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2017年10月 4日 (水)

コンプライアンス経営のレベルは「役員秘書」に表れる?

大株主さんから臨時株主総会の招集請求を受けている東証一部の9790号さんの経営権争いがたいへんな状況になっていますね。現社長さんと女性秘書とのプライベートな関係を大株主さんから糾弾されたり、一方で監査役会が大株主さんと会社との関連当事者取引がコンプライアンス違反の疑いありとして第三者委員会が設置されたりと、社内で混乱を来しています。場外の第三者からはどこまでが真相なのか不明なのでコメントは控えますが、一般的には役員秘書と経営トップとの親密関係はセクハラ・パワハラ問題に発展することが多く、社長解任事例でもときどき取り上げられるスキャンダルです。

ところで、昨日、労務訴訟(使用者側)対応で、とても有名な東京の某弁護士の方と意見交換をさせていただいたのですが、その方は永く「役員秘書研修」を担当しておられるそうで、これがとても盛況だそうです。秘書室長を務める総務部長さん(男性も女性も)や、個々の役員の方の秘書さん(女性が多い)が受講者です。役員秘書の心構えや役員との接し方といった一般的な研修テーマのほかに、①インサイダー情報の取扱いについて、②セクハラ、パワハラ、マタハラ問題への対処、③保有個人情報、企業秘密の取扱い、④秘書特有の労務問題などを取り上げて研修をされるそうで、受講者からの質問もたいへん多いとのこと。

重要なポイントとして、会社の利益と役員個人の利益を明確に区別して、役員秘書は最終的には会社の利益を守るために業務をこなすことを研修の中でお伝えするそうです。秘書室長は別として、普通は担当役員との二人三脚のお仕事なので、どうしても「会社の秘書」という感覚よりも「某取締役の秘書」という感覚のほうが優先してしまうのでしょうね。

上場、非上場を問わず、例年同じような会社からの受講申し込みが多いようで、その弁護士の方がおっしゃるには、「こんなところへ受講に来なくても、そもそも不祥事が起きないような企業のほうが多い」「役員秘書の重要性がわかっているからこそ、研修の費用を会社が払っている」ようです。たしかに(私の経験からですが)社長解任事件の準備段階で、社長の秘書さんからどれだけ情報を入手できるか、どの秘書仲間に動いてもらえば情報を入手しやすいか、といったところは重要でして、秘書の方々がしっかりしているほど、情報は簡単には入手できないですね。

冒頭の9790号さんのような事例はかなり極端かもしれませんが、それでも役員秘書の方々の対応から、その会社のコンプライアンスの姿勢が垣間見えるかもしれません。たしかに役員秘書の方がセクハラを受けていたり、役員個人のプライベートな問題に悩まされている場合には、会社としても上記のような研修は受講してほしくないですよね(笑)。企業風土のレベルを測ることはなかなか難しいですが、こんなところからも、企業のコンプライアンスのレベルを測ることができるように思いました。

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