産地米偽装問題-週刊ダイヤモンドに「大逆転」はあるのか?
京都の米卸業者が中国産の米を「南魚沼産」として販売しているとして、週刊ダイヤモンド誌が実名報道を行った件で、ついに農水省の調査結果が公表されました(JA京都中央会のHPに掲載されています)。中国産米が混入した形跡はないとのことで、ようやく米卸業者としては風評被害から脱することができそうです(おそらく従前の取引先との取引も再開することになると思います)。
ダイヤモンド誌がスクープを報じたときは、あれだけ「とんでもない業者がいたぞ!」と(瞬間的に)話題になりましたが、こうやって農水省の調査結果が出たにもかかわらず、どこも米卸業者の名誉を回復していただけるような報道をしてくれるマスコミが出てこないのはなんとも寂しいところです。結局のところ、社会不安をあおるほどの記事にはなりえず、小さな米卸会社の信用毀損をもたらすにとどまった、ということかと。企業不祥事報道のおそろしい現実を垣間見ました。
民事裁判が係属していますので、ダイヤモンド誌側は「記事内容には自信がある。真実だと確信している」との主張を繰り返されるのでしょうが、自ら依頼した鑑定研究所が「以前の鑑定結果とは違った結果が出た」との再鑑定結果を出し、さらに農水省の調査結果まで出ましたので、かなり苦しい立場に立たされたものと思います。私は公平な立場でこの問題を取り扱っていますので、これ以上、ダイヤモンド誌を批判するつもりはありません。ただ、米卸業者さんの「泣き寝入り」状況をみるにつけ、どこかで不祥事報道の出し方を間違ってしまったのではないか、裁判で決着をつけるだけの問題では済まないのではないだろうか、と疑問を抱かざるをえません。
そして、私がこのブログで言い続けてきた「不祥事を取り扱った雑誌スクープは、他紙(他誌)の後追い記事が掲載されないかぎりは大きな不祥事にはなりえない」という事実については、さらに確信するものになりました。ときどき内部告発を本業で取り扱う者として、事実を基礎付ける確固たる証拠がなければ多くのマスコミに取り上げてもらうことはできない、かえって企業の信用を毀損するだけでなく、いたずらに社会不安をあおることになってしまいかねない、と自戒するところです。また、マスコミのスクープネタへの対応としては、今回のJA京都中央会側の冷静なマネジメントがとても参考になります。
公益通報者保護法の改正審議がこれから続きますが、本件の一連の騒動は、法改正推進派にとっては有利にも不利にも働きそうな立法事実が詰まっています。
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