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2017年11月27日 (月)

コシダカホールディングス社の財務報告内部統制に関する疑問点

東芝さんの先日の臨時株主総会の法的問題点を指摘した弥永教授のご論稿(最新の雑誌「ビジネス法務」に掲載されています)を拝読いたしました。やはり法律上は「定時株主総会」とみるべき、というのはその通りかと思いますし、監査委員会のPwCの監査への相当性判断については「不相当判断」と解釈されているのも、私は賛同いたします。一方11月18日付けの週刊現代には、東芝元会長の西田氏の独占インタビューが掲載されていて、こちらも読みごたえ十分でした。しかし第三者委員会というのも「報われない仕事」です。世間からは「東芝の意向を忖度したとんでもない委員会」と批判され、調査対象の当事者からは「罰則もない連中がウソばかり書きやがって!」と罵られる。それでも社会からの期待は結構大きいのですよね。

さて、24日に無事(?)定時株主総会が終了したコシダカホールディングスさんの話題です。総会招集手続きの瑕疵を「修正」「補正」で乗り切れるのだろうか・・・と関心を寄せておりましたが、山口三尊さんのブログに詳細な総会議事記録が掲載されていましたので読ませていただきました(いつもありがとうございます)。

会計監査人からの監査報告が受領されず、また監査等委員会の監査意見も出ないままに招集通知を発送するといったことが「補正」で間に合うという点は「あまりにも監査制度をないがしろにしたものであり、到底容認できない」といった意見も私の周囲からは聞こえてきます。重要なのは「結局は会計監査人から不適正意見もらえるんだからいいじゃないか」という「結果オーライ」の問題ではなく、監査意見をどこまで会社側が尊重するか、といったプロセスの問題ですし、総会で社長さんが何度も述べておられるとおり、内部統制に関する問題が、今回は大きかったと思います。

ただ、ここで「内部統制の問題」と述べるのはあまりにも抽象的であり、それだけでは問題の核心に迫ることはできないと考えます。つまり、コシダカさんのケースでは監査委員の方は「内部統制ができていなかった。これから早急に構築します」と述べていますが、コシダカさんは東証1部の上場企業ですから、私はすでに立派な財務報告内部統制の仕組みは出来上がっていると思います(会計監査人も新日本さんですし)。むしろ、今回は「仕組みはあるのに、あえて運用していなかった」、つまり全社的内部統制をわざと無効化したのではないか、といった疑問が湧いてきます。金商法上の内部統制報告制度が施行されて10年です。コシダカさんのような立派な上場会社が、これまで財務報告内部統制を構築していなかったとは考えにくいです。むしろあえて内部統制を無効化してしまったとみるほうが自然です。ではなぜ無効化してしまったのか・・・、つまり運用面での不備に至った原因を明らかにすべきです。

そしてもうひとつ、コシダカさんの株主総会では内部統制については「有効」か「無効」か、という点に関心が集まるのですが、やや論点がずれているように思います。内部統制報告制度も立派な金商法上の開示規制だという点を再認識すべきです。刑事罰も民事責任規定もあります。今回のコシダカさんの内部統制について問題になるのは「有効」とか「無効」といった問題ではなく、そもそも内部統制の評価を経営者が行っていたのか・・・という点です。評価を行っていなかったとすれば「内部統制の有効性」どころか、立派な虚偽記載になります。山口三尊さんのブログ内容が真実だとすれば、社長さんは「(内部統制に関する)担当人材が空白の時期があった」と述べておられます。今回のような信じられないミスが発生しているということは、この社長さんの陳述とも併せ考えますと、社長さんが財務報告に関する内部統制(とりわけ全社的内部統制)の評価を行っていなかったのではないか・・・との疑問が湧きます。

いままで内部統制報告書の刑事罰規定や民事責任規定(いずれも金商法上の責任規定です)が問題とされたことはなかったのですが、私は経営者がそもそも評価をせずに意見を表明している会社が多いのではないかと感じています(これは内部統制監査でもわかりません)。このあたりでもう一度、経営者が評価をしたと(金商法上で)解釈されるためには、どの程度、財務報告内部統制に経営者が関与しなければならないのか、問題が発生する前に客観的に見直してはいかがでしょうか。

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