必見!会計・監査・ガバナンス-ジャーナリスト・記者の視点
10月24日に東芝さんの臨時株主総会が開催されますが、株主送付書類の中に監査委員会による「計算関係書類及び会計監査報告に係る監査報告」が掲載されています(東芝さんのHPで閲覧できます)。
会計監査人であるPwCあらた監査法人さんは、(予定どおり?)計算関係書類について「限定付き適正意見」を表明しているので、東芝さんの監査委員会としては「会計監査の方法及び結果については不相当」という意見を表明するのでは、と予想していました。しかし、相当性審査の結果は「(監査の方法も結果も)限定付き相当意見」です。つまり、限定付き適正意見の根拠とされる部分については相当ではないが、その部分を除外したところでは相当である、とのこと。
ちなにに日本監査役協会「監査役監査実施要領」(平成28年度版)152頁~156頁あたりの「会計監査人監査の方法と結果の相当性判断」に関する記載を読みましたが、監査委員会による相当性判断は「相当」とみるか「不相当」とみるかというもので、条件付きとか限定付きの相当性判断という類型はありませんでした。うーーん、私の解釈では、上記の記載は「監査委員会と会計監査人の見解が一致している場合」には該当せず、結論としては会計監査人の監査は方法及び結果とも相当ではない、と読めるのですが、いかがでしょうか。。。
さて、(まったく話は変わりますが)来週10月19日ですが、東京日本橋の書店「丸善」にて、読み手と作り手をつなげる本の祭典(ニホンバシ・ブック・コンベンション)が開催されます。そこで、たいへん興味深い企画を見つけました。私も過去に出版でお世話になった同文館出版さんの企画です。
<対談>同文舘出版の本からみる会計・監査・ガバナンスのいま―ジャーナリスト、記者の視点と編集者の視点<16:00~17:00 丸善日本橋店3Fギャラリー>
※定員50名(先着順にご案内させていただきます)
ゲストの経済ジャーナリストや新聞記者と編集者が、それぞれどのような視点で会計、監査、ガバナンスに関するテーマを追い、記事の執筆や本作りをしているかを語り合います。
むむ!?これは気になる。。。ということで、同文館出版さんに問い合わせたところ、トークショーに登壇されるのは磯山友幸氏(経済ジャーナリスト、元日経新聞記者)、伊藤歩氏(経済ジャーナリスト)、加藤裕則氏(朝日新聞記者)という、いわば会計・監査・ガバナンスの世界を良く知る「大御所」の方々だそうであります(このブログでお名前を出すことについては、皆様のご了解を得ております)。
私もちょうど午後3時半まで丸の内で仕事をしておりますので、「帰阪の時間を遅くしてでも、これだけは行かねば・・・」ということで出向いてみようと思っております(先着50名って、遅れたら入れないってことかな?)。漏れ聞くところでは、あの企業会計審議会の委員でもいらっしゃる某著名学者の方も見に来られるとか?(そういえばこの方の還暦記念「21世紀会計・監査・ガバナンス事典」を頂戴していたことを思い出しました)。
会計・監査の世界をおもしろく世間に紹介する「通訳」「橋渡し」の役割は重大であり、ジャーナリストの方々へ期待するところは大きいのです(このトークショーを盛り上げるためには編集者の力量も重要です)。参加可能人数に限りがありますが、もしお時間がございましたら10月19日木曜日午後4時~5時、日本橋丸善3階ギャラリーでのトークショーをご一緒に堪能しましょう!(^^♪
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コメント
(初歩的な質問で恐縮です)
招集通知には「会社法第438条第2項に基づき計算書類の承認をお願いする」とありますが、会社法第438条第2項は「定時株主総会」での承認を求めています。
今回は「臨時株主総会」ですが、適法なのでしょうか。
(東芝さんには優秀な法務スタッフが揃っていると聞きますので、単に私の無知だと思いますが)
投稿: skydog | 2017年10月13日 (金) 11時18分
(一度で用が足りずに申し訣ありません)
監査委員会は「会計監査人の監査の方法及び結果が限定付きで相当である」とするならば、なぜ会計監査人の解任議案が同時に出てこないのでしょうか。
「現時点では実務的に無理」とするならば、招集通知に説明がないのは不親切だと思います。
投稿: skydog | 2017年10月13日 (金) 11時26分
>skydogさん
臨時株主総会でも計算書類の承認議案を上程する必要はありますので、正確には会社法438条2項の類推適用という形で合法化できると思います。
監査委員会としては、(ホンネでは諸事情あるとは思いますが)とりあえず相当性はある、との意見表明ではないかと。そこに腐心されたのではないかと推測しています。
投稿: toshi | 2017年10月13日 (金) 11時53分
ひさしぶりに当サイトに訪問しました。skydogさんのご質問にお答えするならば、今回の臨時株主総会は、法的には、「定時株主総会」です。
計算書類の承認をする株主総会である以上、定時株主総会ということになります。東芝が臨時株主総会という名称を付けていても、それは関係ありません。
限定付相当ということは、少なくとも、監査の結果は相当ではないという意見なので、会計監査人は、株主総会に出席して意見を述べる権利を会社法上有していますが、参考書類に意見が記載されていないことからすると、会計監査人はその権利を行使しなかった(行使しない)と思われます。
あとは、株主総会の場で、会計監査人の出席を求める動議が提出されるのか、提出されたときにそれが可決されるのか、可決されたときには、会計監査人が(どこかで待機していて)すぐに出席して、意見を述べるのか(それとも、待機していなかったため、すぐに出席できず、延会として、後日、出席して、意見を述べるのか)など、会社法上の論点がてんこ盛りで、興味深いですね。
投稿: 通りすがりの商法研究者 | 2017年10月13日 (金) 12時00分
>通りすがりの商法研究者さん
私の拙い解釈論を修正いただきありがとうございます。こういったことを議論することはとても大切だなぁとおもいます。
一般株主の方から動議は出るだろうな~と、私は予想しております。
投稿: toshi | 2017年10月13日 (金) 12時10分
toshiさま、通りすがりの商法研究者さま、ご教示ありがとうございました。
東芝さんは定款第12条で「定時株主総会は、毎年6月に開催する。」と定めていますので、今回は定時株主総会と謳えないけれど、法的には定時株主総会だということですね。
ISSさん,グラスルイスさんが顧客向けリポートで「監査法人の限定付き適正意見の付いた計算書類を承認することは適切ではない」としているとの報道を見ましたが、東芝さんの大株主である機関投資家が賛成票を投じた場合、委託者にどのように説明するのか難しそうですね。
投稿: skydog | 2017年10月14日 (土) 04時27分
東芝の決算(総会)承認に対して、会計監査人の結論(意見)は「・・すべての重要な点において適正に表示している。」であり、監査委員会の意見は「・・会計監査人の監査の方法及び結果につき、・・相当であると認める。」ものである。両者の最終的結論においては何ら矛盾が無いのであるから、それぞれの意見において(慣例的に?)使用されている用語である「・・除き」をどの様に理解・解釈するか、だけが問題となると思われます。これも、その至った結論に照らせば、反語として理解するのが自然解釈であるため、「除き」は、「しかしながら」と読み替えるべきでしょう。なお、限定付適正意見は公正妥当と認められている監査意見であり、また、監査役または監査委員会の意見において限定意見を述べてはならないとする法令条文は有りませんし、「相当」もしくは「相当でない」事だけを述べるよう求めた条文も見受けられませんね。・・・この両者結論を「大岡裁き」とするか「曖昧決着」とするかは、所詮、株主総会もしくは裁判所での結論に委ねられる事になりますから、今後において大変注目しています。監査報告書(意見書)の記載内容に関して、期せずして、大きな一石が投じられようとされている事は強調されるべきでしょう。
投稿: 一老 | 2017年10月16日 (月) 11時48分
10月19日、必見!のトークショーを拝聴しました。
「丸の内」で仕事をされていた御多忙の山口利昭先生も、八重洲側の「丸善」に16時ちょうどに到着されて良かったです。
司会を見事に取り仕切った(本の紹介も素晴らしかったです)同文館出版営業部の方に、「問題ない範囲での山口先生のブログへのコメント」は御承諾されました。
(金融庁の)会計監査に関する審議会の傍聴について、「制度が変わるのを体感できる」「議事録は綺麗にお化粧されてしまうので。。。(だからライブに限る)」との御発言があったのは共感しました。
私は「公益通報者保護法改正」に向けた、消費者庁「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会・ワーキンググループ」の傍聴を続け、同様の感慨を持っています。
山口利昭先生が検討委員・ワーキンググループ委員を務めていました。
紙の本好き、にはたまらない「本の祭典」、ビジネス書がよく売れるという丸善日本橋店にて、講談社、光文社、早川書房のブースでミステリ談義もしてきました(ビジネス法務と関係なくてすみません)。
投稿: 試行錯誤者 | 2017年10月20日 (金) 18時33分