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2017年10月27日 (金)

神鋼品質データ偽装事件-組織に蔓延する「納期のプレッシャー」

さて、本日も神鋼さんの経営トップの記者会見があり、機械部門における新たな不適切検査が判明したことや外部調査委員会が設置されたこと等が公表されました。不正の範囲や損害の範囲が未だ確定せず、先が全く見えないという意味において、神鋼さんの件はかなり深刻な不祥事例になりそうです。

ところで品質検査の現場がなぜ、長年にわたって不適切な検査を繰り返していたのか・・・という点ですが、経営トップの方は「納期のプレッシャーがあったかもしれない」と述べておられます。この「納期のプレッシャー」というのは、「経営陣からのプレッシャー」の一環として、すべてが経営陣の責任であるかのように受け取られることがあります。

しかし、経営陣からのプレッシャーよりも、各部署からのプレッシャーのほうが強かったのではないかと想像します。たとえば営業部門です。納期について一番強い関心を持つのは取引先に約束をしている営業部門ではないでしょうか。信頼関係が破壊されてしまうと成績に一番影響が出るのが営業部門です。製造部門と営業部門とのチカラ関係に大きな差があると不祥事の芽となります。

また、品質管理部門が「品質と満たしていない」として製造部門に作り直しを要求しても、製造部門のほうが「期限を守ることができない」といって再製造を拒否することも考えられます。要求品質に適合した検査数値が出ないのは、ウチの責任ではなく、品質管理部門のスキルが低いからだ、として納期を守れない責任を品質管理部門に押し付ける・・・ということも、他の性能偽装事件で問題となりました。これもやはり品質管理部門と製造部門とのアンバランスな力関係に起因します。

さらに、商品製造過程において、品質管理部門が「おかしい」と声を上げることができない体制が存在するのではないかと。納期ということよりも、そもそも品質管理のところで「作り直し」を堂々と言えるのでしょうか。「ひょっとしたら自分の検査に問題があるかもしれない」といった気持ちを持ちながらでも「おかしい!」と口に出して言える雰囲気があるのでしょうか。

出荷までの準備がすべて整っていて、あとは検査数値を入れるだけですぐに出荷、という段取りの中で、「ちょっと待って!これやり直し!」と言えるビジネスの環境があるのでしょうか。毎日のように品質検査がクレームを入れるのが通常だとすれば問題ありませんが、そもそも品質管理の意見が通る体質の組織なのかどうか、そこから疑ってみる必要があるように思います。いわば最終検査を行う部門がどの程度、組織内でリスペクトされているか、といった問題です。

本日の記者会見でも経営トップの方が「取引先と連日、商品の安全性確認作業を行っていますが、安全性に問題が認められた商品は一切ございません」と述べておられました。ということは(前にも述べましたが)取引相手先の、少なくも納品検査担当者は「要求水準を満たしていないかもしれない」といった疑問を持ちつつも、さらなるサプライチェーンへの納品遅れを回避するためにノーチェックで通していたということも可能性としては否定できないように思います。このような疑惑は不祥事を起こした神鋼さん自身は口が裂けても言えない疑惑なので、それこそスコープを広げて外部の第三者委員会が調査すべきと思います。

神鋼さんの件でも、日産さんの件でも「納期へのプレッシャー」と言われ、それが誠実な社員であればあるほど不正への動機になるようにも思われますが、実はもう少し組織全体に横たわっている構造的な欠陥に起因している可能性もあるように思います。いや、一人ひとりの仕事に対するプライドの問題かもしれません。自分の部署さえ会社の期待に応えていれば、他の部署が不正に手を染めたとしても無関心・・・といったところも「納期へのプレッシャー」の表れといえそうです。

10月 27, 2017 コンプライアンス経営 |

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コメント

 時代の環境変化とズレたままの「村の掟」に従わない社員が増えつつある、という事態かと存じます。村八分を極度に恐れる日本人の遺伝子構造が、少しずつ変化しているのではないでしょうか。
 ある種の進化が徐々に現われてきており、その事実を踏まえて組織のトップから末端まで、従来のリスク選好を見直さなければ、このような不祥事が日本のあちこちで頻発するのではないかと危惧します。
 ちなみに「プレッシャー」という言葉は原因を分かったようにさせるだけで、何の説明にもなっていません。プレッシャーの無い仕事や生活があったら、教えてほしいものです。ある事態をプレッシャーと感じるかどうかは、各個人の問題ですが、それをプラスのパフォーマンスに変換する能力を育成するのは組織の課題でもありましょう。

投稿: 芝と竹馬 | 2017年10月27日 (金) 08時24分

監査役8年目ですが、以前はメーカーで工場の生産管理(30年前ですが)、その後営業責任者でした。製品に組み込む購入部品、加工後の製品、何れも要求仕様から外れた場合は設計部隊に「仕様外品処置願い」を提出し、製品使用上の問題有無を設計の観点から評価する、と云う制度がありました。製品納入先の客先にも全て報告してました。ここでの要注意点は、図面で規定される製品、使用部品等の「公差」は図面の使用先により異なると云うことです。客先用図面より設計部図面の方が公差は厳しく(狭く)、購入部品等の外注品の方は更に厳しくなります。図面に記載されている寸法ピッタリに仕上げて、より良い製品を作ろう、と云う姿勢の現れです。仕様外品と言っても客先図面から外れていないのだから設計上問題ないだろう、と云うのが製造側の言い分ですので、より厳しい公差で管理したい設計部隊とぶつかることが多々ありましたが、その後の不景気等により現場の職人さん達が早期退職でいなくなったことも製造部仕様での品質管理、が崩れて来た原因の一つではないでしょうか。昨今の現象が「自分達はより厳しい仕様で検査、管理しているのだからこのくらいのことは製品使用上は問題ないんだ」と云う言い訳の理由になっている気がします。

投稿: 小口昌夫 | 2017年10月27日 (金) 11時05分

そんなもん日本のすべての民間企業は一緒じゃい!
…と、激怒しております。

製造部門と営業部門とのチカラ関係?
品質管理部門と製造部門とのアンバランスな力関係?

はぁ~!?
そんなもん日本の全ての企業、メーカーでは程度の問題こそあれ、
みーーーーーーーーーんな抱えている問題です!
「納期へのプレッシャー」がないなんて、心臓がない人間みたいなもの。

これほど他企業を馬鹿にした言いぐさはありませんよ。

それでも、大半の企業は不正なんかしてないのです。

投稿: 機野 | 2017年10月27日 (金) 15時47分

最近の神戸製鋼の不祥事をみていると、ちょうど2年半前の東芝の初期対応を見ている気がします。プレッシャー云々というよりも、もはや組織風土の問題が一番であり、神鋼固有の問題です。そもそも神鋼の技術力は高いので、取引先が納品検査で何かがわかるかといえばわからないでしょう。なので相手方取引先の不正といった問題は出てきません。

投稿: たけい | 2017年10月27日 (金) 18時01分

官需の場合は「納期遅れ」により、一日当たり何円もしくは何%という遅延違約金が発生することがあるので、「納期のプレッシャー」=「予算未達のプレッシャー」となります(民需でもそうかもしれませんが)。
検査基準未達品(つまり不良品)発生による納期遅れを防ぐために次のロット(次契約分のロット)品から製品を回すということが、しばしば行われています。
しかしながら経営陣が棚卸削減や納期引き付け生産(トヨタ「かんばん」方式のような部品発注や前工程からの引き渡し時間を削減し、在庫を抱えずに納期に合わせて生産する方式)を目標として掲げると、上述のような方法は取れなくなります。
現場の「品質・納期」に関する不平をものともせず、経営陣からはとにかく「やれっ!」っとしか言われません。高い目標を掲げること自体は悪いことではないので、難しい問題ではあります。
神鋼や日産、スバルの真の原因とは違うかもしれませんが、上記のようなことも、結果としては不正の原因となりえます。

現場が「おかしい」と声を上げることは、公益通報でも同じ課題があるように思います。
30日(月)「これからの内部通報システム~ 消費者庁ガイドラインの改正、公益通報者保護法の改正論議を踏まえて ~」にて、山口先生の基調講演を拝聴します。
どうかよろしくお願い申し上げます。

投稿: 試行錯誤者 | 2017年10月28日 (土) 14時24分

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