日産自動車不正検査問題-やはり内部告発が端緒だった・・・
日曜日ですが、備忘録を兼ねて短めのエントリーをひとつ。FNNニュースですでにご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の日産自動車さんの不正検査(無資格者による最終検査)問題について国交省の抜き打ち検査が行われたのは、その数か月前に国交省に内部告発(社内からの情報提供)がなされていたことによるものだそうです。日産自動車の件では、初めて内部告発の存在が明らかになりました。つまり、従業員の方の内部告発がなければ、日産さんは今も平穏無事に(?)無資格者による最終審査を継続しており、新型リーフによる新たな事業戦略がマスコミで華やかに取り上げられていたことになります。
日産さんは当初、「本件について内部通報や告発があったものではない」と発表していました。ただ、私の前回のエントリーの最後のところで述べたとおり、実際には内部告発で発覚したということで、しかも監督官庁がマスコミに漏らした・・・ということなので、日産さんと監督官庁との信頼関係はかなり破たんしていることがわかります。再発防止策を実施したと監督官庁に報告していながら、実はその後も無資格検査が続いていたことが判明したので、日産さんとしては国交省のメンツをつぶしてしまったことになります(これは有事対応としては最悪のパターンです)。
ここからはまた私の推測ですが、従業員の方がいきなり内部告発に至ったとは思えません。定石通り、最初は社内へ内部通報をしたり、上司に問題提起をしておられたものと推測いたします。仮に社内通報が行われていたとなりますと、今度は「不正隠し」(もしくは情報の根詰まり)のほうが無資格検査よりも大きな不祥事として世間から批判を受けることになり、沈静化には長い時間を要することになります。これで「安全性には問題はない、といった意識から、そんなに悪いことではないと現場社員は考えていた」といった安易な企業風土論で片づけることができない不祥事であることが認識できました。
土曜日(10月21日)は、私の事務所で神戸製鋼事件に関する某新聞社の取材を受けました。ここ1週間の間に数名の方から取材を受けましたが、「監査はなぜ機能しなかったのか」といった視点から取材を受けるのは初めてでした。日産さんの件、神戸製鋼さんの件、そして商工中金さんの件、いずれにおいても「監査はなぜ機能しなかったのか」といった視点で原因を究明することは当然であり、ようやくマスコミもそこに関心を向けるようになったと感じました。神戸製鋼さんの品質データ偽装問題については、今のところ自主調査によって発見し、これを自主的に公表したとされていますが、こちらも本当に会社の発表どおりなのか、やはり第三者への情報提供があったのではないか・・・と疑問を抱くところです。
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コメント
山口先生 なぜ、「首を垂れて」跪いて購入者や販売店の皆さんに向けた謝罪会見を行わないのか不思議でなりません。危機管理のプロがひかえておられると思うのですが?タクシー・ハイヤー業界でも、名指しでこのメーカーの車両の配車をしないでくれと言われると・・・。テレビでガンガン流れる広告も、耳障りに感じます。2ヶ月ほどのメデイア自粛が妥当かと?なんか、このざらざらした感覚は理解できないのですが?
投稿: サンダース | 2017年10月22日 (日) 23時11分
極めて深刻な事態と云わざるを得ません。
(完成)検査が正しく行われているか否かということを、内部監査人であれ会計監査人であれ、検査手順と検査数値をデータや書面、ヒヤリングで確認するだけでは見抜くことは極めて困難であることが分かってしまったからです。一切の信頼を失ってしまったというのはそういうことです。
監査人自らが一定回数以上検査を行って、検査数値とほぼ一致するかどうかを確認する必要が出てきました。しかし、これは監査人に検査者と同等レベルの技能がなければできないわけです。凄まじい手間と暇(金銭的な負担と時間)が掛かることになりますが、それなくして国際的な信用回復は不可能でしょう。
そのことと、企業ぐるみで永年行われてきた不正の風土を改めるということはまた別次元の問題です。
商工中金に関しては、もうとっくに社会的存在意義がなくなっていた、ということに尽きるでしょう。
投稿: 機野 | 2017年10月23日 (月) 17時13分
山口先生 一昨日放映された、NHKのブラタモリは「名古屋ものづくり日本の秘密」でした。トヨタ車が、名古屋港からどんどん貨物船に詰みこまれていた様子が映し出されていました。トヨタ社と同様に、当該社の車も米国に向かって輸出されているのでしょうか?現地生産で、米国人の手による米国基準で製造されていたのであれば杞憂にすぎますが?もし、今、日本車がまさに赤道あたりを通過しているのであれば?ISOも取り消された事を考えると、米国各州のデイーラー先の購入予定者からキャンセルされるような状況も起きうるのではないでしょうか?航海上の“ACT OF GOD"でもない限り、真っ当な商品が手元に届かないとすれば、ありとあらゆるところから様々な訴訟リスクも想定されるのではないでしょうか?1年半後にどのようになっているのか予想もつきません。「従業員への聞き取りでわかった不正の背景や現場の実態」に「通報する従業員はどうせ是正されないと思った」ことと、「通報すると報復されると思った(読売新聞朝刊11月18日3面)というのも、各経済団体の都合のよい論理ではなかったのではないでしょうか?」通報のホンキ度を甘く見ていたことからその結果、執行・監督をする者が全く機能しないというのは高くつきますね。山口先生が上梓なされました新刊本のご紹介にあるように、内部通報制度や公益通報者保護法を「使用者vs労働者」「企業vs社員」の固定観念で捉えるのはもはや時代遅れと言えます。とのご説明はその通りに感じます。企業の強気を強情に表明し続けていた経営陣は、工場、支店及び支社で働いている社員の顔が見えるように業務を執行していればと後悔の念を抱いているのではないでしょうか。この企業を見ていて思うのは、ホンキ度があれば、モーターショーの出展は辞退して、宣伝広告のメデイアの露出も完全シャットアウトすることで「企業の品格」を保てたのではなっかたかと思います。覆水盆に返らずではありますが、カリスマなどいないことは今回の事件で良く分かりました。工場のラインでは、毎日朝礼時と夕礼時に唱和があるのでしょう。でも、君たちが一番大切だとトップがラインまで足を運んで言わないと伝わらないと思います。社内各部署の通達の書面は、全てリーガルチェックを行うようになどと弁護士事務所から指図を受けて法務部部員が全国を手分けして各部署を所管するのでしょうか?また、そんことが繰り返されるのですね?
投稿: サンダース | 2017年11月20日 (月) 17時11分