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2017年7月25日 (火)

監査法人のローテーション制度導入のために必要な前提条件

いつも私が愛用しているRSSリーダーLive Dwango Reader(LDR)が、8月末をもって閉鎖するそうです。「この数年で利用者も大幅に減少しており、サービスとしての役割を終えたと考え、終了という判断に至りました」とのこと。たしかにブログという媒体自体、多くのSNS興隆の中で魅力が薄れてきたのは事実ですね。ひとつの転換時期かなぁと感じます。

先週木曜日(7月20日)に金融庁HPで公表された「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」を読みました。現在導入されている「パートナーローテーション制度」がうまく機能していない、企業による自主的な監査法人の交代が進まない、諸外国はすでにローテーション制度を導入している、といった内容からしますと、「強制導入は時間の問題?」とも思われますが、まだ第一次報告ということで、今後さらに導入の可否について検討を加えるそうです。

導入に向けた課題については、監査の専門職の方々が議論すべきことですが、ひとつだけ調査報告を読んで気づいたことがあります。それは、監査法人の社会的責任の明確化、品質保証、そして報酬低額化防止にとって重要なのは被監査会社の監査委員会の機能強化という点です(日本でいえば監査役制度の機能強化といえばよいのでしょうか)。監査権限を有する機関が「公益の番人的な地位」を当然に有していることが監査法人のローテーション制度の実効性確保のために不可欠では?といった感想です。2014年に出版した拙著「法の世界から見た会計監査」の中でも述べておりますが、監査法人はどこまで監査役さん(監査等委員である取締役さん)を信頼しているか・・・といったところの「連携」の課題です。

会計監査人と監査役等との「連携」の重要性が指摘されて10年以上が経過していますが、この「連携」というのも、実際にはよくわからないところがあります。いろんな会社の「連携」例をみておりますと、報告会の開催、意見交換、リスクアプローチによる問題点の指摘といったことが挙げられます。でも、連携の本気度を上げるためには、実質的に監査法人の選定権限や報酬決定権限が監査役会や監査委員会に存在しなければ(監査法人さんが監査役さんのほうに真剣に顔を向けないので)無理ではないかと。また、会計監査で得られた情報と業務監査で得られた情報を「ギブ&テイク」で双方が活用する気持ちがないと形骸化してしまうような気がします。

「何かとくに留意すべき点はありますか?」「今年は何か監査のキーになる項目はありますか?」といったやりとりが監査役さんと会計監査人との間で交わされることがありますが、これでは「連携」にはならないと思うのです。監査役と会計監査人が相互に「こういった情報が欲しい」、「こういった宿題をやっておいてほしい」と「知りたい情報」とその知りたい理由をわかりやすく説明しなければ、そもそも連携の相手方には伝えるべき情報の価値がわかりません。つまり情報共有などできないはずです。そして、そのためには相手の職務に関する一定程度の相互理解が求められます(そういった面において、会計的知見を有した社外役員さんは相互理解のためにも有益かと)。

ときには社長から嫌な顔をされることがあったとしても、会計監査人の希望を受け入れ、ときには会計監査人から嫌な顔をされても、会社の方針の正当性を説明して会計監査人に受け入れてもらう、といった「対話」こそ連携には必要ですが、そのような連携を可能とする監査環境が日本企業でも形成されることが不可欠です。このたびの監査法人のローテーション制度の実効性を高めるためには、まずこの監査役制度(監査委員会、監査等委員会制度)の機能が発揮できる環境作りが前提条件となるはずです。

7月 25, 2017 会計監査の品質管理について |

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コメント

金融庁の(一次報告)全43ページのうち、適用していない米国については26ページから1ページ余に簡単に記述しているだけ。我々には関心のないインドや南アフリカの例を示すほどのことがあるのだろうか。

東芝については、2001年3月期までの連結財務諸表(米国会計基準)の監査を50年間はプライスウオーターハウス(ADR発行当時からの際の監査人)が行っていて、新日本監査法人は2002年3月期からあ2016年の15年間のみだ。報告書は正確ではない。

報告書は金融庁の施策を強く反映した偏光した報告書に映る。プロバガンダだ。

投稿: AY | 2017年7月25日 (火) 08時51分

「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」に記載の、東芝の監査人であった新日本監査法人は47年間監査を行ってきたという。あたかも単独監査をしてきた書きぶりですが正確ではありません。

2001年3月までの米国会計基準による連結財務諸表の50年間の監査報告書はプライスウオーター会計事務所が行ってきています。新日本監査法人は2002年3月期から始まり2016年3月期の15年間のみとなっています。報告書は正確に記述とはなっていません。
下記URLを参照して見てください。PwC(中央青山監査法人)の監査報告書が見られます。
https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/sr/sr2000/162.pdf
https://www.toshiba.co.jp/about/ir/en/finance/ar/ar2000/ar00e.pdf

投稿: AY | 2017年7月25日 (火) 09時11分

AYさん、情報どうもありがとうございます。私もこのての調査報告書には、●●ありき・・・といったモヤモヤが漂っている感がします。政策推進的なものでしょうかね?私は会計専門職ではありませんので、ぜひ調査報告に問題点があれば、いろんな媒体で公表されるべきだと思います。私は推進することには反対はしませんが、なにか「バラ色」的な効果をあまり喧伝しないほうがよいと思いますし、ほかにも実施にあたってはこんな前提条件がないと効果は出ない、とされるものもあるように思います。

投稿: toshi | 2017年7月25日 (火) 12時15分

金融庁の「公認会計士・監査審査会」の設置に倣った米国公開会社会計監視委員会(PCAOB)は、専門家でない人から構成され、5名の委員のうち現職又は前職が公認会計士であるメンバーは2名に限定され、その結果過剰な監査批判となる。127ページ

「ファイナンシャル・ゲートキーパー 投資家を守るのは誰か」淵田康之氏/ロバート・ライタン氏編集には、PCAOBに関する興味ある研究が乗せられています。専門家の少ない金融庁と似ています。
監査法人を分割又は国営化する案や、監査業務に専念させる案もあながち冗談とは言えなくなる、としています。一読をお勧めします。URLを入れておきます。

投稿: AY | 2017年7月28日 (金) 15時08分

金融庁の報告書は、細かい点をあげれば、明らかな間違いや、おかしな記述はいっぱいあります。一つだけ例を挙げれば、P40「特にアメリカでは、上場企業の99%がビッグ4の会計監査を受けており、....」
そんなはずないでしょう。報告書で、出典とされる資料を見てみましたが、44%となっています。シェアが99%なのは、S&P500社に限っての話です。
新日本監査法人は、会社の説明を鵜呑みにした、として金融庁から処分されましたが、この報告書も、決して鵜呑みにすることなく、職業的懐疑心を持って読んで下さい、ということなのかもしれません。

投稿: Beaver | 2017年7月29日 (土) 15時19分

監査役等が、監査人を選んだり、報酬を決定したりする実質的な権限を有すること、この「実質的な」がポイントですね。
あと、優れた監査人を選ぶインセンティブを与えることが必要だと思います。
不適格な監査人が選任されて、その結果監査が失敗した場合に、監査役の選任責任が問われる(必ずしも法的にということでなくてもいいですが)くらいでないと。

投稿: Beaver | 2017年8月 2日 (水) 23時25分

Beaverさん、いつも貴重なご意見ありがとうございます。
「優れた監査人を選ぶインセンティブを与えることが必要だと思います。不適格な監査人が選任されて、その結果監査が失敗した場合に、監査役の選任責任が問われる(必ずしも法的にということでなくてもいいですが)くらいでないと。」
私も同感です。ある監査の有識者が集まる会合で、私が同様の意見を述べたら、あまり元気のよい意見は歓迎されないムードが漂っていて驚いてしまいました。ただ、たとえば対外的に「当社は監査役会主導で優れた監査人を選びました、具体的には・・・といった選定過程です」等を報告しても良いのではないでしょうかね。

投稿: toshi | 2017年8月 3日 (木) 11時08分

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