コーポレートガバナンス・コード改訂の行方はいかに
施行から3年~5年で改訂が予定されている(とされる)日本版コーポレートガバナンス・コードですが、実施率(コンプライ)が90%を超えるとされている日本の上場企業にとっても関心が高いところと思います(「これがベストプラクティス!」と言っておきながら、コードが改訂されると、また改訂されたコードを企業が実施する・・・というのもなんかへんな話ですね)。
そんなガバナンス・コードの改訂の行方を占うためにも、ぜひとも参考にしたいのが元祖英国版ガバナンス・コードの改革方針でして、8月29日に今後の改革方針をまとめた報告書が公開されました。法律雑誌でもよく取り上げられています。
メイ首相が就任当初に公約していたような急進的な改革はなくなりそうですが、それでも企業の社会的責任を意識した改革内容はなかなか興味深いところです。一定規模以上の株式会社に対して、取締役が従業員や取引先、地域住民の利益をどのように保護しながら事業を進めているのか説明することを会社法で義務付けたり、ステイクホルダーの利益保護に一層配慮するようにコードに盛り込んだり、ステイクホルダーの利益を代表する取締役の選任、従業員代表取締役制度、従業員諮問委員会の設置などの実施(コンプライ)を要請したり、ということで企業の社会的責任を果たすことが強く求められることになりそうです。
ペイレシオ(社長の報酬が従業員の給与の何倍なのか)の開示といった役員報酬の見直しが中心となりそうですが、いわゆる「アメとムチ」による株主主権的なガバナンス改革が変容を迫られているというところでしょうか。日本が向かおうとしているインセンティブ報酬制度の改革とはなんとなく逆方向に向いているような気もします。
従業員らと経営者との建設的な対話に関するガイドラインの策定、取締役がステイクホルダーの利益保護を実践するためのガイドラインの策定といったことも検討されているようです。仮に日本でも、英国改革が影響を及ぼすおそれがある場合には、企業もしくは取締役の社会的責任配慮実際に関する詳細なガイドラインが策定される可能性もありますね。昭和49年の商法改正時における「企業の社会的責任条項導入論争」が再び(コードではなく会社法改正というレベルで)起これば楽しいような気もしますね。
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