ガバナンス改革2018-上場会社の外堀は埋められつつある?
コーポレートガバナンス改革「形式から実質へ」は2年目を迎えます。本日(11月7日)の日経朝刊では「企業統治改善へ共同対話」とうことで、企業年金連合会と大手金融4社による上場会社への協働対話の方針が紹介されていました。10月に新設された「機関投資家協働対話フォーラム」が具体的な共同対話を支援されるそうです。資本効率の改善、独立社外取締役の増加、環境問題への取組等、情報開示の拡大を要請するとのこと。
2015年に施行されたガバナンス・コードによるガバナンス改革は一定の効果を発揮したものと評価されていますが、それでも「なんちゃってコンプライ」で対応している上場会社がとても多い、というのが実感です(コンプライは担当役員の権限で決めることができますが、さすがにエクスプレインは社長の承認が必要ですよね)。これはソフトローによる一律適用という行政手法である以上は限界かな・・・と思います。いわばこれまでは「大坂冬の陣」で上場会社は乗り切れました。
しかし、改訂スチュワードシップの施行により、このような機関投資家の協働対話が進むとなると、パッシブ運用主流の市場に向けたガバナンス改革の体制が整うわけですから、いよいよ上場会社も外堀を埋められつつあるように感じます。さらに金融庁開示府令の改正(建設的な対話促進のための記載事項の追加)、法務省・経産省による対話型株主総会改革の促進、現預金型内部留保活用への積極介入、政策保有株式の縮減政策、中長期価値志向型アクティビスト、議決権助言行使会社の積極活用、そして金融庁フォローアップ会議による取締役会改革の検証と続くわけです。
今後は改訂ガバナンス・コードの施行というローラー作戦と、対話と議決権行使という、コードとは異なるピンポイント作戦でガバナンス改革の第2クールが進むと思われますので、もはや上場会社には「大坂夏の陣」が迫りくる気配がします。ピンポイント作戦のターゲットにならないためには、やはり経営者が資本コストを理解したうえで最適な短期利益と最大の長期利益をどう確保していく方針なのか、きちんと説明できる体制を構築しなければならない、とうことでしょうね。
これまで以上に「働き方改革」推進のための人財投資や研究開発投資、ステイクホルダーの利益保護と株主利益との関係を意識した経営が求められるものと思います。
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コメント
「コーポレートガバナンス」と「公益通報者保護」に共通しているのが。。。
「形式から実質へ」です。
上場企業の99%以上が「通報制度」があるだけでなく、機能していないのでなく、「通報者に不利益を与えている実態」を消費者庁消費者制度課殿に経緯報告しています。
10月30日(月)の三井住友銀行本店東館SMBCホールでのシンポジウムで、山口利昭先生や奥山俊宏様の基調講演を拝聴し、パネルディスカッションにおける奥山様の「(通報を受ける側の)ヒトが変われば対応も変わる」という言葉には勇気付けられました。
もちろん山口先生の「大阪弁」を交えた弁論にも感銘を受けました。
本日11月8日は、消費者庁HPにて消費者庁消費者制度課より「公益通報」に関する新たな調査結果が公表されています。
10月31日(火)に消費者庁主催で開催された「消費者団体訴状制度シンポジウム」でも、パネルディスカッションに消費者制度課長、経団連幹部が参加していましたが、消費者庁消費者調査課が進める「消費者志向経営自主宣言企業」との相関関係への議論もありました。
「公益通報」と「消費者志向経営」の関係も重要だと思います。
大坂の陣でも活躍した「井伊直政」にあやかって、よい、実直な政(まつりごと)が行われることを期待します。
投稿: 試行錯誤者 | 2017年11月 8日 (水) 18時54分
大坂、冬・夏の陣で活躍したのは直政の次男「井伊直孝」でした。
錯誤してしまい申し訳ありません。
投稿: 試行錯誤者 | 2017年11月 8日 (水) 19時26分
実践コーポレートガバナンス研究会の門多代表も、今後のガバナンス改革は取締役会の活性化と株主総会改革とおっしゃっておられますね。機関投資家側にも実効性を高めるための本気度が高まっているようです。
http://www.icgj.org/blog/blog_diaries/view/268
投稿: tommy | 2017年11月 8日 (水) 19時37分