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2017年10月28日 (土)

Q&Aでわかる日本版「司法取引」への企業対応

Sihotorihiki030_2 昨日(10月27日)、NHKニュースにおいて来年6月までに導入される日本版司法取引(改正刑事訴訟法上の「協議・合意制度」)に関する企業担当者向けセミナーの様子が報じられていました(画面で見る限り、セミナーは大盛況のようですね)。ニュースにおいて弁護士の方が指摘しておられるように、今後は企業自身の信用毀損を防ぐためにも内部通報制度を運用することが重要なので、私もコンプライアンスの視点から注目をしております。

ところで、日本版司法取引への企業対応については、以前平尾覚弁護士のご著書を紹介させていただきましたが、このたび大江橋法律事務所(東京事務所)の山口幹生弁護士、名取俊也弁護士による共著「Q&Aでわかる日本版『司法取引』への企業対応~新たな協議・合意制度とその対応」(同文館出版 2,300円税別)が出版されましたので、さっそく拝読いたしました。山口氏、名取氏とも長く検事として活躍され、とりわけ経済犯罪や贈収賄事件の立件に関わってこられた経歴をお持ちです。

平尾先生のご著書は、まだ誰も踏み込んでいなかった草むらに道を作るようなイメージ(改正法の条文解釈上の課題や企業対応に予想される問題点の掲示等)で、とても斬新なものでした。いっぽう、上記山口氏らの新刊書は、企業担当者をはじめ、一般の方々に、有事になった場合にどうすべきか、その解決策を平易な文章で書きおろしておられる点に特徴があります。改正刑事訴訟法や企業対応の重要ポイントをQ&Aで解説されているだけでなく、刑事訴訟という、比較的なじみの薄い手続法の実務を、企業人向けに、「メモ」や「コラム」で捜査や刑事訴訟の基本的な仕組み等への解説が付されている点はすばらしいと思います(こういったところは同業者から「あたりまえ」と言われそうで、ついつい省略したくなってしまうのですよね)。

本書において評価すべき点は、検察実務経験者としての「読み」です。「100%このようにすべきとは言えないが(条文には書いていないが)、通常は検事はこのような対応をとり、また裁判官の判断も想定できるので、企業としてはこのような対応がなされるべき」といった解説がなされています。まだ日本版司法取引の運用にあたり、検察実務がどう動くかわからない状況ですが、「これまでの経済犯罪事件の捜査・立件の実務から想定されるところでは」といった書きぶりは、読む者に安心感を与えます。申告の対象となる自己の犯罪と「他人」の関係について、社員と別会社、社員と別会社の社員、自社社員どうし、自社と自社社員といった区分によって、それぞれ自社や自社社員がどう動くべきか(動かなければならないか)が整理されており、状況次第では役員の皆様も、相当なリーガルリスクを背負うことになることがわかります。

企業法務に携わる顧問弁護士の方々にも、また企業担当者の方々にも、企業が有事になる前にお読みいただくのにピッタリの一冊です。さらに企業の内部通報制度の窓口担当者等にもお薦めの一冊といえそうです。

10月 28, 2017 本のご紹介 |

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