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2017年6月 8日 (木)

これぞ上場企業経営者のホンネ?-関経連「未来投資会議」への意見書

旬刊商事法務の最新号(2135号)に、いよいよエフオーアイ事件に関する判例評釈論文が掲載されました。千葉大学の堀田准教授による「主幹事証券会社の引受審査義務」と題する巻頭論文です。事件内容も詳しく紹介されているようなので、じっくりと拝読させていただきます。

さて、一昨日に引き続き、コーポレートガバナンス改革に関連するお話です。こけしさんがコメント欄でお書きになっておられるように、いよいよ相談役・顧問制度の存否についてきちんと開示する上場会社も登場してきたようですね。ガバナンス改革のさらなる深化、企業と投資家の建設的な対話は、政府の未来投資会議でも推進されていますし、経済団体もこれを後押しするのが当然のような雰囲気が漂っております。コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード改訂版の実施率はますます高まりそうです。

ただ、5月24日に公表された関西経済連合会「未来投資会議における企業関連制度改革に関する意見」は、経営者の皆様のホンネが如実に反映されているものとして、個人的にはとても共感するところです。よくここまで意見表明できたものだなぁと。。。

⑴株主総会に対する機関投資家の議決権行使結果の一律開示については、開示されることによって機関投資家と企業との建設的な対話が阻害されるおそれがあるので慎重に検討されるべきである

世間の関心が、議決権行使結果の個別開示だけに集まっているが、それは機関投資家と企業との信頼関係の形成にはマイナスである、と主張しています。機関投資家が実質株主との「利益相反排除」「フィデューシャリー・デューティー」を意識すればするほと、「建設的な対話」よりも「行使方針に準拠した議決権行使」や「議決権行使助言会社の推奨を重視した議決権行使」に重きを置くのが現実です。(時間的余裕のない機関投資家にとっては)むしろ当然の流れかと思います。関経連としては、ここではあえて政府の方針に慎重論を唱えています。

⑵すべての企業に一律で適用するコーポレートガバナンスには反対である。

日本の上場会社は、これまで投資家や株主以外のステークホルダーの利益も配慮しながら社会に貢献してきた。企業によって事情は異なるのであるから、中長期的な企業価値向上のためには、政府は一律の適用を求めべきではない、とのこと。ここでは後継者選任制度、取締役の機能強化、インセンティブ報酬制度、相談役・顧問制度の見直しなどが挙げられています。要は、ガバナンス・コードの存在を、自社の長所・短所を見直すきっかけとして活用することが大切であり、自社に取り入れることで自社の長所を見失うようであれば、堂々と「取り入れない」ことの理由を述べるべきと思います。ガバナンスで大切なことは短所を補強することよりも、今自社に存在する長所を伸ばすことです(意外と、この「長所」を確認しておられない企業が多いと感じています)。

⑶中長期保有株主との建設的な対話のために、四半期開示制度の廃止、非財務情報を中心とした中長期的な企業価値向上に関する情報開示を促進し、中長期保有株主の優遇策を検討せよ。

中期経営計画で株主の皆様にお約束していることの進捗状況は、短期の数字では把握できず、研究開発、人材投資、設備投資への取組状況をわかりやすく説明することが大切とされています(内部統制の重要性は、この現場の進捗状況を、どれほど正確にトップが把握できるか、という点だと思います)。種類株式の発行も、長期株主優遇のために活用されるべきとのこと。

経団連さんに所属している企業のトップの方々も、ホンネでは同様の意識を持たれているのではないでしょうか。「おひざ元」ではない関西の経済団体だからこそ、ホンネでモノが言えるのかもしれません。もちろん、「日本の株式市場を関係者全員で盛り上げることが、市場に資金をもたらし、その結果として個々の企業にも還元される、だからこそ、自社の利益を越えて、コードはできるだけ実施すべきである」といった意見も承知しています。ただ、そん考え方では、どうしてもガバナンス改革を形式だけに終わらせてしまって、実質的な深化は図られないように思います。この意見書にもあるように、「全社横並び」ではなく「個々の会社の創意工夫」を関係者一同が盛り上げることが必要ではないでしょうか。

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