ESG投資のキモとなる「非財務情報」の役割を考える
東芝さんの有価証券報告書に「限定付適正意見」を表明したPwCあらた監査法人の代表者インタビュー記事が掲載されていますね(ロイターさんの記事はこちらです)。個別の案件について監査法人の代表者の方がマスコミで説明する、というのも異例ではないかと。当ブログで盛り上がっている話題にも少しだけ触れられています(以下本題です)。
先週金曜日(8月18日)の日経朝刊の特集記事「ESG指数 米英算出会社に聞く」を読みましたが、予備知識が乏しいせいか、あまり内容を理解できませんでした。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資に乗り出し、銘柄の選別にあたって3つのESG指数を採用した、とのことですが、財務情報とは全く別個に非財務情報の開示も重要になりつつあるのかな・・・と考えておりました。
しかし企業会計9月号の特集「株価を動かす!非財務情報のチカラ」を読みますと、ようやく上記記事の内容を少しばかり認識することができました。また、非財務情報の取扱いについても、財務情報の延長線上にある、つまり財務諸表に乗らない企業価値をどう財務情報のように取扱うべきか・・・といった意識で議論されていることにも気づきました。統合報告書などにみる「非財務情報の取扱い」は、財務情報とは全く異なる考え方で議論されている・・・というわけではないのですね。
スチュワードシップ・コードが改訂される中で、①これまでの企業会計の考え方では把握しきれない無形資産の存在や、その将来的な見積もりといったことが企業価値を把握するにあたっては重要になりつつあることや、②社会問題の解決力や環境適応能力といった「ほんの少しの優越的地位が、グローバルネットワークが発達した時代においては独り勝ちを収める」といった時代背景からすると、ESGへの企業の取組に大きな関心が寄せられていることも当然かもしれません。
なかでも、時々お世話になっているニッセイアセットマネジメントの井口譲二さんの「非財務情報が将来業績予測・投資判断に与える影響」は、非財務情報がどのように企業価値と結びつく(と考えられる)のか、その道筋がとてもよくわかりました。コーポレート・ガバナンスが良好と判断されると、投資家にとってどのような安心感を生むのか、という点も(井口氏の個人的な意見も含みますが)とても参考になります。
また、青山学院大学の北川教授の「非財務情報の先進的開示例-アニュアル・サスティナビリティ・レポートの重要性高まる」も、投資家への説明に必要なKPIについて、先進企業の工夫が感じられて参考になりました(味の素さんの開示事例では、先の日経記事でも取り上げられていたESG指数算出会社の基準などにも言及されています)。先進企業の開示事例を読むと、ESGに力を入れて将来的にどう企業価値を向上させていくか、そのストーリーを描くだけでなく、その前提としてのファクトをどれだけ投資家に見せることができるか、現実問題として真剣に取り組まないと説得力は出てこないだろうな・・・と感じました。
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