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2017年8月16日 (水)

監査報告書の透明化(長文化)に監査役等はどう向き合うか?

旬刊商事法務の最新号(8月5日、15日合併号)の巻頭座談会は「会計監査の実効性確保と監査役の役割」というテーマでして、かなり長いのですが当該特集記事を一気に拝読いたしました。学者(弥永教授)、企業実務家(三井物産常勤監査役)、会計実務家(あずさ監査法人の会計士)に司会が弁護士・公認会計士の資格を保有された方の合計4名の座談会です。不正リスク対応基準、会社法改正、CGコード、監査法人版ガバナンス・コードといった制度改正の流れの中で、「監査役と会計監査人の連携」がどう変わってきたか、変わるべきか、といった論点について語り合うというもので、「監査のいま」を確認するためにとても有益でした。

ただ、長い対談の中で、私的に一番関心を抱いたのは、タイトルのとおり「監査報告書の透明化(長文化)に監査役はいかに対応すべきか」といった、「監査のこれから」の課題についての議論でした。金商法上の制度と会社法上の制度という、大きな違いはありますが、私自身も監査報告書の長文化が施行されますと、監査役制度には大きな影響が出るものと考えていましたので、やはりご専門家の方々も同様に感じておられることに少し安堵いたしました。ただ、監査役や会計監査人の法的責任を論じることで、「長文化、透明化といっても、結局は金太郎飴の文章が無難ではないか」といった議論に進展してしまい、制度の趣旨が没却されてしまうおそれもありそうで、注意が必要かもしれません。

今回のテーマが「会計監査の実効性確保・・・」ということなので、ターゲットは大規模上場会社の監査役等の方々ということになりそうです。監査役等と会計監査人がいかにコミュニケーションを図るか、という課題はもうずいぶん長い間議論されてきましたが、あまり世間の話題にはなりません。たとえば東芝とPwCあらた監査法人との「意見不表明」「結論不表明」の話題はとても大きく報じれましたが、東芝の監査委員会とPwCとの間でどのようなやりとりがあったのかはあまり報じられませんでした(記者会見の様子をみると、監査委員会はほぼ会社の利益を代弁していたかのように映りました)。もし、監査報告書の長文化と監査役等の関与が制度化された場合には、もう少し平時からのリスク管理が見える化される(その結果として有事には証拠化される)ことになるでしょうね。

コミュニケーションの取り方について、三井物産常勤監査役の方が「どんな情報が欲しいのかは、自分からこれが欲しいと言わなければ相手はわからない。相手に提供すべき情報も同じである」とおっしゃるのはまことにその通りかと。私も非上場会社ではありますが、監査役として、会計監査人との意見交換ではギブ&テイクに徹するようにしています(その際、経営執行部の行動を客観的に評価する姿勢は不可欠です)。できれば「業務監査」の課題が「会計監査」にどのような影響を及ぼすのか、そのあたりも説明するようにしています。そのためには監査役にも会計的知見が求められますし、会計監査人にも業務監査の知見が求められます。来るべき監査報告書の長文化の時代に備えて、いまから会計監査人と監査役等との適切なコミュニケーションの取り方を習慣とする必要がありそうですね。

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