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2017年7月31日 (月)

なぜか第三者委員会報告書で触れられない監査人の不適切な行動

諸事情ございまして、先週から平成27年~28年にかけて公表された(企業不祥事対応としての)第三者委員会報告書をいくつも精読しております。以前にも書きましたが、社外役員が増加していることや東証の不祥事対応のプリンシプルが公表されたこともあり、第三者委員会報告書よりも社内調査委員会報告書のほうが公表ベースでは数が増えてきていることを改めて認識しています。また、会計監査人からの要請で、社内調査委員会による調査を、途中から第三者委員会による調査に変更する事例も増えているようです。

ところで、「これはかなり秀逸な第三者委員会報告書かも」と思うものを読んでおりましても、どうしても不満に感じるのが「監査役、会計監査人が不祥事発覚の前後において、どの程度のリスクを感じていたのか、またどんな行動をとっていたのか」という点がまったく明らかにされていないという点です。先日もフタバ産業さんの「モノ言う監査役」の事例をご紹介しましたが、その内容(社長とのバトルの内容)が判明したのは、会社が元代表取締役さんを訴えた裁判の判決が公表されたからです。

フタバ産業さんの会計不正事案では、いくつかの第三者委員会報告書が公表されていましたが、当時の報告書を読んでも、そのあたりは記述がありませんでした。しかし、そのような「モノ言う監査役」が存在したからこそ、事件後6年半もかけて会社を代表して元取締役の方々の責任を追及する裁判を遂行できたのです。企業不祥事を発生させた企業が、将来的に再発防止策を履行し、自浄能力ある企業として立ち直るためにはどのような監査風土があるのか、とても重要です。監査人がどのように振る舞っていたか、という点は投資家にとっても大切な情報だと思うのです。

第三者委員に就任される有識者の方々も、監査役や会計監査人、内部監査人などの「有事におけるあるべき行動規範」のようなものがあまり自信をもって述べることができないのかもしれません。かつては、「そもそも監査人など、社長にモノが言えないのがあたりまえなので、そんなところに力点を置いても報告書に説得力がない」といった意見もありました。しかし、これだけガバナンスが重要と言われ、そこそこ会計監査人や監査役の役割も世間的に認知されてきたのですから、「このような状況において、監査役、会計監査人としてはこのような行動をとるべきだったのに、そのような行動をとった証跡は認められない」といった評価がなされてもよいのではないかと思います。もちろん「原因分析」の中で、監査機能不全といったことが列記されていることは多いのですが、では具体的な監査役、会計監査人(およびその連携において)どのような行動がとられたのか詳細に事実を調査したものは皆無であるため、再発防止策にも納得感が出てこないのです。

東芝事件、富士フイルム事件をはじめ、多くの不祥事発覚事例では、内部通報や内部告発が発覚の端緒とされていますが、こういった事例では、事件の早期の段階で会計監査人や監査役に不正リスクの兆候が伝えられることが多いのです。では、そのリスクを把握した監査人が、どのような行動に出たのか、そこは経営陣や会計監査人の法的責任の有無を判断するにあたっても、たいへん重要なポイントだと思います。なぜ、多くの第三者委員会報告書において、そのあたりの経緯が明らかにされないのか、とても不思議に思うところです。第三者委員会の調査には、監査人らの協力が不可欠であり、誠実に協力していただいた方々の責任を追及することはたいへん難しい面もあるとは思います。ただ、当該企業に自浄能力があるのかどうか、投資家にとってはとても知りたいところである、ということは調査を担当する者としては認識しておくべきではないでしょうか。

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