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2017年10月17日 (火)

神鋼品質データ偽装事件は不正行為か不適切行為か?

このたびの神鋼品質データ偽装問題について、昨日のエントリーへ機野さんが次のようにコメントされています。

「自分たちはオーバースペック(過剰品質)のものを作っているのではないか?」「少々スペックアウトであっても、いろんな段階で余裕をみているから、最終的には全く問題がない。大丈夫」と考えてしまうのが製造業の問題だ。しかし、どの業者も、どの担当者も同じように思い、少しずつ手を抜いていったら、いったいどうなるだろう。

なるほど、これも製品偽装やデータ偽装事例での現場における思考としては考えられそうです。本日の朝日新聞朝刊の記事では、品質保証部門の社員もデータ書き換えに加担していた疑いがあると報じていましたが、このような思考に至った末の行動だったのかもしれません。「働き方改革」が進む中、最近は管理職のオーバーワークが新たに問題となっていますが、多くの企業で同様の「不祥事の芽」が育ちつつあるように思います。

ところで先週金曜日の会見で神鋼さんがマスコミに配布した文書の中に「不適切行為に関するご報告」との見出しがありました。マスコミの中には、現場で起きたデータ偽装は取引先との品質保証の約束を守らなかったことなので法令違反には該当しない、法令で定められた品質は具備している、と報じているものもあります。

しかし、要求されていた品質を具備せずに(それを告げずに)取引先に納品していたとすれば、誤認惹起行為(不正競争防止法2条1項14号)に該当する可能性があります。また、要求された品質を具備していることが、取引先が納品を拒絶するほどに重要な契約上の要素だとすれば、刑法上の詐欺罪にも該当する可能性があります(たしかミートホープ事件では、不正競争防止法違反罪と詐欺罪の併合罪が認められたものと記憶しています)。

もちろん、大きな会社の事件なので、捜査機関が動くためには(事実上)被害会社の告訴が必要とは思います。しかし、本件で問題となっている事例は不適切行為というものではなく、不正行為と評価されても致し方ないものと思います。さらにやっかいなのは海外の拠点でも不正取引がなされている疑いです。たとえば中国でも不正競争防止法が存在し、日本と同様に誤認惹起行為は刑事処分、民事賠償の対象とされています。また懲罰的損害賠償制度が存在する国もあります。

神鋼さんクラスの企業であれば、コンプライアンス経営の一環として、現場でのリーガルリスクの研修は十分すぎるくらいに実践されていたと思うのです。上記のような法令は当然に認識されていたと思います。そのうえで多くの部門で同様の偽装行為が繰り返されていたとなると、やはり「組織風土」の問題だと認識せざるをえません。単に「納期を守るプレッシャー」だけでこのような結果にはならないでしょうし、不正行為を容認するような社内常識が蔓延していたのではないかと懐疑的になってしまいます。

私は昨年のJIS偽装への当社の対応が素晴らしいと感じていたので、余計に残念でなりません。一日も早く、公正中立な委員による調査結果が出されることに期待をしております。

10月 17, 2017 コンプライアンス経営 |

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コメント

今朝の日経では、30年にわたって(数十年でしたっけ)と書かれていたので、製造部門出身の取締役全員が知っていて知らん顔しながら役員にまで昇格していた可能性があるのではないでしょうか。かなり根深い話になってしまっているなぁと思います。かつて、鉄鋼会社は新日鉄、川鉄、住金、日本鋼管の次に神戸製鋼という感じで、4大製鋼なのか5大製鋼なのか微妙なところがありましたが、そういう部分で苦し紛れに・・・みたいな感じだったのだろうかと勝手な想像をしたりしております。というか、でないと、他の製鉄会社はどうなの?という日本の物作りの信頼性にも関わる話に進展してしまうのではないかと不安に思ったりします。

投稿: ひろ | 2017年10月17日 (火) 09時32分

昨年、神戸製鋼のJIS規格強度偽装事例をとりあげた先生のご講義をお聴きしたときに、「トクサイという言葉が神戸製鋼の中でどの程度の人が知っているのか、そこに注目している」とお話されました。
今朝の日経新聞をみてビックリしております。「トクサイ」は本社でも蔓延していたのですね。今週号の日経ビジネスでリクルートの社長さんがおっしゃっていますが「組織風土は競争力」ということをあらためて認識しました。

投稿: 監査スタッフX | 2017年10月17日 (火) 10時58分

前働いていた工場なんて、品質保証部が要求するスペックに満たないモデルは特栽モデルと言っていました。品証部から部門長まで、一応、顧客の購入要求があるからどうしてもと承認した上で出荷します。サンプル品として、正規の量産品としてではなくです。ただし、顧客がサンプル品であるか知っていたかは不明です。
結局、工場長が工場内の内部統制部に厳格なモニタリングを要請して、私のいる統制部がそれを一覧にして大きく掲示板に張り出したことにより特栽モデルは消滅しました。参考までです。

投稿: 元工場労働者 | 2017年10月17日 (火) 21時07分

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