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2017年8月 3日 (木)

社長が孤独であればあるほど相談役・顧問は活きる!

私が長く住み続けている場所(堺市百舌鳥界隈)が世界遺産に登録される可能性が出てきました。大小多数の古墳群は毎日眺めている「あたりまえの風景」なので、あまり実感が湧きませんが、登録されれば経済効果は1000億だとか(?・・・ほんまかいな)。ということで(?)、本日は世界遺産ならぬ「負の遺産」などと揶揄されている相談役、顧問制度のお話です。

日本取引所さんが「相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の改訂について」と題してコーポレート・ガバナンス報告書の記載要領を改訂されましたね。経産省の研究会報告や政府の未来投資戦略でも提言されておりましたので既定路線のようです。私も(週刊エコノミストの拙稿で述べておりますように)相談役・顧問制度には長所も短所もあるので、できれば各社において職務内容等を開示すればよいのではないかと思っておりました(方向性としては賛成です)。企業の対外的活動や社会貢献など、相談役が担っている企業も多いですし、相談役制度があるからこそ社長交代が促進される(かつてのように高額所得税が80%の時代ではなくなり、また役員退職金制度も廃止されるとなると、相談役のようなクッションがないといつまでも社長の座にしがみつく)、実績のある方ほど「相談役」として引き留めておいて中国や韓国等の競業他社で活躍していただかない、といったところも考慮すると、このあたりがオトシドコロではないかと思われます。

ただ、相談役や顧問の方について「職務はほとんどありません」と書かれていたとしても、また、相談役制度は廃止しました、と開示したとしても、元代表取締役社長、元CFOといった方々の影響力が全くないかといいますと、そんなことはないですね。とりわけ元カリスマ経営者や元カリスマ経営者を支えた元CFOといった方々が、たとえ会社には一切来なくなったとしても、毎日のように「●●チルドレン」と言われている現経営陣の方が御自宅に相談に伺う・・・というのはよく聞くところです。会社に在籍せず、対外的な活動もしないので無報酬ですが、影響力だけは社内で残している、まさに「影の相談役」ですね。

現役の社長さんだって、孤独であればあるほど、かつての上司だった「影の相談役」しかホンネを言わないということはあります。ご自身の弱みを墓場まで持って行ってもらえる方、ご自身のややグレーな部分を代わりに背負っていただいている方だからこそ、現役社長さんはホンネでお話できるのではないでしょうか。そのことを社長を取り巻く経営陣もよくわかっているので(相談役を退任した後も)「社長を動かせる人」のところへ日参するわけでして、「院政」は相談役(元相談役)が敷くのではなく、むしろ現役の経営陣が「院政」を活用する、というのもかなり見てきました(まぁ、人間力学として当然といえば当然かと)。

改訂された上記要領「代表取締役社長等を退任した者の状況」欄を読みますと、相談役のCSR(車、秘書、個室)の有無や現経営陣と同じフロアにそのまま在籍するのかどうか、といった本当の影響力を示すモノサシまで開示する必要はなさそうです(これらは株主との建設的な対話の中で開示する、といったことでしょうか)。スチュワードシップ・コードや国連の責任投資原則の浸透によってガバナンス改革はいよいよ形式から実質へと動き出しているようですが、この相談役・顧問制度の持つガバナンスへの影響については、「経営技能」よりも「実務技能」を重視する日本の社長養成・選抜システムが続く限りは変わりようがないと思っています(参考:江頭憲治郎「会社法改正によって日本の会社は変わらない」法律時報2014年10月号60頁)。ちなみに現在のところ、他社から経営のプロと呼ばれる方を社長に招聘するといった上場会社はそれほど多くはないですね。

★ところで安倍政権の趨勢からみて、ガバナンス改革はこの先どうなるのでしょうかね?中長期の企業価値の向上に資する・・・とありますので、検証するにも相当長期の施策続行が不可欠なのですが。。。

8月 3, 2017 コーポレートガバナンス関連 |

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コメント

山口先生の仰る通り、社長の「個人的」なアドバイザーやメンター、また社会貢献などでの会長・相談役等の存在価値は大きいように思います。
一方で、私は寧ろ事業会社を卒業した持株会社の社長(会長)の「院政」に注意が必要ではないかと考えています。
持株会社の社長は確かに法的な責任も負っているのですが、果たして本当に経営者としての責任をとるのだろうかということです。例えば、富士ゼロックスの事件の結末は、はしおって言えば「事業会社が悪い」と言うことで、責任らしい責任をとらなかったように感じます。
明らかな権力と影響力を持ちつつ、逃げ場が用意されているようにも思うのですが…。

投稿: Henry | 2017年8月 3日 (木) 09時18分

Henryさん、ありがとうございます。
なるほど、そういった見方はこれまで考えておりませんでした。たしかに持株会社の経営者は事業会社からみれば(事業会社の非常勤役員に就任しているような場合や、判例が責任を認めているような特殊事例は別として)相談役、顧問と同じ状況にありますね。持株会社役員の責任との比較で考えるというのも、おもしろそうです。一度検討してみたいと思います。

投稿: toshi | 2017年8月 3日 (木) 11時02分

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