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2017年9月19日 (火)

企業不祥事から再起する企業は「経験効用」を活用する

昨日(9月17日)の日経MJプレミアム(有料版)に「復活マック、許したのはいつ?鶏肉問題3年、1000人調査」と題する興味深い記事が掲載されていました。日本マクドナルドHDの業績が急回復していますが、2014年の期限切れ鶏肉問題や異物混入問題による客離れで過去最悪の危機に陥ってから3年が経過しました。まさに「不祥事からの再起」といえそうですが、では負のイメージの払拭という「みそぎ」は済んだのか、といったテーマでの調査結果です。

業績が回復したのは不採算店の見直し(店数はピーク比約2割減の3000店を割り込んだまま)が主な要因ではないか、といった見方や品質問題後に来店を控えた人のうち、「一度も行っていない」「店に行く回数を増やしていない」人は全体のなお半数に上る、といった結果もあるため、まだまだ「みそぎは済んでいないのではないか」との結論になりそうですが、それでもお客様がかなり戻っているのも事実。お客様がマックに戻った理由としては「不祥事の記憶が薄れたから」「ほかにもっと良い店がなかったから」「みんなが戻っているみたいだから」というものだそうです。「安心、安全」といった抽象的でまじめな呼びかけでは効果がなく、もっと端的なイメージアップ戦略が功を奏したようです。

以前にも書きましたが、企業不祥事を発生させた企業において、商品やサービスの「経験効用」が高い場合には、不祥事のイメージによる「記憶効用」を減退させることが多いと思われます(ダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」下巻220頁以下参照)。「不祥事の記憶が薄れた」と述べる方も、実際には記憶が自然に薄れていることはなく、過去の(おいしかった)経験から記憶を薄れさせようとします。「みんなが行くから」という理由も、「行きたい自分」を正当化する一つです。しかし経験効用が低い場合には、記憶効用が上回り、なかなか商品やサービスに触れようとはしない傾向があります。したがって再起に向けた活動のポイントは、この「不祥事を忘れたい」といったお客様の自己制御の力をどうやって引き出すか・・・というところにあります(この記事で紹介されているマクドナルド社の販促戦略もその一つですし、もっと端的には社名や商品名を変える、といったことも考えられます)。

ただ、そのような戦略が成功したからといって「みそぎが済んだ」と安易に考えることはできません。一度不祥事を起こした企業の場合、たとえば同業他社が同じような不祥事を起こして公表しなくてもよいケースでも、同様の経営判断が大きな社会的批判を浴びることがあります。「なぜあのような不祥事を起こしたのに、また起こしたのか」と指摘され、とりわけ公表しなかったという判断が「消費者を欺いた」「不祥事を隠ぺいした」と評価されます。つまり、不祥事を起こしたことは、やはり商売上は大きなハンデを背負うことになります。だからこそ、同業他社以上にコンプライアンス経営には敏感でなければならない、まちがっても「二次不祥事」だけは絶対に起こしてはいけない、というのが私の考え方です。

 

9月 19, 2017 コンプライアンス経営 |

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