増える」ということで、こちらもやはり経営の監督機能が薄まり、現経営陣に対する安定をもたらすというものです。以前、当ブログでも問題視しましたが、日本取締役会協会が公表しているガバナンス指針からすれば、「持合い取締役(相互選任取締役)」は独立取締役ではない、とされています。しかし、実際の株主総会での議決権行使結果を観察してみますと、持ち合い取締役さんの選任については機関投資家の方からも全く反対票が投じられることはないようです(招集通知を見れば、持ち合いかどうかはわかるのですが・・・)。社外取締役が増えたとしても、相互に就任しあっている会社同士で現経営陣が安定基盤を持つわけですから、これもほかの独立社外取締役さんが異議を留めなければ今後は次第に増加していくことになりそうですね。
社外取締役制度にたいへん厳しい意見が毎回出されるのですが、そんな厳しい意見をお持ちの方々も、「監査役制度をもっと活用したらいい、監査役こそ、社長がリスペクトする気概を持てば機関投資家が期待する役割を発揮できるのに」という意見でまとまり、個人的には元気が出ました。グループ会社を歩き回って(往査して)、非業務執行者として社長が知らない事実をたくさん知っている監査役が存在することは脅威だそうです。元CFOといった肩書で監査役に就任している方、監査役室で部下をたくさん持てる方であれば別ですが、社内の人事政策で監査役に就任された方が、社長にモノを言えるようになるためには、やはり「歩き回る監査役」としての評判が必要かもしれません。
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コメント
考えさせられました。顧問や相談役の一件は東芝問題で各所が過剰反応しているきらいもありますね。各社の事業報告をみていると、日立キャピタルなど存否を任意記載する会社も出て来たようです。開示はやがて必要になっていくのかもしれませんが、一概に無くせば良いというものでも無いだろうと思います。会社ごとの機能や必要性を再定義して、現状を見直す時期なのかもしれません。
投稿: こけし | 2017年6月 7日 (水) 19時35分