世間で話題の相談役・顧問の方々がこだわるCSRとは?
今週月曜日に、こちらのエントリー「電通労基法違反事件はこのまま略式命令で終結するのか?」にて、電通さんの法人起訴事件は正式裁判で審理すべきと述べましたが、やはり東京簡裁は正式裁判を行うことを決定したそうです。ご遺族の方々にも、また電通の社員の方々にとっても、私は経営者が法廷に立たれて「電通は本気で労基法を順守する」という宣誓をされるほうが良いと考えます(傍聴席はスゴイことになりそうですが・・・)。
本日は、とても大きな会社の現役相談役(元代表取締役)の方とお話する機会がありまして、せっかくの機会なので経済団体でのお仕事や政府委員としてのお仕事など、「相談役」であることのメリット・デメリットをいろいろと聞かせていただきました。その方が社長をされた会社では、社長経験者が「相談役」、それ以外の役員だった方が「顧問」に就任されるそうですが、「顧問」については役員退任後65歳まで、と決まっているそうです。「相談役」も、社長退任後3年と内規で決まっているとのこと。
お話の中で「相談役はやっぱりCSRには特別のこだわりがありますね」とおっしゃるので、「そうか、社長経験者ともなると、ステイクホルダーと企業とのつながりには格別の配慮を考えているのだなぁ。地位が人を作る・・・ということか。世間ではいろいろと騒がれている『相談役制度』も、社会にとってはけっこう有益なのかも・・・」と思いました。しかし、話の途中から、どうもCSRの意味がちょっと違うような気がしてきました。
「山口さん、私が言ってるCSRは企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)という意味ではありませんよ。車(Car)、秘書(Secretary)、個室(Room)のことですよ。私の場合は秘書は専属ではありませんが、やっぱりこのCSRは手放せないですよねぇ。」
私 「・・・・・・・・(;^ω^)アアナルホド」
もちろん、その方は「私はホントに相談されたら乗る、というもので、自身から経営に口出しすることはありません」とおっしゃっていました。でも社長OBの方々が「普通に」CSRという言葉をお使いになっておられるご様子だったので、相談役・顧問制度というのは、企業実務に深く根付いているのだろうな・・・と想像いたしました。当ブログに本日コメントをいただいているベネシュさんがお読みになったら、また💢っとさせてしまう内容になってしまいました(^^,
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コメント
そのネタ、使わせて下さい。
投稿: KAZU | 2017年7月14日 (金) 15時07分
山口先生
その通りで、深く根付いている!すみません、やはり私は「相談役・顧問」制度に対する疑義の種をまいた本人です。2013年にガバナンス・コードを提案した後、2014年に自民党の日本経済再生本部にプレゼンした時に、そのテーマには一切触れなかった。なぜなら、あまりにも日本の経営陣にとってそれが一種の「年金」のような既得権で(まさに、年功序列型ガバナンスの主軸)、敏感なところだとよく分かっていた。また、最も重要な点ではないし。
そして自民党がガバナンス・コード方針が固まって金融庁の油布さんがその担当者になった直後https://bdti.or.jp/2016/04/02/cgcbirthnext/
で説明されているように、彼に色々説明・提案して「日本版コーポレートガバナンス・コードに含めるべき重要事項」題名のメモを渡した。(http://bit.ly/2i4lOfU をご参照ください。)それに入っていた多くの発想は後ではコードに現れた。油布さんは素晴らしい性格の持て主で、自分には役員経験がないので素直に話を聞いて下さった。メモの最後に、このように相談役・顧問について詳しい開示を提案した:
「17. 退職後の報酬:執行役員、取締役(社内・社外等を問わない。)又は監査役(社内・社外等を問わない。)を退任した者に対しては、(その実際の業務を終了した後に)原則として報酬を支払ってはならない。但し、退任以前に締結した具体的な個別契約に基づいて実際にサービスを提供した場合には、市場で独立した第三者によってサービスが提供された場合と同額の報酬額を支払うことができる。このような退職役員への報酬が支払われた場合、会計年度終了後 1 か月以内に、その会計年度中に当該退職役員へ支払った金額、当該退職役員の名前、サービスの内容及びこれまで当社の執行役員、取締役又は監査役を務めたことがない第三者の代わりに当該退職役員を選択した理由を開示しなければならない。」
つまり、開示させることによって、役に立つ顧問などがいれば、会社はそれを説明すればいい、と思った。また、「年金の一種」として思われているので、その報酬は役員報酬の一種であるので、株主の承認までいかないにしても、少なくとも開示がなければ、おかしいと思った。(役員に務めた人がもらうご褒美でしょう?では、役員報酬ではないか。)僕の経験では、どちらかと言えば一年以上務める場合は価値がないケース、もしくは悪影響を与えるケース(レガシー問題、余計な介入、役員会の「幽霊・黒幕」の存在)が多いが、いいケースが大半になるという状態を確保するのに(善管注意義務がない、株主が訴訟できない人にこのような事を簡単にできる立場を与えるなら)開示が当たり前に必要であると思った。米国だったら、どちらかと言えば「開示すべき」になる。例えば、Jack Welchの大きい顧問契約報酬はそのように(争いの後!)なった。
やはり、あまりにも「年功序列型ガバナンスの主軸」「年金の一種」のような制度だから、金融庁は最初から反感を買うのが得策ではないと決めて、コードに入れなかった。これは、予想通りだった。本来なら、日本のCGコードは日本の特有のものこそ考慮すべきだが、他方、金融庁の考え方がよく分かる。2017年になって、最近の「相談役」に対する疑義が広がっているのを見て、とても嬉しいです。これは健全な現象で、CGについての議論が深まっている証拠です。CGコードが改訂に期待しましょう。
投稿: ニコラス ベネシュ | 2017年7月14日 (金) 23時12分
相談役、コーポレートガバナンスコードに関する議論が深まってゆくのは、とても良いことだと思います。
私が「相談(通報?か)」をしている上場企業の社外取締役の方の中には、本業の組織では「相談役」を務められている方がいます。
本業では相談役として「相談に乗ってくれる」立場で、他企業では社外「取締役」としての立場であるわけです。
「公益通報者保護制度の推進・法改正」に資する活動として、消費者庁消費者制度課様からの通知により、自らの通報経験の調査に参画することになりましたが、通報当該企業の「社外取締役(前述どおり自企業では相談役の方もいます)」や事案の監督官庁の大臣にも面談要請しています。
投稿: 試行錯誤者 | 2017年7月15日 (土) 18時20分