内部告発者に朗報-地方公共団体向け通報対応ガイドラインの公表
先日、横浜市が内部告発者の氏名を誤って企業側に漏えいしてしまった事件が発覚し、告発者に謝罪したことが報じられていました(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。このような「地方公共団体による労働者通報への不適切な対応」が後を絶たないため、結果として行政機関への内部告発を萎縮させている点が大きな課題とされています。しかし、地方公共団体へ内部告発を検討している方への朗報となるべきガイドラインが策定されました。
今年3月、公益通報者保護法の趣旨を踏まえた国の行政機関向け(労働者通報に関する)通報対応ガイドライン改訂版が公表されましたが、これに続き、消費者庁より本日(7月31日)、地方公共団体の通報対応に関するガイドライン(労働者通報への対応を含む)が公表されました(消費者庁HPに掲載されています)。こちらも公益通報者保護制度実効性検討会の報告書提言に基づいて新たに策定されたものです。
企業不正を内部告発される方にとってはぜひ内容をご理解いただきたいところですし、内部通報制度の整備・運用が適切とはいえない企業にとっては、不正発覚リスクを高める要因ともなり、注意が必要です。不正リスクの中身についての詳細は、別途研修や講演等で解説させていただきますが、労働者通報に関して、(地方公共団体の対応が求められる)労働者の範囲はかなり広いですし、国の機関と同様「準公益通報」についての対応も要求されています(匿名通報についても基本的に受け付けることになりそうです)。また、これまで自治体が通報を拒絶したり放置する原因となっていた「真実相当性」の要件について、その解釈指針を示し、さらには個人の生命、身体、財産に重大な影響を及ぼし得るような通報事実の場合には、この要件該当性に疑問があっても通報対応すべき、としています。
たとえば公益通報者保護法上の「通報事実」に該当しないような法令違反行為についての取引先従業員からの通報でも、真実相当性の要件が認められる限りは、各自治体がこれを誠実に受領して調査を開始する、ということになります。もちろん国の機関事務ではありませんので、ガイドラインの実施についてはそれぞれの自治体の自主性を尊重することになりますが、法令上の根拠は地方自治法245条の2、第1項に基づく「地方自治事務に関する技術的助言・勧告」となります。公益通報者保護法の改正(ハードロー)は未了ですが、改正に向けての立法趣旨(公益通報者保護制度の実効性の向上)は、ガイドライン(ソフトロー)によって企業実務に浸透していくことが期待されます。
今後は各地方公共団体において、本ガイドラインを踏まえた内部規程の策定、改正等を行うことになりますが、各地方公共団体から消費者庁へは数百に及ぶ意見や質問が寄せられたそうで、消費者庁としてはすでに丁寧に回答を終えたそうです。したがって、今後は各自治体で速やかに制度の整備、改善、職員の皆様の研修が進むものと予想されますので、企業のコンプライアンス経営実践への影響も、かなり大きいはずです。
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