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2017年11月20日 (月)

企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度(拙著のご紹介)

Jikkoutekinaibu11月17日、日産自動車さんが無資格審査問題で記者会見を開きましたが、その中で日産の代表者の方が「これからは内部通報の仕組みが機能する体質にしなければならない」と述べておられました。ただ、そこで念頭に置かれているのは昔ながらの内部通報や内部告発のように思えました。現在は、社員一同による内部通報や幹部職員による内部通報、大株主がバックに控える内部通報など、その形態はさまざまです。時代が変われば内部通報や内部告発の姿も変わります。したがって組織の体質を変えるとしても、内部通報のトレンドをまず認識しておく必要があります。

さて、週明け早々恐縮ですが、拙著のご紹介です。すでに書店に並んでいる地域もあるようですが、いよいよ今週(11月24日)私の執筆いたしました新刊書が発売されます。アマゾンさんでも取扱いが開始されました。

「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」(山口利昭著 経済産業調査会 2,700円税込 発売日11月24日)

単著本としては3年ぶりとなります。経済産業調査会さんからは、2010年に「内部通報・内部告発-その光と影」を出版させていただきましたが、このたび、その全訂版としての位置づけにて、上記タイトルにて発売させていただきました。ただ、今回は一般の方々にも読みやすいような内容に仕上げております。内部通報制度や公益通報者保護法の現状を示して、企業の皆様にはコンプライアンス経営の実践に役立てていただき、また内部通報や内部告発をお考えになっている皆様には、実効性のある内部通報・内部告発の参考にしていただきたい、と願って執筆いたしました。

とりあえず「はしがき」を抜粋してご紹介いたします。

(中略)テレビCMでは、「消費者に優しい経営」を宣言しているにもかかわらず、その裏側では「消費者を裏切る不正」を告発しようとしている社員に残酷な仕打ちで対応している企業の姿をみるにつけ、「社員ひとりひとりは誠実でも、組織となればどこの企業でも冷酷なものだ」と実感します。本書で紹介している実例をみればおわかりのとおり、世間で話題となる企業不祥事の多くは、内部通報や内部告発を端緒として発覚します。同じような不祥事を発生させた企業でも、通報に上手に対応した企業では企業の信用を毀損させることはなく(むしろ信用を向上させる企業もあります)、対応が拙いために、長年にわたって社会的な信用を低下させてしまう企業もあります。ではその差はどこで生じてしまうのでしょうか。

本書は、内部通報制度や内部告発の実態に光を当てながら、経営者にとって不都合な事実、たとえばグループ会社で発生した不正事実をいかに早く経営者が認識できるか、その仕組み作りを解説したものです。また、経営者の思いとは裏腹に、社員の方々が社外に不正事実に関する情報提供(いわゆる「内部告発」)を行った場合に、企業としてどのように対応すべきか、その適切な対応方法についても言及しています。

適切な内部通報制度の構築を「企業向けに」解説する本は、すでに良書がたくさん世に出ていますので、本書の特徴について少しだけお話しておきます。私は3年ほど前から、消費者庁の公益通報者保護制度の実効性検討会委員として、公益通報者保護法制と関わってきました。公益通報者保護法の改正審議は未だ「道半ば」ですが、その方向性がかなり明らかになってきましたので、その方向性を本書で示すことにしました。また、その方向性は「法改正」に先行して消費者庁が示したガイドライン(民間事業者向けガイドライン、行政機関向けガイドライン)に示されていますので、こちらも解説を試みました。

また、2017年5月には改正個人情報保護法が全面施行され、2018年6月までには改正刑事訴訟法のいわゆる「司法取引制度」も施行されます。また、消費者裁判手続特例法や(上場企業向けですが)コーポレートガバナンス・コードなども、近年施行されました。このような社会の流れの中で、内部通報制度や内部告発への対応も変革を迫られています。本書では、これら最近の法制度の流れを紹介して、とりわけ企業の構築すべき内部通報制度にどのような影響が及ぶのか、私なりに解説を試みました。

さらに、効果的な内部通報制度を運用するためには、内部通報者や内部告発者が「なぜ通報や告発に及ぶのか」その動機や手法についても認識しておく必要があります。働き方改革が進み、ITからAIの時代へと移行する過程において、内部通報制度や公益通報者保護法を「使用者vs労働者」「企業vs社員」の固定観念で捉えるのはもはや時代遅れと言えます。企業の窓口担当者、経営者の方々が、内部通報者や内部告発者の意識を知っていただくために必要な「知恵」についても各所で触れることにしました(以下、省略)。

ぜひとも、ご一読いただければ幸いです。また、当ブログでも折に触れて内容をご紹介していきたいと思っております。どうかよろしくお願いします!<(_ _)>

11月 20, 2017 本のご紹介 |

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コメント

山口先生 おはようございます。かならずや、この日が来ると確信しており、また楽しみにさせていただいておりました。

投稿: サンダース | 2017年11月20日 (月) 08時33分

山口先生 「内部通報者や内部告発者の意識」を、フィールドワークを通して研究を行った労働経済を専門とする学者や労働法学者の論文は、あるのでしょうか?公益通報者が、会社と裁判沙汰になり訴えなくてはいけないほど追い込まれている姿を学者は法廷で傍聴をして、これはいけない、何か、自分でできることはないかと立ち上がれた学者の方はいらっしゃるのでしょうか?教授会で、専門の異なる経営法・会社法の教授・准教授・助教へ一緒に建議を提出しようとか、自分の教授会を飛び越えて棟の異なる研究棟の研究室に出向いて熱く語る研究者はいらっしゃらないのでしょうか?もし、そのような研究者の方がいらっしゃれば論文をご紹介下さい(ご自分の専攻された分野での公益通報に関する院生レベルのものは、2つ論文がございます)。最近、気になるのは内部通報者のご家族です。大黒柱が、内部通報者のレッテルをはられ、後輩やかつての部下という同僚の指示命令系統に翻弄されるという現実は、家族の子弟にどのような影響を及ぼすのか?本来であれば、家族団欒の和やかな雰囲気で進路相談など十分な時間を割いて相談にのってあげることができたはずです。いじめられた内部通報者は、会社に行くまで重い足をひきずり往復の通勤をしなければなりません。通報者は、脇があまいのでしょうか?生き方がなってないからでしょうか?全く違います。もう一度生まれ変わり同じ場面に遭遇したら、もう一度、公益通報者を選ぶと答えるのではないかと思います。でも、経済的に困窮にだけになるのは勘弁してもらいたいなと言われるのではないでしょうか?

投稿: サンダース | 2017年11月20日 (月) 14時15分

早速アマゾンで購入しました。
いろいろ参考になりそうなことが詰まった本なので、じっくり読ませて頂きます。
ただ、目次がないので先に見たい部分が見つけにくいと思いました。

投稿: 西田範夫 | 2017年11月22日 (水) 12時46分

皆様、どうもありがとうございます。サンダースさんのおっしゃるような論文は、私もまだ見たことはありません。講演で申し上げているように、労働法上の公益通報者保護制度に関する位置づけはまだまだ受け身のもの(違法性阻却事由)にすぎないように思います。私は労働法だけでなく、民法、行政手続法や会社法、不正競争防止法といった関連法との関係を通じて、公益通報者保護法がどのような特別法としての地位を確立していくか、総合的に検討していくほうが通報者の地位保全のためには良いのではないかと思います。
ところで24日、新刊書の宣伝が日経朝刊1面に出ます。

投稿: toshi | 2017年11月24日 (金) 00時38分

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